第五章~23:07の景色
あたしには彼の創るモノの価値がよく判らなかったが、創作活動をする彼の姿はとても美しくて、大好きだった。
「梅雨、マジかったりぃわ・・・」
寝室に置かれたダブルベッドに転がった彼が、ふと漏らす。ベッドは、左全面をあの映画のスクリーンのような窓にぴったりとくっ付けて置かれてある。
「あたしは好きよ、雨。そのお陰で、光流と知り合えたワケだし」
ベッドを背もたれにして雑誌を
「六月、祝日もねぇじゃん」
「休みが欲しいなら、有休取ればいいじゃない?」
「まぁね・・・てか、こっち来いよ」
あたしと視線を合わせた彼は窓側に寄って、あたしの為のスペースを作った。あたしは軽く微笑んで、雑誌をテーブルの上に無造作に置くと、彼に促されるままそこに横たわった。彼は、枕元のリモコンを取り上げ、部屋の照明を落とす。
瞬間。
テーブルに置かれた彼のケータイ画面の「23:07」が、鮮明に浮かび上がった。
下ろしてあるロールカーテンを、彼は寝転んだまま器用に上げる。
大きな長方形のガラスの向こうには、赤や青や黄色の滲んだ光の珠が美しく重なり合って見える。
「雨の日の夜景も、すっごく綺麗」
あたしは、上向きで横たわる彼の胸に上半身を預け、ぼんやりとそれを眺めた。彼は上向きのまま、視線を外に置いていた。
どれくらいの時間が流れただろうか。気が付くと、光流はあたしを見ていた。
「なぁに?」
くすぐったくなって、あたしは照れ笑いをしながら彼をみつめ返した。
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