第2話 女神との交渉
でだ、モグモグ女神よ、俺がいた地球世界のダンジョンは魔物を倒すとドロップを残して消えてしまうんだが、一定確率でカードが出たんだ。
それを使って魔物を召喚や送還が出来たし、さらに名付けをすると名付けた人間の専用カードになって譲渡不可になるという性能を持っていた。
名付けをした魔物とは魔力的なパスで繋がり感情のような物が伝わる事で指示がし易くなるというメリットもある。
まぁ俺は大量に持っているんで名付けなんて全部はしてられないんだけどな。
誰かとカード交換する時にも名付けてない普通のカードは必要だったし。
「誰がモグモグ女神よモキュモキュ、このモンブランというのは最高ね、次はイチゴの奴行きましょう、あ、紅茶もう一杯よろしくー」
食べる音を微妙に変えても意味ねーだろうに……。
この世界の魔物はダンジョンの外にも普通に居るんだろ? どんなスキルにするつもりなんだ? ワクワク。
「ずずっ、はー美味しかった、そうねぇそっちの世界だと魔物を倒した時の魂をカードにしているみたいだし、真似しちゃいましょう、ただその場合カード化する魔物の体も使用するから倒した魔物が消えちゃう事になるわね、うーん……まぁユニークスキルという事で地上の人間も納得するかしら? 確率は地球世界と同じでいいわね? 後で向こうに問い合わせておくから」
……ドロップ確立とか有るんだなやっぱり。
確率を教えてくれるなら、すごい良運営様って事になるんだが。
「誰が運営よ、私は女神様でこの世界で一番偉いのよ? 確率は教えません! そうそう魔物の素材も欲しい事があるでしょうし、スキルのオンオフ機能も付けておいてあげるわね、貴方のスキルが有名になって評判が良さそうなら私の世界に魔物カード化の法則を定着しちゃうのも有りね」
世界中にカードが溢れる時代が来るかもって!?
何この人、神じゃん、素晴らしいな、その素晴らしい世界のために俺のスキルをある程度広める必要もあるか……。
「だから私は女神だって言っているでしょ、じゃぁスキルは作成してからオーブにして貴方の〈空間倉庫〉に後で入れておくから、使い方は魔力を通せばいいわ、貴方のスキルが有る程度馴染んでからじゃないと、オーブを使う事が出来ないようにもしておくから、こんな所かしらねぇ……じゃぁそろそろ時間凍結しましょうか?」
ちょっと待て。
「なーに? ちゃんと地球のカードと似たような仕様にするわよ? 多少の追加要素も加えておいてあげる」
いやその事じゃない、いや追加要素も気になるが、女神様はさっきこう言った、共通語理解は別にしてスキルは二つ与えると。
つまりもう一つスキルを貰えるんじゃないだろうか?
「いやいや、さすがにユニークスキル級をあげるんだからもう一つは無理よ、共通語理解は当たり前にあげるけども」
おーう、この世界の神は嘘をつくのか……失望した……あまりの失望感に地上に行ったらこの事を大々的に広めてしまいそうだ。
「神を脅迫とか……いやまぁそんな事をしたら貴方が女神教会に狙われるだけだからいいけどさぁ」
ああ、そんなのあるのか、めんどくさそうだ、よし、ならすごい魔道具とかでもいいぜ?
「何を
はぁ? ちょっと待てよふざけんな!
俺の手持ちの魔道具とか装備とか貴金属とかいくらになると思ってんだ、軽く見ても数百億じゃ済まないぞ!
「これはこの世界のルールよ! ごねても
俺の〈空間倉庫〉は時間を止めてあるのでそこは大丈夫です。
個別に指定が出来ないのが不便な所だが、てか他人の空間系能力に干渉出来るとか、さすがは神様って事かね……。
「こんなに大量な品物の持ち込みとか普通はないのよ……んー仕方ないわねぇ……じゃぁ私にお供えされた物資と交換するって形にしてあげる、リストを渡すから選んで、女神教会で私にお供えされた花とか果物とか布とか食べられる魔物丸ごととか……人間の生贄とか……」
おいまて! 最後のやつぅ! まさか邪神!?
「違うわよ!? いらないって神託を出してもたまに捧げる馬鹿がいるの! そこに残しておいても幸せになれないだろうから、回収して他の穏健派女神教会に聖女候補とか使徒候補とか適当に言いくるめて預けてるのよ、ほんと人間は面倒くさいったらないわ……、それになんで生贄っていつもいつも若い女の子なのかしら?」
それって女神様が生贄を受け取っちゃっているから、また同じのを捧げる馬鹿が出て来てるんじゃないですかねぇ?
