4. 同期のメンバーを紹介するよ!


「え~っと?この子がかなでさんで、いいの…かしら?」


「うわっは!ちっこ!」


「……はい……よろしくお願いします。」



 現在、こころの膝の上にのせられながら対面しているのが、ボクの同期たちだ。こころも小さいから、乗せると言うよりは抱きつかれているような?



「…ボクは『大空 かなで』で活動することになりました。かなでです……よろしくお願いします」


「は~い、よ・ろ・し・く!『天使あまつかリリィ』の名前で活動していくわ。ち な み に 、りりぃは梨里をモジッてるからりりぃって呼んでちょうだい。もちろんオフでもね?」


「う、うん。よろしくお願いします、りりぃさん」



 なんというか、個性の強い人だと思った。陽キャ陰キャとかじゃなくて、悪魔的なお姉さんって感じ。


 仕草や声音に色気を感じるというか…妖しげな雰囲気をまとっているというか…正しく妖艶の言葉を体現している女性で……ASMRとかで堕ちていくリスナーたちの姿が幻視できちゃうよ…。


 

 リアルこそ黒髪ロングだけど、Vイラストは銀髪のロングで、衣装を含めて全体的に白っぽい色でまとめられている。天使をモチーフにしているから、背中から覗く小さな白い羽が可愛らしい……んだけど、表情差分とか、衣装の露出度が高めなのがちょっと扇情的。身長が168と高いのと、何とは言わないけど D もあるのとで……なんで天使のイメージにしたんだろうね…?



「うぃーす。オレは『深淵ノ魔王アビス・エルケーニヒ』だぜ!かっこいいだろ

 ちゅーことで、よろしく なっ!」


「え、あ、はい!」



 な、なんだろう?この、あふれでるメスガキ感というか、生意気感は……どことなく中二病みもあるし…。



 Vイラストは……うん、まぁ、ロリ…だね。

 イメージカラーは黒なのか、全体的に紫と黒でまとめられている。髪が灰色+薄紫なのと、肌色が白なので、暗い雰囲気には感じられない。

 ただ、大きな黒マント(裏地は赤)に腕を組んでのどや顔というのもあって、この時点でもうクソガキムーヴをしそうな予感がひしひしと……。



「あっ、そうそう。名前なんだけどさー、黒乃っていうんだけ ど。クロノって 時間 じゃん。チートってかんじはあるけどー、ボスっていう感じはしないじゃん?っつーこと で、オレのことはクロって呼んでくれ。

 あ、やべっ。そうじゃん。クロちゃんって呼ぶのだけは勘弁してくれよー、マジで後生」


「あ、うん。よろしくお願いします、クロさん」


 言葉に強い圧力を感じないのも生意気感に拍車をかけているのかも。適度に力が抜けた声というか、子供っぽいしゃべり方というか。



「それで…かなでくん?ちゃん?は~、男の子、で、いいのよね?」


「はあー?うっそだろ。こんなかわいいのが男のわけあるかってんだ。まっ、オレの方がかわいい、けど な!」



 あぅ……目が死んでいくのを感じる。



 この時間になるまで、ずっとこころと猫宮さんのおもちゃにされたわけだけど。何故かレディースの服だけで着せ替えをされていた。

 


 ただ、ボクの抵抗を聞いたこころが助け船をくれたんだ。いきなりスカートとか下着とかの女性しか着ないものは抵抗力を強めるだけで、先がないんだって。


 先 ってなんだろうとは思ったけど、猫宮さんは納得したのか、『レディースなんやけど、男性でももんにするわ』といって遊ぶようになった。



 それでも、心情は複雑だったけど。



 そのうち、猫宮さんがしっくりきたいくつか服のセットを、袋にいれて渡されたあとで解散となった。




 そして、今。ボクはポリ100%生地とやらのゴムショートパンツと呼ぶものに、ダボっとしたスウェットとやらを着ている。緩くインするのがいいらしく、その通りにしているんだけど……。


 手は出ないし、部屋着みたいだし、文字通り服に着られている感じなのだが、猫宮さん曰く、それがいいのだとか。



(んふー、抱き心地抜群。さす猫。生足もいい。すべすべ……なんで?)


(………成長期が、来れば……)


(……年齢的に、もう…来ないと思う)



 まぁ、来なかった原因は分かってるし、ボク自信も諦めてるからいいんだけどね。お母さんも、このままでいいって言ってくれてるし。

 


「も、もちろん……成長期が来てないだけなのでこんなんですけど、立派な男です!」


「え~っと、いや、まぁね?それは、そうなんでしょうけどねぇ」


「んー、こころさんに抱きつかれながら言うことじゃねーような?

