第23話

「米は新規の所でよかったっけ」


契約農家は50程とのことだが、諸事情により契約維持ができなくなったりすることもあるから、だいたい1年で三分の一くらいは変わる。

調度、新しいコメ農家と契約したとブログにのせてあったので、それを注文していた。


「んじゃ、これで全部ね」


彼は荷台車に積んだ食材を車まで運んでくれた。

私は礼をいって電子マネーで清算し、帰ろうとしたが、


「コーヒー飲む?」


と誘われて、再度店の中に入った。


彼は旨いコーヒーを入れてくれるのだが、残念なことにそれは売り物にしていない。仕入れ先が商売になるほど卸してくれず、あくまで自分用に購入して、贅沢に豆をミルしてゴクゴク飲むのだ。


以前は手振りでお湯をかけていたが、最近は上等なメーカーでたっぷり時間をかけて煎れている。


表面が不ぞろいの板テーブルにパイプ椅子を用意され、私たちは席についた。

彼はズズっと啜った。


「ウメぇ」


うん、確かに旨い。


「これでグラム1200円だから、安いもんよ」


いや高い!

酒を飲まない彼は、休み時間に飲むこの一杯の液体が、すべての活力になっているようだった。


「どうよ」

「旨いよ」

「でなくて、店」

「ああ、店。別にどうってことないよ。のんびりやってるし、ま、趣味だから」

「お気楽だね」

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