「……」
……。
「こほんっ、でね、これがリストだから選んで頂戴、さてと貴方の〈空間倉庫〉内の魔道具だけど……うわっ神具まであるじゃない……没収よ没収、それにあっちの神の加護付き武器とか私の世界じゃ上手く動かないんだから仕方ないわよね、って、あー! カードの魔物に装備させてるのもかなりあるわね……もう全部没収よ! 確認が面倒くさいわねこれカード何枚あるのよ……」
ぐあ……気づかれた……。
カードの魔物に装備させて送還すると装備ごとカードになるんだよな。
魔物の体積分くらいはカードに入るが、装備やアイテムは貸出しじゃなく魔物相手に譲渡しないと駄目という仕様なんだよね。
地球のダンジョンを作った神様? とやらが倉庫として使えないようにしたんだろうけど……まぁ裏技がない訳じゃないんだけどな。
カードの魔物にも意思があって好感度もあるから、あげたり奪ったりを繰り返すと指示を一切聞かなくなる。
まぁ普通に扱っていればある程度好感度が有る状態になるけど、装備を没収されてあいつらの俺への好感度が下がったらどうすんねん……。
「ああもう量がすごいわね! 神の力を使ったりそれ系の加護が少しでもあるのは全部没収ね、なんでこんなにすごい物持っているのよ貴方……、好感度? その辺は私が説明しておいてあげるわ、思考分裂スキルがあるし余裕よ余裕、神の説得なら魔物も聞くでしょ」
あー神具関係は玉手箱の運搬依頼を受けた時に依頼料と慰謝料で相手側からごっそり宝物を頂きまして……まぁ色々あったんですよ。
カード配下の好感度が下がらないなら……しょうがねぇか……。
「神具を貰える運搬依頼って何をしているのやら……すごく楽しそうな話ね、この相談が終わったら聞かせなさいよね?」
この女神は芸能週刊誌とか好きそうだよなぁ……てかこのお供えリストに異世界の
「そりゃ貴方、自分の世界で考えてみなさいよ、神様に大事なお金を捧げますか? お花とか食べ物が基本でしょう? 商業神とか鍛冶神とか契約神とか、商売人に敬われている私の眷属神達にならお金も捧げられてるかもね?」
そっちから欲しいもんだ……これ全部を貰っても釣り合わない気がするんだ、神具とか値段すら付けられないしな。
「うーん……少し私が困るけどもリストに有る奴全部もってく? なんなら生贄もつけるわよ?」
生贄なんていらんわ! 厄介事を押し付けようとするなよ……。
なぁ、さっき言ったもう一つのスキルを諦めるし、俺から没収した物も全部諦めるからさぁ、地球から物資を得られる魔道具とかくれないか?
「貴方もオンラインショッピングとかさせろって言うの? 無茶言わないでよ……そんなの作ったらどんだけ神力のリソースをもってかれるか分かったもんじゃないわ」
出来ないとは言わないんだな……ふむ、むこうにいる人間に買い物をして貰うとかは?
「連絡をする魔道具って事? 受け取りはどうやって……うーん……玉手箱の機能を流用すれば? ……相手がいるなら……大きさを制限すれば……あれを利用して……」
女神様が可能かどうかを考え始めた、ふぁいとー。
地球から物資を得られるのなら、お菓子のレシピとか手に入っちゃうぞー、頑張れ~。
「お菓子レシピ! うーんよし!……玉手箱を改造して向こうの世界とこっちの世界で連動させます、お互い中に入れた物が交換されるという感じでどうかしら? 地球世界に協力者が必要になるけども、貴方、お友達とか恋人とか家族とかで心当たりはいるかしら?」
恋人は別れた後作っていないし、家族は冷え切ってたし、ソロ探索者に友達なんていると思って……あー俺の事を兄貴と呼んだ探索者なら一人。
でもなぁ、まだ知り合って一時間もたっていなかったし、罠っぽい玉手箱を渡すように頼んだ依頼者が、
「寂しい人生なのねぇ……って自分を罠にかけようとした相手を一時間もせずに兄貴呼ばわりするって何事よ! ちょっと詳しく聞かせなさいよ……ってあれ? その探索者って妖精を伴ってなかった?」
なんで知っているんだ?
