第2話 初めての出会いと成長

「初めまして、アンセルム様。私は、デュフォール公爵家のミレイユです。よろしくおねがいします」

「あぁ、初めまして。俺はアンセルム。よろしく頼む」


 アンセルム王子と初めて顔合わせしたのは、私が九歳の時だった。将来二人が結婚することが決まってから、初めての出会い。初めて言葉を交わした日。


 その時の私は、恋という感情を理解していなかったのだろう。結婚というものを、正しく理解していなかったと思う。それでも私は王子の婚約相手として、彼を支え、尽くしていかねばならないと決意したのを覚えている。


「俺の後ろにいるのは、一緒に育てられた義弟のエリオットだ。コイツは見ての通り引っ込み思案な奴だけど、俺と一緒に居ることが多い。だから君は、エリオットとも仲良くしてやってくれ」

「エ、エリオットと申します……。よろしく、お願いします」


 アンセルム王子の背中に隠れながら挨拶をする少年。消え入りそうな小さな声で、身体をビクビクと震わせて緊張しているのが見て分かった。


 私は彼と視線を合わせて、丁寧に挨拶する。彼を怖がらせないように注意をして、少しお姉さんぶって。


「こちらこそ、よろしくおねがいしますね。共に、アンセルム様を支える者として、力を合わせていきましょう」

「は、はい! が、頑張りますッ!」


 アンセルム様が言った通り、私達は三人で定期的な交流を続けることになった。


 最初は、あんなに弱気な男の子だったエリオットも、時がたつにつれて立派に成長した。背筋が伸びて、寡黙だけど落ち着いた立派な青年になっていた。


 エリオットは、魔法士としての才能を開花させた。天才と呼ばれるようになった彼は、美しく整った顔立ち。


 才能があり、見た目も良いエリオットは多くの令嬢達に注目されて、噂の的になるほどだ。彼と一緒に居ることが多かった私も、彼に惚れた女性たちから嫉妬されたりしたこともあった。アンセルム様という婚約相手が居たというのに。




 それから、アンセルム様も青年になって色々と変化した。


 彼は常に、王族という立場にプレッシャーを感じていた。立派な王になるために、幼い頃は勉強を必死に頑張った。それなのに、努力に見合った成長は出来なかった。


 歴代の王達と比較されたり、色々と批判された。そして次第に彼は、色々と不満を募らせていく。


 私は、アンセルム王子の婚約者として彼の支えとなるために頑張った。お妃教育に打ち込み、将来は彼の感じているプレッシャーを和らげられるように。


 幼馴染であるエリオットと協力して、少しでも王子の力になりたいと思って、毎日努力してきた。

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