第4話

「誰かのツテ?」


「あ、はい。友達のそのまた友達の、お母さんがたまに来るって聞いてます」

「フーン、誰だろ」


きっかり10秒、壁時計の秒針を確認して、広口のウィスキー用グラスに勢いよく注ぐ。国産ライムをかっこよく振って、ハイ、出来上がり。


「食べる?何か。すきっ腹ならよくないし」

「え、あ、はい。いいんですか」

「たいしたの、ないけどね」


今日はカブの浅漬け、オクラと大葉のポン酢かけ、手羽先と白ネギの煮物、さっき夕食がわりに味見したから、アジはそれなり。


「ひょっとして、大食い?」

「実はすごくお腹すいてます」


「なら、ペペロンチーノ作ってあげる。代金?気にしない、気にしない。酒は一杯

500円、食事も、全部合わせて千円でいいや」


「えー、いいんですか。ありがとうございます」


かの、子供食堂ではないけど。うちは材料にはこだわってるよ。

だって私も食べるから。当然、千円じゃ大赤字。


でも、ま、趣味だから。


うちは金持ちのおっさんが結構くるし、そいつらが勝手に札、おいてくから。


「おいしい、すごくおいしい」


少女は小皿たちをあっという間にたいらげ、あいだにブラッディーメアリを挟んで、すぐにペペロンチーノの平皿にフォークを絡めた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る