第三十四話
すると飯山警察署の刑事課長は叫んだ。
「こらー! A! お前また、自動販売機を叩いてやがんな! 何度、言ったら分かるんだ! 自動販売機から領収書が出る訳ねえだろ! また自動販売機を壊す気か!
今すぐこい!」
Aは大急ぎで自動販売機の前から課長の前に移動し、言い訳をした。
「申し訳ないっす、課長! でもこれは仕方がないんすよ。借金大国の日本がいつか経費削減のために警察を民営化したら、俺はクビっすよ! その時に備えて今から貯金を……」
課長は慣れたもので
「はいはい」と受け流すと続けた。
「とにかく今は、捜査する事件は無いんだ。こういう時、刑事は何をするか分かっているよな?」
Aは自信を持って、大きな声で答えた。
「はい、もちろんっす、暇つぶしをすればいいっす! ちなみに俺は、これからスマホのゲームをして暇つぶしを……」
当然のことながら、課長はキレた。
「ふざけんなA! こういう時、刑事はパトロールをするんだよ! お前も、さっさと行ってこい!」
Aは渋々、答えた。
「パトロールっすか……。仕方がないっす、行ってくるっす。でも課長、一言、言わせてもらうっす。あんまり怒ってばかりいると、血圧が上がって大変なことになるっすよ」
課長は不敵な笑みを浮かべて、答えた。
「俺の血圧を下げる、一番いい方法を教えてやろうか。それは、お前がこの刑事課から異動になることだ!」
Aはショックを受けた表情で答えた。
「そ、そんな……。刑事は捜査のための経費が使いたい放題なんで、それで刑事になったっていうのに……」
再び課長はキレた。
「お前の普段の言動を見ていれば、やましい理由で刑事になったことは容易に想像できる! だが今は勤務中だ! 給料分は働け!」
そう言われてAは渋々パトロールへ出かけた。まずは飯山警察署の近くにあるコンビニへ向かった。
Aは女性店員に聞いた。
「高額な、インターネットでも使えるカードを買う客はいないか?」
「はい、今のところはいません。もし高額なカードを購入するお客様がいる場合その目的を、お聞きすることになっています。もしかしたら詐欺師に操られている可能性があるので」
Aは満足そうに、うなづくと飲み物売り場からイチゴオレを取り、カウンターに置いた。
「領収書も頼む」
「はい。お買い上げ、ありがとうございます」
Aはコンビニを出ると、歩きながらイチゴオレを飲み考えた。
これは仕事中に買ったものだから経費で落ちる。それはいいとして、これからどうしたものか、と考えていると公園が見えてきた。公園か……。すると良い考えが浮かんだ。
よし! この公園でスマホのゲームをして時間をつぶそう!
そう思いポケットからスマホを取り出した時、スマホが鳴った。表示を見ると飯山警察署からだった。
嫌な予感がしながらもAは電話に出た。
「もしもし、Aです……」
すると課長の声がした。
「あ、俺だ。お前は今、どこにいる?」
「えーと、今は公園にいるっす。ちゃんと仕事をしていたっすよ!
さっきまではコンビニで、詐欺に遭い、インターネットで使えるカードを買わされている客がいないか確認したり、今は公園でブラブラ、いや、パトロールをしているところっすよ!」
すると課長は、冷静な口調で告げた。
「管内で事件だ。今すぐ現場に行け」
Aは、せっかくこの公園でスマホのゲームをしようと思っていたので、右手を左手でつかんで反論した。
「くっ、ダメっす……。やはり真面目に仕事をしようとすると、この右手に封印されたブラック・ドラゴンが……」
課長はこういう時、どうすればいいのか分かっていたのでキレた。
「いいから、さっさと現場に行けー!」
「はいー!」
Aは白い手袋をしながらパトカーを降りると、つぶやいた。
「ちっ、またここか……。まあ、しょうがない。さっさと事件を解決してアパートに戻って、スマホのゲームをしよーっと。
いや、待て。ここは課長に、『もう事件は解決しました』って、嘘の報告をして……」と、よからぬことを考えていると背後から、いきなり声をかけられた。
「あの、すみません。ひょっとして警察の方ですか? 私は110番通報したFと申します……」
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