46.吸血鬼やらかし案件の、その後
それから私は三度、寝て起きてを繰り返した。
だから多分、一ヶ月は経った……のかな?
この一ヶ月の間に、色々なことをやった。
基本的にはお爺ちゃんがやらかしたことの後処理だけれど、一応私も関わったことだし軽く纏めておこうと思う。
◆◇◆
お爺ちゃんが強制的に従えていた魔物は、私の街に移住することになった。
一応、事前に希望者だけを募ったんだけど、聞いた全員が「お願いします!」って頭を下げたものだから、またまた街の拡張が決定した。今はガッドさん達ドワーフのみんなが頑張ってくれているから、いつか全員が問題なく暮らせるようになると思う。
けれど、そこで問題が少し生じた。
魔物と同じように、街に迎え入れることになった吸血鬼のことだ。
驚くことに、ラルクに情報提供していた協力者というのは、お爺ちゃんのやり方に不満を持つ吸血鬼だったみたい。
でも、裏切りがお爺ちゃんにバレて最後は捕まっちゃったとか。クロとラルクの帰りが遅くなったのは、その捕まった吸血鬼を救い出して街まで護衛していたから、らしい。
その協力してくれた吸血鬼を見て、私は更に驚いた。
彼らは見たことのある顔だった。最後の最後までお爺ちゃんが下した『追放』を考え直してくださいって、私のためにお願いしていた人達。長い間、パパと私に仕えてくれていた人達だったからだ。
お爺ちゃん派の吸血鬼は、誰も居なかった。
当然だ。…………ざまぁ。
みんな立場を利用されて脅されて、嫌々ながらも従っていたらしくて、吸血鬼達は私が屋敷を追い出されてからずっと、私が無事でいるかどうか心配だったみたい。
だから、変わらず健康体でスヤスヤしている私を見て、みんな涙を流していた。
私が生きていることを喜んで静かに泣く人や、まともな言葉を言えないくらい号泣する人。仕方がなかったとは言え、私にしたことを思い出して悔し涙を流した人。────色々な反応があった。
そこまでは、別にいい。
みんな無事で良かったね。……って美談で済ませられる話だから。
でも、現実はそう上手く収まるほど簡単じゃなかった。
問題はその後だ。
今回の件で、色々な被害が出たのは全部吸血鬼のせいだって、街の魔物達には広まっている。そのせいで吸血鬼に対するみんなの印象が最悪で、吸血鬼は私を除いて毛嫌いされていた。
ただ街を襲撃しただけなら、まだ人間さんの時と同じように時間が経てば大丈夫だったかもしれない。
でも、吸血鬼がやらかしたのは大きく分けて五つ。
一つ目、私を追放した。
これが一番、吸血鬼が嫌われている理由らしい。
この件に関して本当に悪いのはお爺ちゃんだ。
他の吸血鬼は仕方がなかったと私は思っているけれど、私と契約した魔物は違う。
たとえ住処を失ってでも私のために動いてくれる眷属達だから、家族を脅されたとか働く場所を失うとか……そういうのは全部言い訳にしかならない。
だから追放を眺めていた吸血鬼も同罪だー、って、みんな言っていた。
二つ目、エルフの集落を滅ぼした。
これは特にアルフィンさん達、エルフが根強い恨みを持っているみたい。
そう思うのは当然なんだと思う。
住処を奪われただけじゃなくて、多くの仲間も殺されたんだ。むしろ、恨むだけで手を出さずに済んでいるのが凄いことなんだって、シュリはエルフ達の精神力を褒めていた。
滅ぼしたのは魔物がやったことだけど、大元の原因は吸血鬼……というかお爺ちゃんのせいだ。それでもやっぱり同じ吸血鬼だからって、どうしても負の感情が出てきちゃうみたい。
これは時間をかけて和解するしかないと思う。
吸血鬼達もこうなる覚悟はできていたみたいで、どんな罰でも甘んじて受け入れるって言っていた。
だから私は、いつか両者が歩み寄れるといいなって応援している。
三つ目、魔物に酷い仕打ちをしていた。
お爺ちゃんの癇癪のせいで職を失った吸血鬼の代わりに、魔物が強制的に労働力として使われていた。使い捨ての駒みたいな扱いだったらしくて、西の魔物が凶暴化していた大きな原因は「これ」なんだって。
基本、魔物は自分以外の存在のことをどうでもいいと思っているけれど、この街の魔物は違う。ここではどんな種族だろうと仲間意識を持っているから、無関係の魔物が受けたことでも、自分のことのように怒ってくれる。
同じ魔物が、吸血鬼から酷い仕打ちを受けた。
それだけで彼らに対する印象は最悪なものになっているらしい。
四つ目、街を襲撃してきた。
……と言っても、この街は過去に何度も襲撃を受けてきた。
襲撃されるなんて今更だし、これは然程大きな理由にならないけれど、一応『吸血鬼やらかし案件』のリストに入れておく。
五つ目、みんなのいる前で私を罵倒した。
一つ目の次に魔物達が怒っている理由が、これだ。
この街に住んでいるみんなは…………自分で言うのは凄く恥ずかしいけれど、私のことが大好きだ。
一時期は私のことを神様のように崇めていたくらいだし、本当に大切に思ってくれている。そんな私のことを好き勝手言って、大声で罵倒した。
それを一字一句聞き逃さなかった魔物達は、大激怒。
あの時、帰ってきたラルクがみんなを避難させていなかったら、魔物達が怒り狂って街はもっと危ないことになっていたかもしれないって、後になって教えてもらった。
以上が、吸血鬼やらかし案件の五つ。
………………うん。
共通して分かったことが一つだけある。
それらを踏まえて、私の考えをここに出そうと思う。
『結論』──お爺ちゃんが全部悪い。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます