第16話
盛り上がりを横切ろうとした時、のぞみはカウンターで相手をしていた、大将に向かって、
「今日のお料理、いかがでした。急遽、友達にお願いしたんですの」
といらぬ挨拶を私に強要した。
「ほう、そうですか。いやいや、旨かった。若い連中も喜んでおります」
「みかんといいます。お粗末様でした」
ン?なに、その名前、と大将は眉をひそめたが、
「みかんさんは小料理屋を営んでおりますのよ」
「そうですか、是非いきたいな」
と相好を崩した。
おいおい、料理人じゃないぜ。
や、め、ろ。
「名刺きらしてて、すいません」
「先生、後ほど、私からご連絡しますわ」
のぞみの手前、やったことがないほど頭を下げて、とりあえずその場を離れた。
「連絡なんかしないでよ。これ以上、店におっさんが増えたら困るし」
「わかってる。こっちも客とられたら困るぅ」
バーのぞみ。
そのまんまの黒い看板を背に、繁華街の細道を後にした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます