第50話 決起集会

 シュリが2、3歩前に出て、クルッと俺たちの方を振り返る。そして「フレンチトーストってどんなものなのかな。すごく楽しみ。」と楽しそうに笑いかける。


「すごく美味しいわよ。私はあんなに美味しいものを食べたのは初めて。」

 ティアが遠い目をしている。多分シュリをからかってるんだと思う。


「ホントに?ますます楽しみになってきた!」


 しばらく歩いているとフィーロのパン食堂が見えてきた。そして店の前に装飾された馬車が2両停まっているのも見える。


「何あれ?」

「サラ様じゃない?」


 馬車が目立つが、その近くに身なりが良くて大柄な男性たちも立っている。

 街の人たちも何事かと振り返りながら通り過ぎたり、立ち止まって見ている人もいる。

 

 俺たちは様子を伺うように店に近付いていくと、2名の男性が俺たちの方に歩み寄ってきた。


「何か御用ですか?」


 近くで見ると、より大きく威圧感を感じた。そんな人から低くて腹に響くような声で話しかけられて、俺は物怖じしてしまった。


「あ、えっと……」


 俺が言い淀んでいると、ティアが一歩前に出た。

「今日はサラ様に招かれ、この店で行われる決起集会に出席するために伺いました。」


「失礼いたしました。お通りください。」


 男性たちは道を開けた。そして俺たちの前後を挟むようにして店まで案内してくれた。

 圧迫感が半端ない。全身から嫌な汗が吹き出てきた。


 店に入ると既にサラ、リーサ、それから配膳係のフリーダと一番若いマレーナがいて、お茶を飲んでいた。

 男性たちから開放されると、そこは別世界だった。ここはなんと心が安らぐ空間なんだろう。

 

 俺たちが4人用のテーブル席に座ると、フィーロはお茶を運んできた。


「コーヅさんのアドバイスでフレンチトーストを美味しくできたんですよ。あとで感想聞かせてくださいね。」

 フィーロは微笑んでペコリとお辞儀をすると、また厨房へと戻っていった。


「お店の人はフレンチトーストが美味しくなったって言ってたけど本当なのかな?」とシュリが小声で聞いてきた。

 

「うん。アドバイスの通りに作れば美味しくなってると思うよ。どんな感じで仕上がってくるか楽しみだね。」


 アドバイスは卵と牛乳を少し増やしたらしっとりするというものだ。多分、食感がしっとりふわふわしてるんじゃないかな。


「前に食べたもので十分美味しかったけど。これ以上美味しくなるって想像もできないわ。」


 しばらくお茶を飲みながら雑談していると、ずだ袋を持ったフィーロが厨房から出てきた。

 そしてサラの前まで行くと、うやうやしく渡した。サラはそのずだ袋を受け取ると、それをリーサに渡した。

 リーサはそのずだ袋を持って店の外へと出ていった。


「何をしていたんですか?」


 俺は隣のテーブルのサラやフィーロに向かって話しかけた。こちらに振り返ったフィーロは緊張した面持ちで、話しができる状態ではなさそうだった。


「フィーロさんに作っていただいたフレンチトーストを空間収納袋に入れて頂いたのです。リーサはそれをわたくしの家族に届けるために使いの者たちに渡しに行ったのですわ。」


 その通りでリーサはすぐに戻ってきたし、その手には、先程のずだ袋は無かった。


 あれが空間収納袋か。初めて見た。確かにあの中にフレンチトーストが入っていたようには見えなかった。話には聞いてたけど、やっぱり不思議だな。でもあの力で俺はアズライトに来たってことなんだよな。いつかその仕組みを解き明かさないといけない。

 

 その後、ショーンと班長のエイラが一緒に入ってきて9人が揃った。

 ショーンとエイラもお茶を飲んで一息ついたところで、サラが立ち上がった。


「皆さま、本日はお集り頂きありがとうございました。」とサラが仕切り始めた。もうリーサの為にフレンチトーストを予約したという要素はどこにも残っていないな。


―――

 

 挨拶の最後に「明日からの魔獣狩りではしっかりと任務を果たし、そして皆で生きて帰りましょう。」そしてフィーロを見て「ではフィーロさん、お食事の準備をよろしいかしら?」と声をかけた。

