第10話 続Fランクのお仕事
街道に近いうちは何事もなかった壁の外回りだったが、ある程度時間がたち周りが自然だらけになると魔物に出会うようになった。
チャラリラリ~ズッタズッタズッタズッタ。
角ウサギが現れた!
「ほぃっとな」
レッドが首を切り飛ばした!
タイシは軽く血抜きをして、縄とそこらの枝で作った背負い籠に放り込んだ。
手作りの背負い籠は、帰ったらばらして
タイシの手荷物は背負い籠の下を支える感じに持っている。
ビッグラットが二匹現れた!
「せいっ! はっ!」
ピンクが二連突きで仕留めた!
タイシは背負い籠に放り……あ、ビッグラットは肉が臭くて不味いし毛皮も売れないの?
タイシはビッグラットの魔石を取り出して革袋に入れた。
死体は野生のスライムとかが勝手に処理してくれるそうだ。
バトルモモンガが木の枝の上からこちらを
「よっこいしょ!」
ブルー君が石投げで落とし、レッドがトドメを刺した。
タイシは魔石を取り出し、ん? こいつの毛皮は安いけど売れる? 背負い籠の中に入れた。
「ちょっとタイシ! 貴方なんで戦闘が始まるたびに鼻歌やら口笛やらで音楽を奏でてくるのよ! やけに上手いし良い音楽なんで自然に体の動きが乗せられちゃうんだけど! 危ないからやめて頂戴! それと周りの状況や自分や私達の行動を一々口に出して言うのはなんなの!?」
さーせん、だって戦闘中は見てるだけでヒマなんだもの。
危ないって言うなら静かにしておこう。
角ウサギ、角ウサギ、ビッグラット、角ウサギ、角ウサギ、角ウサギ、ビッグラット、ビッグラット。
「角ウサギとビッグラット多いなぁ」
背負い籠の中は角ウサギがほとんどで、ブルー君は苦笑しながら言う。
「角ウサギとかは魔素から生まれるだけじゃなく繁殖もしますからねぇ、雑食で植物だけじゃなく虫とかも食べるそうですよ? 勿論人間も倒されたらパクッっと」
最後のは怖かったが、すごい大事な情報が飛び出してきた、魔素ってなんぞ?
ほうほう空気中に漂う物でマナと呼ばれたり定義が曖昧? 研究者頑張れよ!
魔物は魔素から生まれて種族によって繁殖もすると……。
魔素って日本で言う所の魔力素の事かねぇ?
魔力が備わったり回復する素とか言われてるが……まったく研究されてなかったんだよな。
使えるならいいじゃんみたいな風潮があってさ、今思うと情報操作されていた気もするな。
え? ダンジョンの周りは魔素濃度が低いから強い魔物が生まれ辛いのではと言われている?
「じゃぁこないだブルー君と一緒に内側の調査をしていた時に出会った角ウサギは」
「はい、壁を越えて来たのではなく、壁の内部で魔素から生まれた可能性もありますね」
スタンピードとかもあるようなダンジョンの側に王都があるのも、物資のためだけでなく、不意に湧く魔物が少なくなるようにかな?
どっちにしろ魔物の危険があるなら内部に奇襲を食らうより、外やダンジョンから来ると分かっている方が対処しやすいって事だろね。
「それだと人間はダンジョンの側にしか住めなそうだな」
「何言っているのよタイシ、ダンジョンから魔素を薄くする消費型の結界石が産出するなんて常識じゃないの、貴方がいた田舎とかでも使ってたんじゃないの?」
レッドがそんな事を言い出した、なるほど……。
……なんかもう面倒になってきたな、この二人なら言いふらしたりしないだろ、って事で俺の事情をレッドとピンクとブルー君にも詳しく話してしまう事にした。
……。
――
俺が城で異世界召喚された異世界人な事。
城の人間達にスキルが少ないので見捨てられた状態である事。
俺の〈生活魔法〉や〈賄い〉は異世界スキルな事。
異世界人の能力で時間はかかるが、これから強くなっていくんじゃないかという事
――
最後に、一緒に召喚された奴らに俺の居所とかバレて馬鹿にされたりとか、面倒事は嫌だから内緒にして欲しいと告げて口を閉じる。
それを聞いてブルー君は、成程と納得している。
まぁ彼はある程度察していたしな。
レッドとピンクは顔を伏せ体をプルプルと震わせている、怒ったかなぁ?
まぁパーティ解消も止む無しかね。
がばっと顔を上げたレッドはこちらを見ながら。
「ちょっとタイシ! そういう事はもっと早く言いなさいよ! 『生きていれば良い事あるわよ』的な事を訳知り顔で言っちゃったじゃないの! むがー恥ずかしいいぃぃぃぃ!」
レッドは自分の過去の言動を恥ずかしがっているようだ。
ピンクの方も顔を上げて。
「タイシさん私達に嘘をついたんですか? 田舎の出身とか名士とか ニホンではなくチュキ……なんとか出身とか」
そう聞いてきた。
俺はピンクのその質問に対して真摯に答える。
「俺は広大な地であるチキュウの島国であるニホンという国の生まれだ、ニホンは国土の七割以上が山な事、そして俺の家が魔法の名家であった事は間違いない、言葉を
ピンクはそれを聞いて。
「そうですか……タイシさん……嘘ではないけど私達に勘違いさせた貴方は……マイナス百ポイントです……」
そう告げられた、総計でマイナス五十一ポイントか……嫌われたかな……ま、しょうがないね。
ピンクは俺を真っすぐ見つめてきて、尚も告げる。
「異世界の〈生活魔法〉ってタイシさんが身奇麗な秘密はそれですか?」
そこに気づくか、まぁこれが最後かもしれないし、ちょっとサービスしてからパーティ解散するかね。
そうだよ、と答えて、ピンクとレッドとブルー君に〈生活魔法〉を使って奇麗にしていく。
これで服や体や髪の毛の汚れなんかは全部とれただろう。
いきなり魔法をかけられたブルー君やレッドとピンクはお互いの姿を見て何となく察したんだろう、ピンクは自分の髪を触って。
「レッドやブルーの髪も汚れが見えず艶々で私の髪もそうなっているんでしょうね、サラサラ髪の秘密はこれだったんですね……ねぇタイシさん」
ピンクが真剣な表情でこちらを向く、パーティ解散の宣言かな?
「なんだピンク?」
ピンクはゆっくりと口を開き、大きな声で宣言してきた。
「……お嫁さんポイント千アップです!」
解散ではなかったようだ……っていやまてまてまてまて!
「桁が今までと違いすぎるだろ! 末期MMOゲームの経験値かよ!」
つい心の中じゃなく口に出して突っ込んでしまった。
ブルー君はこれはお金になりますと何か考え出し……ちょっそれはやめて?
レッドは自分のポニテの毛先を触ってはすごいすごいと叫び、また自身の服や鎧を確認してはピョンピョン飛び跳ね喜んでいる。
ピンクは尚も言い放つ。
「交渉ではいかにウソをつかず相手に勘違いさせるかのテクニックが必要だとブルーに聞きました、その点タイシさんは花丸です、私達に使ったのはマイナス百ですが、その資質はプラス二百ポイントにはなるでしょう、そしてその類まれなるスキル効果ともなれば千ポイントでも低いくらいです! こんな人のお嫁さんになれるなんて私は運が良いです!」
なれないから! なっていないから!
それとブルー君! この子達に何を教えてるんだよ! いやまぁ冒険者には騙されない交渉力も必要だと思うけどさぁ……。
ピンクのポイントは今までだと、なんだかんだで冗談を含んでいた気がするんだが、ちょっと目つきが真剣になっている気がする……。
あ、そうだ、これを言えばいけるかな?
「いや実は俺って二十歳なんだよ、なのでちょっと年が離れすぎてるだろ? 結婚相手はもっと年の近い相手から探してくれよ! ほら、ブルー君とか優良物件だぜ?」
とブルー君にパスしてみた。
「七歳差くらい普通だと思いますよ? 成功した冒険者とかは引退するのが四十くらいでも二十歳以下のお嫁さんとか当たり前に貰いますし、お嫁さんの方も裕福な生活が確定しているなら喜んで嫁ぎますしね」
ブルー君は俺のパスを相手方のフォワードであるピンクにパスした。
五人目じゃないけど裏切り者はここにいた!?
むぐぐぐ、あ! そうだ。
「そう、俺は異世界人だから異世界のルールがあるんだよ、こちらの世界の婚姻にはどうにも慣れそうにないんだ!」
俺のその言葉に、ピョンピョン跳ねていたレッドが口を挟んでくる。
「異世界の婚姻に関する風習って興味があるわね、ねぇタイシ、どんなルールなの?」
「男は十八歳、そして女は十六歳になるまで結婚は法律上許されないんだよな」
ブル―君は、へーそんな事まで法律で決めるんですか、と興味深げだ。
ピンクはそれを聞くに悔しそうな表情をして。
「タイシさんの年齢は良いとして私の年齢が足りてませんか……タイシさんは私の事が嫌いな訳ではないですよね?」
「勿論だ、しかし俺も異世界人だからな、むこうの法律は守りたいんだよ、あーすごく残念だ」
まぁこの子も後三……いや五年くらいしたら良い女になりそうだが、若すぎるよねぇ。
「むぐぐ分かりました、今は引いておきます」
ピンクは諦めてくれたようだ、良かった。
「タイシが本当に異世界人だったとはねー、まぁ周りには黙っておくから安心してね、だからまた〈生活魔法〉よろしくね!」
レッドは俺の〈生活魔法〉を気に入ったようだ。
「タイシさんのその〈生活魔法〉ですが、すごいお金を生み出す事が出来る可能性があります、ですがタイシさんが弱いうちに公表すると
ブル―君は悔しそうだ、君やっぱり商売人を目指した方がよくない? 俺がいつか出資しようか?
そしてピンクは。
「もう! 年齢くらいこちらの基準でもいいじゃないですか、もうもう! タイシさんマイナス五百ポイントです!」
ふぅ……かなりのマイナスポイントを貰う事が出来た、だがしかし、未だに六百以上のポイントがあったりする、ポイントプラス地雷を踏まぬよう気をつけねばいかんな。
……しかし俺は異世界に来て何のゲームをしているのだろうか?
他の女の子に声をかけまくれば好感度が下がるだろうか?
今度ピンクの目の前で狐耳受付嬢でも
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