第13話 スキル「【発動】」


 銀色に包まれて、それから俺は物凄い力で引き揚げられた。

 上へと、湖の水面へと。



「か――ッ……――ハッ……死なせない、この人は!」



 折れた腕で水面をバタバタ。

 口をパクパクとする俺。

金魚みたいに、無様な溺れ方だ。


 飛び込んできた羊少女は、そんな俺を抱えた。

 そして、一緒に溺れてしまう。

そんなカプラの金色が、水の中に輝く。

太陽みたいに。



「私を信じてくれたからッ!」



 水を吸った服が重くなって、思うように動けなくなっていた。

 俺も、カプラも、このままじゃヤバい。


 このままじゃ、2人とも溺れ死ぬ。

 せっかく、ドラゴンに打ち勝ったのに。

ただの、湖の水に殺される。流水自滅だ。


 そんなのあんまりだ。

 そう思い、果てそうになった……。


 その時だった。



Aファーストスキル:強奪ディスポイル による効果】



 声が聴こえた。

 機械音声が響いた。



【Eスキル:白光イクリクス――】



 そろそろ、聴き慣れてきた機械音声。

 その声は、次に、とあるスキル名を告げた。


 聴き覚えのある、スキル名を。



「ドラゴンのスキル名……――?」



 間違いない。

 ナイフで貫く前、再び炎を吐こうとした竜が告げていたスキル。


 結局、ヤツはスキルが完全に発動する前に殺された。

 だから、結局は使われなかったスキルだ。


 そのスキルが、なぜ今、再び唱えられている。

 なぜ唱えているんだ――この俺が。



「【発動】」



 俺の声が、不可解ながらも、俺の耳に届く。

 出そうとした訳でもない。

 なのに、俺の声が出ていた。


 刹那、視界が白い光で焼き尽くされる。

 とてもじゃないが、目を開けていられない。

反射的に目蓋を閉じる。


 カプラも同じく、光にやられたのか。

 横でうめく声が聴こえた。

いや、違う――


 俺は“その声”に、思わず目を見開いた。



「何がどうなってるのよ……?」



 、目蓋を開けたカプラの、息を呑む音。

 それから、白く焼けていた俺の視界は、ゆっくりと形を取り戻していく。


 いつの間にか白い霧が掛かっている、その隙間から地面が見えた。


 そこには、焼けた地面しか見えなかった。

 見渡す限り、焼けた地面見えなかった。


 辺り一面が焼け焦げていた。

 巨大なクレーターのようになっていた。



「湖が無くなった。何で……まさか――俺が?」



 俺のスキルが水を、湖ごと消し去った……――のか?

 湖の水全てを、蒸発させた……?


 ドラゴンが持っていた【白光】というスキル。

 そのスキルが今、発動した。

俺が発動したのだ。


 なぜ、そんな事が出来てしまったのか?

 なぜ、この俺に出来てしまったのか?


 その原因として、思い当たる出来事は、一つ。



 ――【A《メイン》スキル起動:強奪ディスポイル

 ――【対象βベータから、13個のスキル強奪に成功】



 あの時だ。

 湖の水の中で、ドラゴンの血に視界を染められた――あの時だ。


 俺は、あの時――ドラゴンのスキルを継承した。

 そんなバカな話が起こったのか。

俺の身に。



【Lv1“白光”のクールタイム、残り8760時間】



 バカが。

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