第18話

「どれどれ」

「ちょいマチ、ツマミだすから、ちょい待ち」


その間、空気にふれて昇華するだろ。


「この前、プライム市場がどうのこうのいってたけど」


チーズを切りながら、手持無沙汰の高橋に声をかけた。

店に来る時だけたばこを吸う習慣のはずが、今日は内ポケットからライターを取り出す様子がない。


「まさにそれ。うちの会社、危ない所だったからね」

「めでたく居残れたわけね、一番グループに」

「そ、うまくいった。とはいえ、だいぶ怪しいこともしたけどね」


株式市場は東証1部、東証2部と、企業の時価総額で区別がある。今回、それがプライム、スタンダード、に名前を変えて、より厳しい査定を経てふるい分けがあるとのこと、そこに入るか入らないかで、ブランド、ひいては今後の株価に影響がでるそうだ。


高橋の会社は半導体関連で相当の技術力でもっているとのこと。彼は文系出身で販売担当なので、海外を含め全国を飛び回っている。


「うちの会社は社長が伝統的に技術畑だからねぇ、いくらいいモノもってても、売らなきゃ成り立たないってのがわからない」

「ふーん」


さて、出来上がった。チーズの盛り合わせと薄切りパン、彼は私の嫌いなブルーチーズが好みなので、そこを多めにあとはカマンベールとミモレット、ダイスのやつ。


「じゃ、いただき」


グラスはリムのおもいっきりうすーいヤツが好みなので、割れないように乾杯はした振り。

ハ、幸せ。

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