そういや妖精を二体従えてたな、ダンジョンのカード好き仲間って事で意気投合してな、俺のした事を即許してくれたんだよ。
変な奴だったよなぁ……。
「向こうの神様からね〈
はぁ? 妖精が天使? 一郎お前何者だったんだよ……。
「ちなみにその一郎君は神格を持っていて人として暮らしているんだってさ」
なんじゃそりゃ、普通の気の良い若者って感じだったけどな……。
まぁいいや、別に騙された訳でもないし、知り合って間もない俺がどうこう言う事でもないしな。
「どうする? 貴方の無事を確かめるくらいだし頼んでみる?」
そうだな、あいつらとは焼き肉をおごる約束してたし、せめて肉くらい送ってやらなきゃな。
よし、頼んでくれ。
断られたら……まぁしょーがねぇさ。
「了解、それじゃあ貴方は相手に送る手紙でも書いてね、それと貴方から没収したモバイル端末を玉手箱の改造に使うからね、それと玉手箱で交換する品物だけど、さっき没収したような神力が使われている物や電子機器は勿論の事、貴金属や宝石なんかも駄目だからね? 食材とかありふれてる物にしといてね、金とか銀とか勝手に流出させたり流入させたりすると眷属神がうるさいのよ……そういうのは勝手に弾く機能をつけとくからね」
へいへい、空間倉庫から紙とペンを出す。
って、うわ! ボールペンが木製と何だかよく分からない物質で出来ていやがる。
こっちで魔物を倒して取れる肉とかは魔力が宿ってたりするか?
んで美味かったりする?
「そのペンは魔物素材を使ってみたわ、そうねぇ魔物ってのは体の中に魔石がある生き物を示していてね、魔力が宿っていて美味しいお肉らし……って貴方のカードの中にこちらの世界でいう魔物以外のエルフとかドワーフとかいるけど、こっちでは魔石のない存在はスキルでカードに出来ない仕様にするからね? 持ち込むカードはどうしようと構わないけど……、あら? この一郎って子は使用済みの玉手箱を所持しているのね……新しいのを送り込まずに改造で済むのは有難いわね、向こうの神に連絡もしてっと……」
ぬぐっ、そうなのか……まぁ確かにエルフとかでも倒すとドロップを残して消えちゃう地球のダンジョンとは違って、倒したら生身が残るっぽいこっちの世界でエルフ狩りじゃーとか、はっちゃける訳にもいかんか。
新しい世界で手に入らないカードは大事にしよっと。
そういや一郎はあの時結局逃げなかったしな……箱も俺が消えた後で回収したんだろうな。
さて手紙を書くか。
『女神に貴重品や貴金属の流出や流入なんかは禁止された、こちらの食材やらを送る事にする、地球のダンジョンから取れる魔力の宿った品物と同じような物になると思う、取り合えずは約束だった焼き肉に使える肉とかを送るから、俺が欲しい物が出来たらリストにして入れておく、適当に対価に見合うと思う分だけ送ってくれたら嬉しい、こっちはこっちで楽しくやれそうだから安心しろ、じゃーまたな』
こんな所かな。
書き終わったぞー。
「はい、こっちも完成したわよ」
女神がテーブルに出してきたのは、黒い漆塗りの螺鈿細工が施された箱で、最初に輸送の依頼者から受け取った時と同じ? ではなかった。
フタ側に何かついてるな、これってモバイル端末の画面じゃね? 半分くらいの大きさになっているけども。
触ってみると画面が明るくなりいくつかの簡素なメニューがあり、ヘルプまでついていた。
……。
……つまりこれに物を入れて完了ボタンを押しておくと、相手側の完了と力の蓄積を待って勝手に発動するんだな。
箱の中身により消費する力が変わるのか……力の蓄積ゲージもあるな、なるほど……。
大きさは縦二十センチちょいの横十五センチくらいの高さが十センチくらいか。
箱に一郎あての手紙を入れて完了ボタンを押してみる。
が、完了のまま特に何も起きないな。
「そりゃ向こうが完了しないとね、〈空間倉庫〉に入れておいても作動するようにしておくけど、完全に時間停止しちゃうと無理だからね?」
なぬ? それはまいったな……生物の物資とかは諦めるか? いや……。
「生のケーキとかは私が処分してあげるわよ~」
さっき女神様が包装を魔法の掛かった物にしてくれるって言ってたし大丈夫か。
野菜とかは……完全停止じゃなく数千分の一の速度にしとけばいいのか、変更っと。
「ちぇっ、気づいちゃったかつまんないのー」
子供か貴方は。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます