第二章~雨の中
いくつかの偶然が重なり合って、あたしと彼は知り合った。それを「運命」と人は言うけれど、まさにそれだった。
どしゃ降りの雨で出勤に使う電車が運休していたので、あたしは途方に暮れていた。勿論それは、あたしだけではなかった。電車で通勤・通学する人々は、同じ気持ちでその場に立ち往生していた。駅構内で無駄な時間を過ごしてしまったあたしは、バスに乗る事にした。そうなると大幅に遅刻してしまう。あたしは駅の公衆電話から会社に連絡を入れた。が、まだ留守電のままだったので諦めて、とりあえずバス停に向かった。
周りの音を全て掻き消してボツボツと傘に当たる大粒の雨に、あたしは苛立ちを覚えた。そのうち、ローヒールの中にまでそれは侵入してきて、あたしを更に不快にさせた。足元をずぶ濡れにしながらバス停に着いたのはいいが、そこに出来た長蛇の列に、あたしは茫然としてしまった。
(・・・もう、タクシー使うしかないか)
そう思って
あたしの傘が誰かの傘に当たってしまった。
「きゃっ・・・すみませんっ」
咄嗟にあたしは謝り、傘の主の顔を見た。
「こちらこそ、申し訳ない」
「・・・あら?・・・
「おっ?もしかして・・・
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