 つーか……ミディアムのストレートでその服装は、狙ってるだろー?」


「ミディアムのストレート……?」


「あっ?あー…?もしかして自分の髪型も知らねーかんじ?」


「まぁ、うん。髪型はお母さんとか、学校の友達とかがよく弄ってるから……下手に抵抗するよりおとなしくしてた方が早く終わるので……」


「かなでは押しに弱い……んふ、いいこと聞いた。ナイス、アビス。」


「んおっ?お、おぉ!こ、ここ、こ、こころさんにそんなこと言われるなんて…感無量だぜ」


「そうねぇ、りりぃにもかなでを貸してくれないかしら?」


「むぅ……今日は3期生の集まりだから仕方ない。貸すだけなら許す。」


「あらあら……ありがとうね?


 んまぁ、本当にちっちゃいのね。ちゃんと食べてるのかしら?私でも抱えられるなんて、相当軽いわよ?」


「おおぅ……男ならちょっとは抵抗したらどうなんだ…あぁ、いや、なんでもねー。

(急に目が死にやがったこいつ)……いろいろ、苦労してんだな……


 つっても、本当にVモデルとそっくりだな。目の色と服さえ合わせれば、まんまじゃねー?」



 それを言うなら他のみんなだって、ほぼそうなんだけど……。



 ボクのVイラストは特に特徴と言う特徴はないのだ。設定も思い付かなかったから、黒髪の一般的な日本人のまんまだし。


 一応名前から、イメージカラーは青系統と白にして、装飾に音符のようなものはあるんだけど……歌と言えば唄意さんだからなぁ。べつにボクは歌が上手いわけでもないし……好きなんだけどね。


 服装は、それこそ今着ているような服に紺色主体ののカーディガンが追加されているくらい。一応、バーチャルらしく装飾は色々あるし、白のトップスにショートパンツはデニム生地と、イメージカラーで揃えてはいるけど…。



「まっ、そんなこと言ったら、オレたちも同じかー。

 つか、素のかわいさとかいじらしさとかじゃ負けてるしなー、オレらはよー。ま、それでも名前とキャラのインパクトは、もう無量大数なみにあるけどなー。こちとら」


「そうねぇ。かなでちゃんのそれは立派な武器ですもの。これ以上余計なものをつけちゃうと、かなでちゃんの良さがごちゃごちゃしちゃうわぁ。


 ということをクロノちゃんは言ってるのよね。」


「えっ、ち、ちげぇし!オ、オレの方が魅力があるに決まってんだろー?

 つ、つーか。かなでは表情に出やすすぎんだよな!せっかくの初顔合わせで暗い顔してんじゃねー」


「そ、そういえば……ボク、しゃべってない?」


「うふふ。ちなみにクロノちゃんは生意気ムーブをよくするけど、なんだかんだ言って心優しいのよね。

 声音だけで、落ち込んでるとかそういうのを察してくれたり、よく相談相手になってくれたり、ね?」


「ちょっ、おまっ!へ、へんなことを吹き込むなよなっ!か、かなで?オレはそんなんじゃ、ねーからな?」



 あたふたしながらりりぃさんとボクを見る、クロさんのコミカルな動きが面白くて――


「――くすっ」


「ん!」

「あら」

「あ?

 ようやく、笑ったなー?

 うひひ、そういや、手っ取り早く笑わせるやつがあんじゃん。覚悟するんだぜー?」



 クロがどや顔をしつつ、手をわきわきさせながらにじり寄ってきた。



「……あ、すいません…その、バカにしているとかじゃなくて


――えっ?あ、いやっ、ちょっと、や、やめ――


―ひゃっ、いぃっひゃ!あひゅ!ひ、ひゃ、ひゃめへぇ~――」




 いつの間にか、こころも交ざっていたようで……いきなりボクの醜態が同期に……。



 今日一日でいろんなものを失った気がする。


 でも、その分、みんなとの仲が深まったように感じた。



 この後、同期とご飯を食べに行ったり、カラオケに連れてかれたりした。


 みんなが帰ったあとも、クロさんが通話してくれて、いろんなことを教えてもらった。彼女は相当なVオタクだった。


 その後も、機材の勉強したり、同期と通話したり、ちょっとオンラインゲームをしたり、猫宮さんに遊ばれたり、こころとお話しをしたりして日々を過ごしていった。






 そして、初配信当日。案の定ボクは緊張からパニックをおこし、頭が真っ白になっていた。


 だけど、ボクにはもう、頼れる人たちがいるんだ。






7分後にライブ配信

4月22日 20:15       通知設定:ON


[Re:初配信]は、初めまして……よ、よろしく…です…[大空かなで/イドラ&リアリティⅢ]

2.1万人が待機しています

#大空かなで初配信

⤴️1154 ⤵️低評価 🗨️チャット ➡️共有 ≡+保存 …

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る