第33話

「あれぇ、どしたの」

「…来ていいって」

「そだった、ごめん…マ、かけてよ」


ゴム手袋をシンクに置いた。


「大物が来てたからすっかり忘れてた。ノンカフェインのハーブあるからさ」

棚からティーカップを取り出そうと、背伸びした時、


「酒、飲んだらどうなるかな。寝れるかな」


と三谷がいった。


「あんたがのめるわけないじゃないの。おとなしく茶でも飲んで。いま用意するから」


ティーポットにローズヒップを入れて、ちょい拡散、カップを上下に並べて一息つく。


「忙しかったの」

「まあね」


爺さん二人に、明海だからな。最強でしょ。

なんか、こう、肩の辺りが、痛々しくこわばる。


「あいつ、殺して。死のうかな」

「ん?」


ピンクに染まったポットを傾けようとして、私は動作を止めた。


「二人とも殺す」


バカな、といいかけて、三谷の目が落ち着き払っていることに、かえって慄いてポットを置く。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る