第三章~同級生

 そこにいたのは、高校時分のクラスメートの坂野君だった。卒業して以来会ってないから、六年振りくらいだろうか。パリッとした紺色のスーツに身をまとい、会社員らしく整髪した彼の雰囲気はあの頃とは違っていたが、面影はあの頃のままだった。途端、懐かしさが込み上げてきたが、今は過去に想いをせている様な場合ではなかった。


「全く・・・通勤時間帯の電車が運休とか、ないよなぁ」

「ほんと、困るわぁ・・・バスもあんな具合だし」

 あたしは、バス乗り場を顎で指し示した。

「寺越、どうすんの?」

「仕方ないから、タクシーで行く事にした」

「俺さっき、タクシー乗り場行ったんだけど、あそこも凄かったぞ?」

「そうなの?」

 考える事は、皆同じらしい。

「会社、どこ?」

「N駅の近く」

「じゃあ、通過点だな・・・車、乗ってくか?」

「え?・・・車?」

「今、主任に遅刻の連絡入れたら、ここ寄って拾ってくれるってさ」

 瞬間、(神はいる!)と思った。

「ほんと?ありがとう!すごく助かる!」


 あたしは、彼がその主任とやらと待ち合わせしている場所までついて行った。駅から少し歩く事になった。ローヒールの中の水はあたしを不快にさせたが、この神的な状況には感謝しかなかった。


 車はなかなか到着しなかった。この大雨なのだから、無理もない。そこで初めて、あたし達は数年振りの再会を歓喜し合った。そうこうしていると、一台の軽自動車があたし達の傍に停車した。

「あれ?・・・河村かわむらの車だ」

 坂野君は首をかしげた。

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