第55話 大浴場は格別ですね

 集まって木の切り倒し方の相談をしていると、ジュラルが歩み寄ってきた。


「おいおい、見てらんないね。」

「そんな事言ったって木の切り方なんて知らないし!」とティアは文句をつける。

「女と木の扱いは俺に任せろ。」

 そう言うとジュラルは隣の太い木をポンポンと叩いた。

「この木でやろう。」

「……。」

 ジュラルには女性たちから白けた目を向けられている。

「何だよ。」

「……。」

 変わらず白けた目はジュラルに向け続けられている。

「……分かったよ。俺が悪かったよ。」

「そっ、分かれば良いの。」

 ティアがそう言うと、女性たちは笑いながら、格好がつかなくてスネるような表情をしているジュラルの元へと移動した。

 斧でも魔術でも切り倒したい方向から三角形の切込みを入れる。それは受け口って言うらしい。ジュラルに細かく指導されながらティアが切り倒す側に受け口を作った。

 そして反対側に追い口という切り口を入れる。ティアは手を薙ぎ払って簡単に切り口を入れた。

「上出来だよ、ティア。」

 ジュラルは身体強化をしてから追い口の方に回り「あとは押す。」と木を押し倒した。


 バギバギバギ、ドーン

 

 狙った方向に倒すことができた。ジュラルは満更でもない無い表情を浮かべるが、誰にも相手をしてもらえなかった。

 その後もティアとジュラルのペアで、木を切っていった。そしてその都度ドーンという音とともに木が倒れていく。


 切り倒した木々はヴェイやショーン、そして休んでいた前衛班の人たち枝を切り落としてから積み上げていった。

 そうしているうちに前衛の中でも火魔術が得意という2人が見様見真似で採伐を始めた。

 ジュラルはあっちの衛兵、こっちの衛兵と行き来しながらアドバイスをし始めた。俺はシュリと危なくない少し離れたところから作業の様子を眺めていた。


 最初は1本切るのに何度も切り込みを入れながらやっていたので時間がかかっていたのが、段々と効率良く切り倒せるようになっていった。

 すると3組で切り倒していっているので、あっという間に野営に十分なスペースができあがっていった。


「よし、このまま村の周りを少しスッキリさせるか。」

「まだやるの?」

「魔獣に早く気付けるからな。どうだ?」

 みんな少し考えたが、その通りだと納得した。そして、そのまま村を守りやすくするためという理由で伐採を続けていった。


 俺も伐採された切り株の上に床を作っていった。この村では大理石より硬い水晶を使って作っていこうと思う。

 切り株より高い位置なので、大体膝くらいの高さの足を付けてから床を作っていった。

 ここに100人が寝られるだけのスペースと、食事場所や大浴場を作れるだけのスペースを作ろうと思っている。それだと魔力の消費量もすごいことになると思う。だから細かく移動しながら魔力量を抑えながら作っていった。 

 それでも床を半分くらい作った辺りで、頭がフラッとなり意識が飛びそうになった。

 俺は魔力が不足してきた事を自覚して、魔力を止めて作った床に座り込んだ。

 するとその様子を見ていたマレーナが、どこからか魔力回復薬を持ってきてくれた。

「大丈夫ですか?これ飲んでください。」

「ありがとう。魔力が減ってきてたところだったんだ。」

 俺は魔力回復薬をひと口飲んだ。魔力が体に染み渡る感覚に満たされた。もう一度瓶に蓋をして、腰ベルトに引っ掛けて作業を再開した。


―――


 陽が落ちる前に床を作り終えることができた。

 

 もう一口魔力回復薬を飲んだ。魔力回復薬はあまり残ってないけど、後でお風呂も作りたいので、蓋をして腰ベルトに引っ掛けた。

 そしてできたばかりの床に寝転んだ。目の前には少し赤みかかった空に雲が浮かんでいる。ひんやりとした石の感触が気持ち良い。

 気持ちが落ち着いてくると、今まで意識に届いてこなかった虫の音がジジジ、リリリと聞こえてくる。

「はぁ、疲れた……。」

「見事なもんだな。これだけの広さがあれば明日人数が増えても問題ないな。」

 指揮官のエイラが寝そべっている俺の隣に座った。エイラの方を見ると、目線が素早くあちこちに動いている。こんな時でも警戒は怠らないのか。俺も少しは気を付けようと起き上がった。

「コーヅにはこういった後方支援を頑張ってもらいたい。明日からも頼むな。」

「分かりました。」

 でも俺の本気はここじゃないんだな。ふふふ。

 

 いつの間にか森の警戒も緑分隊と青分隊が交代していて、緑分隊のメンバーが切り株や地べたに座って休憩をしている。そしてティアたちは相変わらず木を伐採している。かなり村の周囲の見通しが良くなっている。


「ここの床も使ってもらって良いですよ。」

 俺は休憩中の衛兵たちに声をかけて歩いた。

 何人かの衛兵が床に来てゴロンと寝っ転がった。

「あー、冷たくて気持ちいいな。」

「本当だなぁ。」

「広々してて良いな。」

 そんな感想に他の衛兵たちも床の上で寝ころび始めた。


 俺はそろそろ夕食を並べる為の台を作ろうと立ち上がった。そして後衛班長のフリーダに配膳用のテーブルだけでなく、食事をするためのテーブルや椅子を作る提案をした。

「コーヅに任せるよ。いい様にやってくれ。私たちは配膳用のテーブルが3台あればいいから。」

 俺は休憩している人たちから離れたところに配膳用のテーブルを3台作った。それから少し離れた所に食事用の丸テーブルと半円の長椅子を作った。半円の長椅子は丸テーブルを囲むように2脚セットにした。

「へぇ。庭園の東屋みたいな感じね。いいと思うわ。」

 この頃になると、陽が傾いてきたので急いであちこちに丸テーブルと2つの半円の長椅子を作っていった。多分1つの長椅子に4人くらい座れるので2つで8人と思うと……全員分を作るのはスペース的にも無理だな。


 俺の作業と並行して夕食の準備が始まっている。ティアたちも森の伐採を終えて配膳を手伝っていた。配膳が落ち着く頃には俺は5組ほどテーブルと椅子を作ることができた。

 気付くとあちこちに光魔石のランプが置かれていて、オレンジ色の暖かな色味で明るく照らしている。

「ここのテーブル席も使ってください。」

 俺も作業を切り上げて、床に腰かけて食事している人たちに声をかけた。

「終わったの?」とシュリに声をかけられた。

「うん。全員分の席は作れなかったけど、交代で使ってもらえば良いかな。」

「すごいね。地面に座って眠るかと思ってたけど、そんなことしなくて良さそうだね。ありがとう、コーヅくん。……そしたらさ、お願いがあるんだけど。この床に上る為の階段が欲しいかな。」

 労いの言葉だけを期待していたけど、まさかの残業指示付きだった。

 

