第29話
「ありがとうございます。後は手酌でいきますので」
普段は酔ってそそうなどしない、馬淵がなぜかしつこかった。
「一条さん、お付きの人が外でウロウロされると、他の客が入れないですよ」
「あ、気づかず、すいません。注意してきます」
一条は一口つけた後、さっと立ち上がった。
そっか、警護役かなんかが外に立ってるのか、道理でさっきから影がちらちらしていたのか。
それにしても馬淵のおっさん、よく気づいたな。
大物政治家の前でも動じない、なぜなぜ?
「来た~」
明海が一条の後ろについて入ってきた。
「あなたのおっしゃる通りでした。すいません」
馬淵に向かって一礼したのもつかの間、明海は
「ガタイのいい兄さんたちがドアに立ってるから、やーさんかなんかが店を占領してるかと思ったよ。このおじさんがコイコイしてくれてさぁ」
「あんた、今日、仕事じゃないの?」
「医者がアレの時は休めって。おっと、馬淵さん、横にずれて」
3人そろってカウンターに並ぼうとした時、一条が
「みかんさん、そこのテーブル、使ってもよろしいか」
「え、そうですか。い、いま、拭きます」
「皆さん、今日は私が持ちますので、そちらに移りませんか」
「へぇー、まじで。まじ?おっさん」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます