第8話

「考えてもらえませんか」

「うーん」


「ただいまぁー」

「いらっしゃい」


のぞみだった。多分、軽く食べにきたのだろう。

彼女の店は8時半オープンだ。タクシーで5分の繁華街でスナックをやってる。


「アラ」


めったに見ない若い客を見て、上ずった声で恵子に会釈した。

恵子は時計を見直すと


「すいません、迎えがくるので、また来ます」

といって、二人に軽い会釈をし、おカネを置いて出ていった。


「なに、今の子」

「うん、なんかわかんないけど、働きたいって」


「働く?まさか」

「だよね」


「ああいうのは大抵、訳アリ変人だよ。かわいい顔してさぁ」


激しく同意。人間観察はおおむね私と一致する。

彼女の前に小鉢をそろえると、どれどれ、といって品定めをするように箸を割った。


「うん、まあまかカ。店でもだそうかな」

「余分に作ってないよ、連絡なかったし」


「そうそう、すっかり忘れてた。子供の授業参加で、仕事、飛んでた。今日、お偉いさんが来るんだよねぇ。困ったな…ミカンさぁ、店しめて、いまからうちでまかないやってくれない?3万でどうよ」

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