 ふとこの流れに総務部長を思い出した。


―――


「神津君、君の提案はいいね。」

 俺の提出した書類に目を通した部長が笑顔で俺を見上げた。俺はスーツ姿で部長席の前に立っている。

「ありがとうございます!」

 提案が通りそうな反応に安堵の笑みが浮かんだ。そしてそれを隠すように頭を下げた。

「あとさ、この部分は少し物足りないな。僕の感覚で言って申し訳ないんだけどさ。」

「いえ、そんなことありません。」

「この提案は早く進めたいから、……明日までに修正できる?」

「はい、できます。」

「信頼できる部下がいると本当に助かるよ。」

 部長は笑みを浮かべて書類を俺の方に向けて返した。


―――


 その日は遅くまで残業しましたってことを思いだして懐かしさに包まれると自然と笑みが浮かんだ。


 確かに床は膝くらいの高さがあるから上れるけど背が低い女性には大変かも。

 仕方ない、と床から降りて階段を2段で作ってみた。

「どう?」

 シュリは上り下りを何度か繰り返して、親指を立ててくれた。

 俺は2段の階段を床の周囲全体に作りはじめた。そしてシュリは俺が作業しやすいように周囲を警戒するために一緒に居てくれた。

 そして森の近くに来ると光魔石ランプの明かりも届かないので、手元も暗くて良く見えなくなってくる。


ギャー、ギャー


「うわぉ。」

 そんな時に森の中からけたたましい動物なのか魔獣なのかの鳴き声が聞こえてきて、思わず体を強張らせ森の方を振り返った。

 シュリはそんな様子をクスクスと笑いながら見ている。

「私が見てるから大丈夫だよ。」

 シュリはそういうと手に持っていた光魔石のランプを床に置いた。俺はその明かりを頼りに急ぎ気味で作業を進めていった。


 階段を床の周囲に作り終えて戻ってくると、フリーダが待っていて食事を俺とシュリに手渡してくれた。

「どんどん良くなるから助かるけど……、あまり無理しないでよ。」

「ありがとう。でも俺の本気はこれからだから。」

「……そうなの?それなら頑張って?」

 フリーダは俺の意図を汲み取れずに、曖昧な返事をして作業台の方に戻っていった。

 あとでこの言葉の意味を思い知ることになるだろう、とほくそ笑んだ。


 俺はシュリと空き席があるテーブル席に座った。

 それを見ていた周囲の衛兵からの視線が痛いほどに刺さってくる。もうこのパターンにも慣れてきたけど。やっぱり痛い。

 シュリはファンが多いんだよな。何でシュリは彼氏ができないとかって言うんだろう?

「これだけのものをあっという間に作っちゃうってのは驚いたよ。」と相席した衛兵に声をかけられた。

「土魔術だけね。何かすごく適性があって使いやすいんだ。」

「それなら村の壁とか作り直してやればいいんじゃないか?あんな木の壁だとゴブリンすら防げるか怪しいぜ。」と別の衛兵に提案を受けた。

「分かった。村が安全になるなら良いね。やってみるよ。ありがとう。」

 俺たち後衛班は明日から基本的にここから動かないそうだ。きっと退屈するから村の壁を作り替えるのは面白いかもしれない。

 でもその前に今日中に大浴場を作ってしまいたい。そしてそこに浸かりたい。露天で作れたらすごく気持ちいだろうな。

 そう思うと俺はゆっくり食事をしている場合では無いことに気付いて、残りの食事を掻っ込んだ。

「まだやる事が残ってるから。」と俺は席を立った。

 

 食器を片付ける時にフリーダから光魔石ランプを1つ借りた。

「何するか知らないけど、勝手に離れたところに行かないでよ。」とティアがついてきてくれた。ティアが一緒なら心強い。

 

 床の端のように大浴場を作りはじめた。

 まずは大浴場の大きさをざっくりと決めて、男女それぞれに2つずつの大きな長方形の浴槽を作った。最後に触れても痛くないようにと角は取っておいた。

「何作ってるの?」

「大浴場だよ。お風呂。広いお風呂にゆっくり浸かる。こんな幸せなことはないよ。」

「……コーヅって本当にお風呂しか頭にないみたいね。」

「そんなことは無いけど、8割はお風呂かな。」と笑った。ティアの表情は暗くて良く見えないけど、ため息のように吐き出す息遣いが聞こえてきた。

 

 次に壁を作らないといけない。男女を分ける壁と更衣室と浴室を分ける壁だ。覗けないだけの高さってどのくらい必要になるんだろう?

 俺は夜空を見上げた。無数に散らかる星がきれいに瞬いている。

 適当に高さをつけていこうと思う。腰に引っかけてあった魔力回復薬を取り出し、クイッと飲み切った。

 

 よし、作るか。壁さえできてしまえば風呂としては使えるし。

  

 俺は大浴場の壁を鼻歌混じりにノリノリで作り始めた。

 壁に高さを付け、出入口は壁を互い違いにして扉が無くても奥が見えないようにした。

 

