第18話 次の一手
「……死んだか。ドゥ」
ニノと共に会場から離れた場所に現れたサクスは、指輪の一つが魔力を失った様を確認する。
「……サクス様。私のせいです」
凍った腕を抑えながらニノは俯いていた。
「そう思うならそう思えば良い。だが、そこで歩み止めるならお前は“魔人”ではない」
サクスはニノに魔人の証したる指輪の返却を求めた。
「……いえ……越えます」
彼女の目を見て二度は同じ事は起きないと確信し、サクスは手を引っ込めた。
「タミナに腕を何とかしてもらえ。能力は落ちるだろう。代わりに出来ることを増やせ」
「はい」
ニノは一礼すると布で凍った腕を隠し、魔法でメイド服から町娘の衣服へと変え、仮面をサクスに預け去って行った。
「全員、聞け」
そして、サクス確信した情報を魔法で全員に通達する。
「見ていた者も居ただろう。ヤツにギルバートの能力が効いていた。そして『ワールドディメンション』にも捕まった。以上を加味し――」
サクスは少しずつ剥がれていくソレを全員に宣言した。
「クティノスに魔法効果は通じる。総員、この情報を一つのアプローチとせよ」
「くっくっく。取り逃がしたか」
場の皆が観客達の救護と逃げた二人の捜索に当たる中、クティノスはポケットに手を入れながらその場に現れる。
「おかえり……」
「当然のごとく無傷と」
ブルーとジェンダーはクティノスが老人を葬った事を悟った。
「満足出来たかい?」
「ふん。奴はロートルだった。まぁ、それなりに楽しめたがな」
「君がそうまで言うなんてね。知ってる顔かい?」
「ドゥルガー・トランスだ」
それは魔術教会でもトップ3に入る危険な人物であった。
「――創造のドゥルガーか……下手をすれば君以外は皆死んでいたね」
とんでもない危険人物が潜んでいたモノである。ドゥルガーがまだ魔術教会に所属していた頃、ジェンダーは面識があった。
彼のフィールドワークで出くわした程度の接触だったが、ドゥルガーは『神話生物』を捕え、ソレを実験動物として管理する程に危険な人物だったのだ。
「相変わらず、規格外だな」
そこへ、神母教会の出席代表であるヴォイジャが現れた。
「ヴォイジャか」
「これはこれは、ヴォイジャ神官殿」
クティノスとジェンダーは各々の反応を見せる。
「久しいなクティノス。ラトーの一件で上層部はお前にビクついている」
「ふん。屑どもの考えなど知ったことか」
「導士様はお前に戻ってきて欲しいと言っている」
ジェンダーはクティノスが『神母教会』に所属していた事は知っていたが、当時の役職に関しては知らなかった。
「あのメスガキに伝えとけ。少しは自分で考えろとな」
「ふむ。流石にソレは面と向かって言えないな」
「クティノス……」
すると、ブルーが三人に寄ってくる。
「皆を……手伝ってもいい?」
「何をやっている!」
「……治療……手が足りないって……」
苦しむ市民の保護と治療に一人でも多くの魔法を使える者が求められていた。
「勝手にしろ」
「後……」
「まだ何かあるのか!」
「魔力……もらっていい?」
「……」
クティノスはポケットから掌を出すと強く握り、己の魔力を極端に凝縮。ビー玉ほどの黒玉を創り出した。
「!?」
「危ない!」
「ビビるな、お前ら。色が黒いだけで攻撃能力は無い」
特に驚きもせずに待っていたブルーに、ポイッと投げて渡す。
「ありがと……」
「さっさと行け」
「ご飯……好きなのにするね」
「さっさと行け!」
たー、と走っていくブルーは黒玉から魔力を崩して治癒魔法士の魔力に当てて行った。
「ったく……あ? 何見てやがる」
「いや……お前にもそんな一面があったとはね」
ヴォイジャはブルーに対するクティノスの様子に驚きを感じていた。
「彼女はブルー。クティノスの召使いだよ」
「退屈しのぎだ」
「ほー、お前には家事をするイメージがないから、妥当な所だ。しかし、よく怖がらない子を見つけたな」
「ブルーちゃんは内面を見てるんだと思うよ」
「ケッ」
二人との会話に飽きたクティノスは背を向けるとヴァルダルムとセラフィスへ歩いて行く。今後の話をする様だ。
「あ、僕が間に入るよ。ヴォイジャ神官、それでは」
「クティノス。教会にはお前の席が残ってる。いつでも彼女と共に来い!」
ヴォイジャの言葉にクティノスはただ手を上げるだけで応じた。
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