次に貴方は、こう言うのでしょう?~婚約破棄を告げられた令嬢は、全て想定済みだった~
キョウキョウ
第1話 婚約破棄
「お前との婚約は破棄だ、ミレイユ!」
王立学園の恒例行事である舞踏会が行われている最中に婚約相手から、そんな事を言われた。
その場に居合わせた子息令嬢達が、一斉にしんと静まり返る。彼らの視線が私達に集中する。じーっと見られていた。
婚約破棄を告げてきたアンセルム王子は、周囲の視線など気にせずに話を続ける。
「当然、理由は分かっているだろう?」
「理由? それはつまり、アンセルム王子が王族の責務よりも、私情を優先なさるということでしょうか?」
こう言うと、彼は激怒するだろう。分かっていて発言した。しかし、反応したのは彼の横に立っている青年だった。彼は、騎士団長のご子息のウォーレン。最近よく、王子に付き従っている人物。
「貴様、なんだその口のきき方はッ! 殿下に対して、無礼だぞ!!」
激昂して、私を叱ってくる。会話に割り込んでくる方が無礼だと思うのだけれど、アンセルム王子は指摘しない。なので彼も、堂々としていた。
騎士団長のご子息ウォーレン以外にも、王子の取り巻き達が私を睨んでくる。
大司教様のご子息であるクライド。若くして伯爵家を継いだアンディ。アンセルム王子の幼馴染で天才魔法士のエリオット。
アンセルム王子の取り巻きである、名だたる面々が集っていた。
そんな人物に睨みつけられる私。エリオットは、いつものように冷静に状況を観察しているようだけど。
そんな彼らに向かって、私は答えた。
「私、何か間違ったことを口にしましたか? 私という婚約者が居るというのに、堂々と別の女性を侍らせるなんて。私利私欲にまみれた、非礼な行いだと思いませんこと?」
アンセルム王子の腕の中には、小さく震える可憐な令嬢の姿があった。彼女の名はディアヌ。私の敵。
「ミレイユ。君は、俺の言葉が聞こえなかったのか? もう既にお前は、俺の婚約者でもなんでもない。何の関係もなくなった、ただの小娘だよ」
アンセルム王子の罵倒を聞いて、周囲で事の成り行きを見守っていた観客たちが、騒然とする。その声に驚くディアヌ。周囲から彼女を守るようにして、王子が彼女の身体を強く抱き寄せた。とても不愉快な光景ね。
「今日ここで、お前との婚約は破棄させてもらう! ディアヌに嫉妬して、イジメを行ったお前に、王子の婚約者である資格はないッ!」
私は、後悔していた。もっと早く対処するべきだった。ここまで、王子が変わってしまうなんて予想していなかった。
いや、予感はあった。アンセルム王子がどんな人なのか、私は理解していたから。それでも、いつかきっと目覚めてくれると期待していたのに。
残念ながら、私の願いは叶わなかった。
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