「できたぁ!」と小さなガッツポーズを作った。

「良かったわね。」

 ティアからは感情がこもらない答えが返ってきた。


 出入口から入ると周囲からの光魔石ランプの明かりも届かず、星空のささやかな明かりだけで暗い。俺は光魔石を準備するために大浴場を出た。

 目の前に戸惑い気味のエイラが立っていた。

「これは……見張り台か?」

「違います。これは大浴場ですよ。大人数で入れるお風呂です。露天風呂になってます。」

 俺は興奮気味にエイラに説明した。

「そうか、ご苦労だったな。魔力の無駄遣いは程々にな。」

 するとエイラは興味を無くしたように答えて戻っていった。

 

 くっ。

 

 俺は光魔石と言えばのマレーナを探して歩いた。

「光魔石を作ってもらっても良い?お風呂を明るくしたいんだ。」

 ベルトに入っていた魔石をいくつか渡してお願いした。

「はい?」

 マレーナは突然のことで、よく分かっていないようだったけど、光魔石を受け取って、手早く作ってくれた。

 俺は「ありがとう。」と受け取ると早速浴室へ持っていった。

 俺は浴室で魔石を光らせてみた。手のひらが明るいオレンジ色に輝き始めた。

 それらの魔石を男女ともに出入口付近や更衣室、浴室に適当に小さく穴を開けて間接照明になるように置いていった。

 すると雰囲気あるオシャレな大浴場になった。ここまででも俺は抑えきれない程にテンションが上がってきた。

「わぁ、綺麗。」

 ここまで来るとティアにも伝わったようだ。


 そして仕上げに忘れてはいけないのが携帯温水シャワーだ。

 俺はティアに空間収納袋の所まで連れて行ってもらい、携帯温水シャワーを10本取り出した。1人ては持てないので、ティアにも手伝って運んだ。

 まず女性用の浴室に自分の高さより少し低めに設置していった。シャワーエリアには区分けの壁も作った。

 そして男性用の浴室にも携帯温水シャワーと区分けの壁を作った。

 

 俺は何とも言えない満足感で両手を頭上に突き上げて「完成ー!」と叫んだ。

「じゃあ、あとはよろしくー」

 ティアは大浴場からスタスタと出ていった。それと入れ違いに、声を聞きつけた何人かが浴室に入って来た。

「何が完成したんだ?」とジュラルが聞いてきた。

「みんなで入れるお風呂だよ。大浴場って言うんだ。」

「お前がニホンから来て、初めて質問してきたのが風呂の事だったよな。本当に風呂が好きなんだな。ご苦労さん。」

 ジュラルはあまり風呂に興味が無いのか俺の肩をポンと叩くと戻っていった。そして他の人たちもジュラルに合わせて一緒に戻っていった。結局、俺一人が浴室に残された。


 なんで?お風呂だよ?みんな今日も一日頑張ったじゃん。お風呂で疲れを取りたいじゃん。

 ふん!別にいいし、俺だけで楽しむから。


 男性浴場に行き、更衣室としたエリアで鎧や服を脱いで、その辺りにまとめて置いた。そして裸のまま浴槽に向かい、まず浴槽に水を溜めた。それからその水に手を入れて入浴の適温まで温めた。

 

 でもお湯に浸かる前に携帯温水シャワーを強めに頭から浴びた。


 あー、気持ちいい……


 さっぱりしてから浴槽に入って肩まで浸かった。1日の疲れがお湯に溶け出ているような心地良さに「ゔぁぁぁぁ」とおっさんの魂の叫びが出てしまった。


 でもその呻くような俺の声に何人かの衛兵が飛び込んできた。

「大丈夫か!?」

「へ?」

 腑抜けた顔で腑抜けた返事をする俺を呆れたように衛兵たちが見下ろす。

「コーヅ、お前何やってるの?」とジュラルが頭を掻きながら聞いてきた。

「見たまんまのお風呂だよ。」

「あの変な声は?」

「魂の叫び……かな?」

「かな、じゃねぇだろ。」

 俺とジュラルがそんなやり取りをしていると、また半分くらいの衛兵は戻っていった。


「……で、俺も入ってみてもいいのか?」

「勿論。」


 俺は浴槽から上がり、お風呂の作法を教えた。更衣室で鎧は脱ぐこと、浴槽に浸かる前に携帯温水シャワーで軽く汗を流すこと、だ。


 ジュラルは俺に言われた通り、更衣室で裸になり浴室に戻って来た。

「次はあっちね。」と俺は携帯温水シャワーを指差した。


「おほぉぉぉ!」


 ジュラルは初めての携帯温水シャワーの刺激に歓喜の雄叫びを上げた。

 その強めの水圧が心地良さの秘訣だよ!

