第26話

さて、今日は、カブと人参でポトフを作るのだ。味は薄くなるが、スープの素の類はつかわねぇよ。鶏ガラと塩で、爺さんたちの健康を救うのである。


ソーセージはダサいので、手羽先を使ってる。鶏ガラでだしをとった後、トドメに手羽で味を濃くする。塩はアミノ酸たっぷりの岩塩、三谷のところに置いてあったやつ。

さて、お味は?


「あったまるねぇ」


不動産屋の馬淵が開店そうそう、居座っていた。


「家で食べてきたんじゃないの」

「ババアの夕食なんて世知辛いでしょ、旨いね、このスープ」

「ポトフ」


初孫ができたばかりで、夫のことなぞかまってられないらしい。連日のように息子の所へ押しかけているという。


「初孫はかわいいからね」

「みかんちゃん、子供は」


何?そんなことどうでもいいだろ!


「いないよ」

「誰もあなたのこと知らないものねぇ。オ、今日の焼酎、変わってる」

「そろそろロックで飲むのはやめて、水で薄めてちびちびしたら」


私の過去を聞こうとする輩には来てほしくない。脛に傷がある、トラウマになるほどの過去、じゃないけど、言いたくないことは聞いてほしくない。


客は私の顔つきが変わるのがわかっているから、特に常連は話を深めようとはしない。


「それね、宮崎からとりよせたの。たまには麦もいいかって。合わなきゃ、いつもの芋にするよ」


「これも旨いね。今日はこれでいこう」

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