第3話 女神と雑談

 さて次は、異世界召喚しようとしている国について教えてくれないか?


「さぁ? 細かい事はさっぱりだわね」


 いやいや世界を統べる女神だろ? 何で知らないんだよ。


「ふむ……貴方が日本を統べる国王だとしてよ? 地方の村議会の内情とか事細かく知っている必要があるのかしら?」


 ……それもそうですね、召喚された時に俺にスキルが無いと不味いかもとか思ったんだが……。


「なるほど! 確かにそうね、せっかく使える戦力とかで召喚したのにスキルなしのゴミだと知れたらその場で処分とかありそうねぇ……貴方の手持ちのスキルって世界に馴染んで無いと鑑定に出ないでしょうし、ルール上余計なリソースを食うから勿体ないんだけど、二つだけここで馴染ませちゃいましょうか、力の消費を考えてなるべく弱いスキルだと有難いわね」


 俺が言わなかったら召喚された瞬間に詰んでた可能性があるのかよ!


 神ってのは大雑把だよなぁ……弱いスキルかぁ、どんなスキルでも覚えれば基礎能力が上がるから弱いスキルはたくさんあるぜ!

 〈鼻歌〉とか〈口笛〉とか〈指鳴らし〉とかな!


「胸を張って言う事ではないわよね……地球のスキルって変なのばっかね、あんまり雑魚だと待遇が悪くなる可能性があるわよ? ……ユニークスキルに近いカード化のスキルはまだ作っていないし適当に二つ選んでよ、強いのは駄目だからね? ここでやるのは天界のルール的にリソースが経費で出ない可能性が高いし、私のお小遣いからになるんだからね?」


 世界を統べる女神なのにお小遣い制なのか……? 実は下っ端女神説?


「無駄使いすると眷属神達がうるさいのよ! 前にストライキされてすっごく大変だったの……それ以来、私の使用出来るリソースはお小遣い制になったのよ、それと誰が下っ端よ、私が! この世界で! 一番! 偉いの!」


 では一番偉い女神様にかしこみかしこみ願い申す~、我の〈生活魔法〉スキルと〈柔術〉スキルでお願いもうす~。


「すっごい適当っぽくてむかつくわね、〈生活魔法〉と〈柔術〉ね、〈生活魔法〉じゃ戦えないけどいいの? 〈柔術〉は〈格闘術〉の親戚っぽい気がするけども」


 んー?


 だって水を出せたり、火種を出せたり、気温を調節したり、遮音できたり、歯磨きの代わりに使えたり、服のシミや汚れを取ったり、シャワーの代わりに体の汚れを取ったり、布団乾燥機の代わりになったり、自身が持てるくらいの物は浮かせて運べたり、電子レンジの代わりになったり、埃を寄せ付けない結界を張ったり調理に使えたりと。


 戦闘に使えないってだけで他にも色々フォロー出来る〈生活魔法〉さんはすごいんだよ?


「待って! ちょっと待って! 私の世界の〈生活魔法〉と性能が違いすぎるんですけど!? うちのは水が出せて、火種が出せて、濡れた服や髪を乾かす程度の風を出すくらいしか出来ないんだけど、地球の〈生活魔法〉おかしくない?」


 そりゃ電化製品から派生した便利魔道具とかが当たり前にある地球でさ、快適便利生活を再現する魔法って事ならそんな感じになるんじゃねーの?


 戦闘というか攻撃の意思を持った存在とか、後はこっちに強い敵意を持った存在が近くにいると使えないってデメリットはあるけどね。


「なるほど……『生活』の意味が違うのかぁ、こっちの世界って水洗トイレとかいう奴もまだ普及していないのよね、転生者とかが一生懸命普及させようとしているんだけどねぇ、魔道具はお高いから……」


 うへぇそれならもう〈生活魔法〉一択じゃんか、ではその二つでお願いします。


「待って……〈柔術〉も怪しいから調べるわ、ちょっとスキルの中を見て……うわ、やっぱり! これ上級魔法系スキルじゃないの! しかも術の範囲が広すぎでしょ! これは駄目よ! 地球のスキルは名称と内容がおかしいでしょ……」


 そんなの現代地球のダンジョンに、スキルスクロールをばらまいた神様に文句を言ってくださーい。


 しょうがないなぁ、じゃぁ〈隠蔽いんぺい〉でよろしく~。


「〈隠蔽〉ね……普通にスキルやらを鑑定から隠したり出来るやつなのね、これならいいけど……戦闘系スキルがないけどいいの? いいなら凍結中にやっておいてあげる、共通語理解スキルだけはなんとか経費を出させて入れておくから」


 下手に戦闘系あっても駒にされそうだしなぁ、スキルが馴染んで使えるまで隅っこで大人しくしている事にするよ。


「了解、じゃぁ決定ね、後はそうね……さっきの罠を仕掛けた相手に兄貴呼びされる事になった事情とか話してよ、ワクワク」


 芸能レポーターか何かか貴方は。


 うーんそうだなぁ、さっきの貢ぎ物リストの中身をある程度くれたら口が……いや心が軽くなるかもなー。


「がめついわね……まったくしょうがないわねぇ……じゃぁ少しだけあるこちらの世界のお金と食べ物とか適当に入れておいてあげるから」


 ふーん、まったく迷わずそんな簡単にくれるんだ?


「も、もももちろん女神の広い心によってのほどこしよ?」


 俺から回収した魔道具やら電化製品やら神具や貴金属やらは、この先どうなるのかなーすっごく知りたいなー。


「むぐっ、いや持ち込ませない天界ルールだから……没収するのは仕方ないのよ?」


 持ち込ませちゃいけないのか、それならこの場で全部壊しちゃってもいいよね?


「ぬぬぬぬぬ、貴方なんとなく気づいてるのね……貴重な貴金属は商業神が管理するし、珍しい道具は他の眷属神達が欲しがるわね、神具は異世界の神との交渉材料にもなるわ……」


 それは改造玉手箱何個分くらいの価値があるのでしょうか?


「あーもう好きなだけもってっていいから! 普通はこんなにたくさん物資を持ち込む人なんていないのよ! これから倉庫系のスキル持ちが来る事とかを考えると、天界ルールの改定も必要なのかもね……」


 いえーいさすが女神様だ、太っ腹~、俺の空間倉庫ってバレーコート三枚は張っても余裕がある体育館くらいの容量があるんだよね。

 今回ので回収された分を考えて三分の一以上は空いてるだろうから、遠慮なく頂いていきまーす。


「大きすぎでしょ! 学生の中に一人いた〈倉庫〉スキル持ちも小さな荷馬車くらいの容量だったわよ? 貢ぎ物は後で色々交渉に使ったり地上の教会に分配下賜したりもするのでその……お手柔らかにね? ついでに生贄いる?」


 生贄はいらん! どんだけ扱いに困っているんだよ……ふむ、なら分配に使う以外を全部くれ。


「鬼か貴方は! この可愛い女神様を困らせたくないとか思わないんですかね! まったくもう」


 もしくれるなら、カード従者ご褒美用のお菓子類をダンボール三箱分置いていこうじゃないか。


「おっけー必要分を計算するからちょっと待っててね、えーといつもはこれくらい下賜しているから……こっちの交渉でこれは欲しいし……あとこれは……」


 女神がリスト片手にうんうん唸り出している間に、置いていくお菓子をダンボールで三箱出しておく。


 知性ある魔物や種族は好みのご飯やお酒を出してあげると友好度が上がりやすいから、それ系に使える物資はいっぱい常備している。

 ドッグフードとか猫缶とかペット用のも動物系魔物には人気が高い。


 カードは億単位の値段がつく場合もあるし、食料品なんて買い占める勢いで常備している……が、これからはもう入手できないんだよなぁ。


 玉手箱の大きさじゃぁやり取りも限られるだろうしな。


「選んだわ、この印がついてるの以外なら持てるだけ持っていっていいからね! その箱がお菓子ね、ちょっと見せてね」


 リストを見るが……うーんさすがに全部は入らないかなぁ……って、さっき見たリストと違うじゃんこれ。


 ダ女神め……仕方ないが嵩張かさばる物にはリストに横棒を引いて諦めるとして、食材と生活雑貨をメインにするか。


 ……。


 じゃぁ、この横棒で消されてない物を俺の空間倉庫に入れといて貰えるか?

 後この食材の中で一番美味い魔物肉を、さっきの交換用玉手箱にも詰めておいてくれ、早速日本に送っちゃおう。


「ふぉぃふぉぃほうかぃポリポリ、うっわこのお菓子ってば物凄く美味しいわね、この粉の味が絶妙なのね……貴方もうちの世界でこういった物を作る技術を普及させてくれたら嬉しいわ」


 お菓子の袋がビニールから紙になっているな……パッケージの絵柄とか完全複写じゃなくて簡素な物になっている。

 いやまぁ中身が同じならいいんだけども、工場で生産しているお菓子の完成度は高すぎるからな……再現は難しい物もあるんじゃないかな?


 さてと、じゃぁ俺がなんでこの世界に飛んでくるはめになったのか語ろうじゃないか。


「ポリポリっ、いぇーいドンドンパフパフー、待ってましたー、あ、飲み物でも何かないかしら?」


 空間倉庫からペットポトルのジュースを出そうとしたら陶器の瓶でした。


 こういう変化をするのか……はいどうぞ、この容器って中の物を保存してくれるんだよな、売れるかな?


「ありがとー、グビッ、ゴホッゴホッ、なにこれ喉がシュワシュワする、あーこれが本場の炭酸飲料っていう奴なのね、くぴっくぴっ……パチパチして甘くて美味しいわ! 勿論保存魔法は開けたら消失するようになっているわよ、まぁただの陶器の瓶としてなら売れるかもね?」


 そう上手くはいかないか。


 では地球世界日本のダンジョンでのお話、始まり始まり~。



 そこは『ダンジョンのある現代』日本。

 しかして、とある魔法名家の分家筋の俺はいつものように……。



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