 ジュラルは軽く汗を流すという以上にシャワーを浴び続けていた。

 やがて満足したのかシャワーを止めた。

「すげーな、これ。こんなに気持ちがいいものと思わなかったよ。」

 そう言うと、今度は浴槽に入って俺と同じように肩まで浸かった。


「ゔぉぉぁぁ」

 ジュラルの魂も叫んでいる。

「でしょ?分かるでしょ?」

 そんなジュラルの様子に浴室に残って様子を見ていた衛兵たちも裸になった。

「おぉぉぉ!」「はぉぁぁぁ」

 シャワーを浴びて叫び、

「ゔあぁぁ」「おおぉぉあ」

 浴槽に浸かると魂が叫んでいた。


「こんな気持ちが良いものがあるなんて思わなかった。」

「コーヅ、サンキュ!」


 やっぱり作って良かった。理解してもらえると思ってたけど、実際に良かったって言って貰えるとやっぱり嬉しいな。


 衛兵たちも、すっかり腑抜けた顔になっている。この後ちゃんと夜の警戒ができるんだろうか?と他人事ながら心配になってきた。


「ジュラル、夜の警戒とか大丈夫?」

「え?」

 何のこと?みたいな返事に不安を覚えた。彼らにとっては禁断の果実だったのかもしれない。

「ははは、大丈夫だよ。命がかかってるんだぜ。きっちり切り替えるよ。」

 ジュラルは俺をからかっていたようだ。

「なぁ?お前ら。」

「へ?」

 呆けた顔の衛兵たちが俺たちの方を向いた。

「お前ら!」

「冗談だよ。でもこの大浴場は普段の訓練後にもいいよな。」

「そうだな。でもって、帰りに一杯やってな。」

「そうだな。あははは。」

 良かった。みんなも気に入ってくれたみたいだ。

 でもお湯に浸かる事に慣れていない衛兵たちは早々に逆上せてきたようで風呂を出ていった。

 タオルが無いけどどうやって拭いたらいいんだう?と思ったが衛兵たちは風魔術で体を乾かしていた。そういうやり方もあるのか。

 そして更衣室からは「ビールが飲みたいな。」という声が聞こえてきた。その気持ち分かるよ!と心から同意した。


 衛兵たちが出ていくと、ぽつんと1人残された。

 外からの喧騒は耳に届くが、オレンジ色に染まった落ち着く空間に1人だけだ。仰向けになって見上げると、星空が見える。

 幸せだなぁ……。

 目を閉じて、しばらく1人の時間を堪能していた。すると、評判を聞きつけたという衛兵たちが入って来た。

 俺は彼らにも風呂の作法を教えた。


「コーーヅーー!女性用のお風呂も準備してーー!!」

 外からのティアの大きな声がここまで届いた。

「分かった!今出るから!」

 俺も大きな声で答えた。


「本当に羨ましいな、コーヅは。俺もティアちゃんからあんな風に呼び出されたいよ。」

 隣にいた衛兵にぼやかれた。ティアも人気あるよな。

「俺はシュリかな。」

「いや、アリアさんの上品さだろ。」

 そんな話題で盛り上がり始めた衛兵たちを置いて更衣室へと戻った。


 俺も体を風魔法で乾かしてみた。火照った体が冷やされて気持ち良い。温泉の更衣室にある扇風機を思い出した。


 着替えて外に出ると、男性用の出入り口に女性たちが腕を組んで待ち構えていた。


「な、何?どうしたの?」

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