第41話

とはいえ、20万も払ってくれるから、とりあえず上客は上客である。


「組織が大きくなるとなにかとうるさいでしょ。一族の争いって大変そうだからね」


「いや、うちはそうでもないよ。一子相伝を貫いているからね。他の兄弟は文句をいわない。おやじの遺言もしっかり残ってる」


「なら悩みなんてないじゃない。いい奥さんもらって、子供もいて、愛人も何人か知らないけどいて、おいしい物たべて、好きな時に遊べて。外では製薬会社にちやほやされて…」


そういえば、天井の白熱球が一個切れていたな、変えるの忘れていた。

そのせいで室内に変な色気がたちこめる。


「外ずらばかり褒められたって、うれしくないよ」


吉崎はちょっとだけ肉厚になった下あごを撫でながら、


「本当の俺を知ってるのはミカンだけだろ」


キタ――(゚∀゚)――!!

やだーこんなやつーー。

私はカウンターを出て、隅のサイドテーブルにあったつぼみ型のフロアランプの明かりをマックス、に灯した。

部屋に白さが戻り、さっと色気が消えた。


「あー、おいしいワインだこと、ほれ、どんどん飲んで」


「酔ったら帰れないよ」


声まで変なフェロモン臭がしてきた。


「あ、そ。私は帰るよ」

「久しぶりなんだからつきあえよ」


そして都合よく客がきてくれた。


「いらっしゃい、アレェ、お店は?」


息を切らせて入ってきたのは、バーのぞみの従業員、つばさだった。


「すいません、ミカンさん、ママが至急きてくれって。吉崎先生、いらしてたんですか、お久しぶりです」


吉崎はバーのぞみの常連でもある。挨拶もつかの間、


「あの子、気絶しちゃって、お酒飲んじゃって。病院に行くべきかわからないから、ミカンさん呼んでって」

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