 

 フィーロは恭しく頭を下げると厨房へ戻っていった。

 そして、コース料理という事でまずはサラダとスープが運ばれてきた。

 そして俺がサラダとスープを食べ終えるのを見計らったようにエイラが俺の席に来た。


「コーヅは魔獣狩りが怖いと思ったりしてないか?」


「怖いという気持ちと面白そうという気持ちと両方あります。死ぬかもしれないという経験をしたことが無いので怖いです。でも日本では想像上の生き物とされていた魔獣を見られるのは、すごく興味深いです。」


「そうか。恐怖心を持たずに、魔獣狩りに参加するのはとても危険なんだ。コーヅは適度に持っているようで安心したよ。気を付けて楽しんでくれ。」と肩をポンと叩かれエイラは席に戻っていった。


 すると、シュリが立ち上がってエイラの所に行き、ショーンと3人で何か話をし始めた。

 

 今度は配膳係のフリーダと一番若いマレーナが一緒に来たので席に座る様に促した。


「あの、私、あんまりコーヅさんとお話をした事が無くて。何か用事があって来た訳では無いんですけど……。」

 マレーナがおどおどしたように話しかけてきた。


「マレーナは光魔術が得意なんだけど、あまり光魔術って衛兵では役に立たないのよ。何かニホンの知識で役に立つアイディアってないものかしら?」とフリーダが話題を作ってくれた。


「日本だと夜の道を照らして歩きやすくしたり、犯罪の抑止効果を狙ったりとかあるかな。」という案にはフリーダもマレーナも特に反応は無い。まぁ普通のアイディアだよね。「あ、あと光で遠くの人と意思疎通を図るとかできるかも。」


「それはどういうことかしら?」

「事前に光の点滅のパターンで文字や意味を決めておくんです。」

「ちょっと良く分からないわね。マレーナは分かる?」

 フリーダがマレーナに聞いた。

「ごめんなさい。私もよく分からなかったです。」と首を振った。

「私もさっぱり分からなかったわ。」とティアがダメ押しした。


「例えば光を点滅させる回数とかリズムで意味を決めとくんです。パッパッと光が点滅したら魔獣が出た、とか。」と具体的に説明してみたが、みんなの顔にはまだ疑問符が浮かんでいる。

 誰にも伝わらないという説明下手な自分に嫌悪感を抱いてしまった。


 ちょうどそのタイミングで、フィーロがメインのパンを持ってきた。大皿に卵パンをはじめ、肉や野菜が挟まったパンが並んでいる。これをテーブル毎に置いてくれていた。


 俺たちも難しい話は一度中断し、パンを食べることにした。


「美味しい!」


 あちらこちらでそんな声が聞こえてくる。俺も1つ手に取った。卵パンではなく肉が挟んであるパンだ。肉汁と少し強めの塩味がパンと合う。


 みんなの手が次に次にと伸びて、あっと言う間にパンは無くなってしまった。


「美味しかったー。何かもう満足しちゃった。」とシュリがお腹をさすっている。


「本当にとても素晴らしいパン料理でした。しかし、これからが本番ですわよ。」とサラの目が光る。


「……えっと、もうフレンチトーストはお作りしてもよろしいのでしょうか?」と、フィーロはサラに聞いた。


「はい。是非お願い致しますわ。」

「かしこまりました。」

 

 フィーロは一礼して厨房に戻っていった。


「どんなものなんですか?」とマレーナに聞かれた。


「パンを使ったデザートで、蜂蜜をたっぷりかけて食べるんだよ。ふわふわな食感ですごく美味しいよ」


「本当ですか?すっごく楽しみになりました!」と、マレーナは厨房の方を見た。


 しばらく雑談しているとフィーロが3皿持って出てきた。みんなの視線は皿に注がれる。

 まずサラとリーサが居る2人用のテーブルに、黄金色の焼色がついたフレンチトーストを2皿置いた。それからナイフとフォーク、それから蜂蜜を準備した。

 そして顔を上げ「あと1皿はどなたが食べられますか?」と聞いた。


「あちらに居るエイラにお出し頂けますか?」とサラが決めた。 

 フィーロはエイラの前にも同様にフレンチトーストの一式を置いた。


 そしてフィーロがサラに食べ方を教えた。サラは教わった通りに、蜂蜜をたっぷりとかけて、それをナイフとフォークで器用に小さく切り分けた。そしてそれをフォークでひと刺しすると、小さな口へと運んだ。


