第83話 おかえりなさい。
「そうだろう……エニュール。いや、私――?」
そう喋る。
俺の口がそう動く。
勝手に台詞で問いかける。
すると、目の前のディノーの姿が揺れる。
変わってしまう――魔女の姿へ。
「お前……そこまで辿り着きやがったか」
エニュール・ディノー・グライア。
“竜の魔女”の異名を持った、一人。
俺は彼女について、“理解”した。
分かってしまった。
ディノーと溶け合ってしまったから。
もう彼女は――俺の一部となってしまった。
「今のは……何が――?」
カプラが金色の瞳をぱちくりとさせる。
俺の横で、その仕草はどうしたことか。
動揺の仕草。それは分かる。
だとすれば、何についての動揺だ?
まさか、この美少女も俺と同じく――
「カプラ……お前も見たのか……?」
カプラも、さっきの幻影を見ていたのか。
一緒に、過去の追体験をしていたのか。
俺と共に、シルフィの過去を見ていた。
その時、不意に思い出す。
穴が開いた時――
魔女の城への入り口が開いた時――
カプラはディノーの幻影と目を合わせていた。
――『我らは自らの繋がりに、あの
――『Eスキル:付与、発動』
Eスキル。
ドラゴンから奪ったスキル。
それらを機械音声は、全てEスキルと呼んでいた。
カプラに付与したのも同じ。
Eスキルの“数値変換”。
俺とディノー、シルフィ、魔女――
そしてカプラ。
俺達には、“繋がり”が出来てしまったのかもしれない。
「“
迫る、頂上の天井。
その天上。
魔女――エニュールは、杖をかざす。
銀色の杖。
その先に付いた骸骨の“目”が光る。
「【Aスキル:
魔女がスキル名を告げる。
その発動を口にする。
すると、またも溶ける視界。
次に、俺達は透明な床を前にする。
上下反転、今度は床に向かって飛んでいた。
突如、
その知らない床へと――激突しそうになっていた。
「……ッ」
だから俺は、それを使う。
咄嗟に、そのスキルを発動させる。
ディノーのスキル。
【Cスキル:
今は、俺のモノとなったそれを使った。
そのスキルを“俺たち”に対して使った。
スキルで鎖を生み出し、自身をそれに縛らせた。
そうする事で、飛行運動の勢いを殺す。
「よくできました」
エニュールの拍手が聞こえる。
それに重なって、いくつも同じ音。
拍手が重なって聞こえる。
反響しているのか?
いや、これは違う――
「頂上へ、"おかえりなさい"」
魔女はローブの裾を持って、会釈する。
「“我ら”は待っていたわ。この時を……ね」
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