第10話

食材は店の従業員がとりにきてくれた。


いずれも30前後のベッピンさんである。さすがに躾がされていて、夜の匂いを店内にまき散らすことはない。ほうれん草だけは知り合いの八百屋を叩き起こして、3束譲ってもらった。


「お世話になります」


私のことを、親分の右腕と思っているのか、やたら仰々しい。

あの、私、スポットで、店モチなんすけど。


のぞみの店では、女の子は8時集合で、まずミーティング。そこで昨今の話題、政治、経済から芸能、スポーツまでスマホの検索サイトにのる一行ニュースを片っ端から、にわか仕込みする。客を持ち上げるため、あらゆる情報を脳みそに入れる。


営業中に気になったことは、店の掃けた後、それぞれがノートに書き込み、のぞみに情報集約、彼女は知り合いの専門家に電話して、あんちょこを仕入れる。


いやはや、そこまでやるかって。


店のコンセプトは隠れ家だから、女の子も、身持ちが重く、才色兼備でなければならない。完全予約制で、こんなご時世なのに、毎日、客が入る。


どうにか、店のオープンには間に合った。

「みかん、ありがとう、さっそくおねがいねぇ」

のぞみはそういうと、総勢3人の店の子を集合させ、今日は時間が足りないのか、早口でいつものミーティングを始めた。

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