第48話 ゴーレムと上下移動
「お……おおっ!? えっ、完成……違う!? な、なんじゃこりゃあーーーーーーッ!?」
おじさんが腰を抜かして叫ぶ。
ただ、これに関しては3Dモデルという概念を知らないおじさんに説明するのが、そもそも難しい話ではある。
「えっと……これは灯台の立体的な完成予想図なんです。おじさんの設計図通りに組み立てれば、こんな形になりますよというイメージの幻というか……」
「はぁ、はぁ……なるほど……! そりゃ便利な魔法なこった! 実際に組み立ててどんな形になるのかを事前に把握出来りゃ、改善や修正もやりやすいってもんよ」
おじさんは思ったよりもすんなり
いつも
「ふむ……ふむふむ……ふーむふむ……」
興味深そうに3Dモデルの周りをぐるぐると回って眺めるおじさん。
この3Dモデルは完成した時の灯台の形状そのものだし、建設する位置も同じにしてある。
霊園の入口から見て奥の方、立ち並ぶ墓石の列を抜けると灯台にたどり着けるようにする。
3Dモデルは灯台の内部まで正確に作ってある。
この灯台は展望台付きにする予定で、内部には展望台に向かうための螺旋階段が造形されている。
「……ああ、ダメだなこりゃ」
おじさんがポツリとつぶやいたのを俺とマホロは聞き逃さなかった。
「こ、この灯台どこかダメなんですか!?」
俺より先に食いついたのはマホロだ。
その
「いやいや、全部がダメってわけなないんだ。むしろ、灯台としてならこれで完璧と言ってもいい」
「じゃあ、どこがダメなんですか……?」
「展望台としてさ。この灯台は百メートルもあるのに、その上部の展望台に登るのに螺旋階段だけってのは……しんど過ぎると思わないか?」
「ハッ……! 確かに!」
マホロはパンッと手を叩いて納得する。
俺も手こそ叩かなかったがかなり納得した。
ゴーレムの体では灯台の中に入れないから、俺は上る時のことを今まで考えなかった。
だが、言われてみれば百メートルを螺旋階段で上って、また下りて来るなんて……想像するだけで足腰に震えが来そうだ……!
人間時代の俺がそんなことをしようものなら、強烈な筋肉痛に襲われて数日は動けなくなるだろう……。
マホロだって体が軽くて若いと言っても、流石に限度ってものがある。
「ただ、上るのがしんどいと言っても、それはここから設計を変えてどうにかなることなんでしょうか? 灯台を低くするのでは本末転倒ですし……」
しょんぼりするマホロ。
遠くまで光を届けるという目的のためにも、灯台を低くするわけにはいかない。
ここはガイアさんの知恵を借りるべきか……。
「安心しな、マホロの嬢ちゃん。もう対応策は考えてある」
おじさんがドンと胸を張ってそう言った。
その表情から嘘や
「本当ですか……!? そんな方法があるんですか!?」
「ある! こんなところでちんけなプライドを守る嘘はつかねぇさ。その方法ってのは……エレベーターだ!」
エレベーター……俺には聞き慣れた言葉だが、この世界にもエレベーターが存在したのか!
「エレベーター、エレベーター……聞いたことがあります。魔力によって上下に移動する足場で、高いところにも素早く楽に上れる
「おおっ、嬢ちゃんも知っていたか! 流石はロックハートの……あ、いや、都会で暮らしていた期間がそれなりにあると耳に入るもんだな……!」
マホロも知っているということは、この世界におけるエレベーターの知名度はそこそこあるんだな。
そして、ロックハート家の知名度もなかなか高そうだ……。
「ガンジョーさんはエレベーターを知っていますか?」
「ああ、知ってるよ。元の世界では広く普及していたからね」
マホロの質問に隠すことなく答える。
ただ、俺の知ってるエレベーターとこの世界のエレベーターは少し違っていそうだ。
「俺の世界のエレベーターは人が乗り込む箱を頑丈なワイヤーで吊るして、そのワイヤーを巻き上げることで上下に移動をしていたんだ。でも、その巻き上げ機構を入れるスペースが、今の灯台にはないような……」
この灯台は巨大建造物だが、なんちゃらツリーやタワーのような観光スポットほどではない。
大掛かりな設備を設置する余裕はないように思える。
「なるほど、旦那の世界では巻き上げ式だったか。だが、安心してくれ。こっちの世界には魔力を動力とした省スペースのエレベーターがいくつか存在する」
おじさんは灯台の3Dモデルを指さす。
「旦那、この灯台の外壁だけを一旦取り払うってことは可能か?」
「いけると思います。ガイアさん、灯台の外壁を一旦非表示にしてください」
〈了解しました〉
灯台の3Dモデルから外壁が消え、内部で渦を巻いている螺旋階段が露出する。
おじさんはその螺旋階段の中心、渦の真ん中の床に立ち真上を見上げる。
「うーむ、百メートルってのは中から見ても高いなぁ。だが、螺旋階段の真ん中にこれだけのスペースがあれば……アレを設置出来る!」
今度は灯台の床を指さすおじさん。
確かに螺旋階段の真ん中は吹き抜け、天井から床まで空間があいている。
「旦那、この床から天井まで一本の鋼鉄の棒を通すことは出来るか?」
「出来ますよ。太さはどれくらいにしましょう?」
「うーむ……素材の強度にもよるが直径六十センチもあれば十分だろう」
俺はモデリングをいじって、螺旋階段の真ん中に一本の棒を通す。
これで一体どんなエレベーターが出来上がるんだろうか?
「ありがとうよ、旦那! この鋼鉄の棒を軸に電磁魔動式エレベーターを設置する!」
「で、電磁魔動式エレベーター……!?」
想像していたよりすごい単語が出て来た……!
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