第39話 ゴーレムと霊園計画
マホロたちが夕食を食べている間、俺は一人裏庭に出て夜風に当たりながら考えていた。
今のマホロにどうお墓……霊園を作る話を切り出そうかということを。
再生する街に感動しているところに残酷な話をするのは、こちらとしても勇気がいる。
でも、言わずに作業を進めていくことは出来ない。
廃鉱山に眠る亡骸の数は両手では数えきれないほどだ。
それも俺はまだ無数に伸びる分かれ道のすべてを探索したわけじゃない。
すべての亡骸を街に帰すことを考えれば、受け入れるための霊園の規模も大きくなる。
それを作っている最中に絶対「ガンジョーさん、何を作ってるんですか?」と聞かれるし、ずっと隠しておけるようなものでもないからな。
「うーん、どうしたものか……」
「ガンジョーさん、何を悩んでいるんですか?」
マホロがご飯を食べ終えて裏庭にやって来た……!
自分が思ってるより、長い時間考え事をしていたようだ。
「いやぁ、そんな大したことじゃないさ。また、マホロにも話すよ」
「ふーむ、ガンジョーさん……私に隠し事してますね。いつもと表情が違いますよ」
「えっ!? そ、それは……って、俺の顔に表情とかある?」
目はあっても口はないし、ゴーレムに表情筋があるとは思えないが……。
「あります! みんなにはわからなくても、私にはわかります! 私に話さないといけないことがあるけど、話したくないなぁ~って表情から伝わって来ます!」
「す、すごい……!」
「でも、いいんです。それも私や街のことを考えての隠し事だって、私わかってますから。ガンジョーさんが話したいと思った時に、お話してくれたらいいんです」
「……マホロにはかなわないな。話すべき時はきっと今なんだ」
俺は廃鉱山で見た光景、これからやりたいことを全部マホロに話した。
思えば、少し過保護に考え過ぎていたかもしれない。
平和な世界で暮らしていた俺と違って、彼女は貴族の娘として、瓦礫の街の住人として……今まで生きて来たのだから。
「やっぱり、逃げ遅れた人はいたんですね……。ガス事故と聞いた時から、私も想像はしていましたが……」
「亡くなってから何年も経っていると思う。それでも、俺は亡くなった人をこの街に連れて帰りたい。生まれた世界も何もかも違う俺だけど、この気持ちは確かなんだ」
「私も同じ気持ちです。せめて亡骸だけでもまた街に……暗い坑道の中ではなく、光の下で安らかに眠らせてあげたいです」
やはり、俺の
マホロの目に宿るのは残酷な現実への恐れではなく、受け入れる覚悟だ。
「ちょっと前までは自分たちが生きるのに必死で、亡くなった人を
食料の安定供給はまだ課題だが、逆に言えばそれくらいしか大きな問題はない。
街の人々だって、霊園を作るために時間と労力を割くことを認めてくれるはずだ。
「亡くなった人の魂の安らぎのために、私たちでこの街に霊園を作りましょう、ガンジョーさん!」
「ああ! 一緒に頑張ろう、マホロ!」
手のサイズ的に握手をすることは出来ないから、拳と拳を触れ合わせる。
「では、まずはどこらへんに作るのかを相談しましょう!」
◇ ◇ ◇
あれから、メルフィさんも巻き込んで霊園計画の話は進んだ。
そして、霊園は瓦礫の街から南西に、少し距離を置いて作ることになった。
瓦礫の街の東西南北にはそれぞれ重要なスポットがあるので、そこへ向かう
作る場所は瓦礫の海の向こう――つまり、栄えていた頃の街の
現在の瓦礫の街は、かつての街の中心部のみを防壁で囲った状態だ。
防壁の外側にはいろいろと使える素材が転がる『瓦礫の海』があり、そこの瓦礫をどけて畑を作ったり、トロッコのレールの出発点もあったりと、使い方を模索し街の機能を拡大中だ。
防壁に近い瓦礫の海の中に霊園を作れば、より近くてお墓参りもしやすい……。
しかし、そこはいろいろ試しながら実験している場所なので、ガチャガチャとうるさいこともあるし、他の計画との兼ね合いで後から霊園を移動させないといけない可能性もある。
それなら、最初から少し遠い場所に作っておけば安心というわけだ。
街の再生がかつての街の外側にまで拡大するのは相当先だろうからな。
作る場所を決定したら、その夜のうちに決められることは他にあまりなかった。
霊園の規模感は、そもそもどれだけのお墓が必要かで変わって来る。
亡骸の数を把握出来ていない今は決められない。
ただ、霊園の周りはぐるりと白い壁で囲って、万が一にも魔獣に墓を掘り起こされないようにしようという話になった。
他には、街から霊園への道を整備するとか、灯籠を設置して明るくするとか、より良い場所にするためのアイデアはたくさん出て来た。
明日、実際に霊園を作る場所に出向いて、
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