第7話

さっきまでのトロンとした目がゆっくり開いた。


「ここで働かせてもらえないかって」

「ん?ここで?」


「なんでもやります。片付けもします、酔客の相手もします」

「どういうこと?U大なら、カテキョ、でもやればいいじゃん。それにうちは人を雇う余裕はないよ、悪いけど」


「あの、おカネはいらないんです。将来の勉強とおもって」


法曹界は極端に閉鎖的だと聞く。社会を知らない連中が、起訴して、判決を決めて、世間ずれをもろともせず、高段からモノ申す世界だと聞いている。ので、世間ずれしないようにいまのうちに社会勉強しようとかいう、突飛だが、高尚な学生さん?


な、わけねぇだろ。イマドキ。


「そんなねぇ。困るなぁ。なにもこんな汚い大人ばっかりのところで」

「ミカンさんの人柄が、私、そう聞いたんです。ちゃんとした人だって聞いたんです」


私がちゃんとしてる?

それは過去の話、さんざん馬鹿したから、こんな店、開いてんだよ。

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