 その瞬間、サラはガタッと立ち上がり、フィーロの手をしっかりと握った。


「この様な素晴らしいデザートは初めて食べました!この国で1番のデザートですわ!」


「サラ様。」とリーサがいつもの様に冷静な声で諌めた。


 サラはフィーロの手を離した。フィーロは目が点になったまま硬直している。

 サラはリーサに椅子を押してもらい座り直し、改めて食べ始めた。リーサもサラが落ち着いて食べ始めた事を確認してから自分も食べ始めた。

 リーサもナイフとフォークで切り分けひと口食べた。


「んーー!」と幸せそうな顔をして足をバタバタさせ始めた。「美味しいー!」


「ですわよね?」とサラに言われたリーサはハッと気付き「大変失礼致しました。」と取り繕うが、そのギャップが面白くみんなに笑われていた。フィーロも笑っていた。


 フィーロは「次のフレンチトーストを準備してきますね。」と厨房に戻って行った。


「いや、本当にこのフレンチトーストってのは美味しいね。驚いたよ。」とエイラも美味しそうに食べている。


 また次のフレンチトーストが出てきてショーン、フリーダ、マレーナが食べた。


「あ、これは美味しいな。」「美味しい!」ショーンとフリーダだ。そしてマレーナは言葉ではなく、顔で美味しさを表現している。


「うー、私も早く食べたいよぉ。」とシュリはそんな3人の様子を羨ましそうに見ている。


 皆が食べ終わったころ俺たちに最後の3つが届いた。俺、ティア、シュリの分だ。みんなが食べているのを見ていたので、シュリへも説明してもらう必要はない。

 まずはシュリがたっぷりと蜂蜜をかけた。


「はぁ、美味しそう……。」


 そしてナイフとフォークに持ち替えると、少し大きめに切り分け大きく口を開けてパクっと食べた。

 咀嚼し終わらないうちに次のフレンチトーストを口の中に入れて大きくほっぺたを膨らませ、口いっぱいでフレンチトーストを楽しんでいる。


 俺やティアは一度食べているが、やっぱり美味しいものは何度食べても美味しい。

 やはり前より軟らかくてふわふわしている。俺もティアもあっという間に食べ終えてしまった。

 シュリを見ると食べかすの小さなかけらをフォークで突いて食べている。


「予備で用意しておいたフレンチトーストがあと3皿分あるのですが、どういたしましょう?」とフィーロが聞いた。人数に変動があっても良いように予備で準備しておくと言っていたやつだ。


 まだ食べられると聞いた女性たちの顔色が変わった。作ってもらうのは当然として、それよりも誰が食べるのか。お互いが反応を伺い牽制しあっている。


 俺は今日で2度目だから、手を挙げて「俺はもう十分です。」と言った。続いてティアも「私も前にも食べてるから。」と降りた。ショーンも「僕も大丈夫かな。」と降りた。残りが6人になった。


 そこから先は誰も降りる気配が無い。

 

 一帯に緊張感が漂う。これまでの和やかな空気はどこかに行ってしまったようだ。

 次は誰が降りるのか?お互いが視線で牽制しあっている。


 それぞれの表情を見ていると、マレーナがこの空気に耐えきれなさそうだ。


「あの……、半分に切りましょうか?そうしたら皆さん食べられますよ。」とフィーロが遠慮がちに聞いた。


 みんなの表情から緊張が解けた様子が伝わってきた。特にマレーナは陥落寸前だったので、救われたような表情をしている。


「そうですわね。そのようにしていただければ皆が食べられますわね。よろしくお願い致しますわ。」とサラが同意した。


「はい、少々お待ちください。」とフィーロは厨房に戻っていった。その後ろ姿を見ながらシュリが口を開いた。

 

「はぁ……、もう一度食べられるなんて、幸せ過ぎて言葉が無いよ。」

「心残りがあるくらいの方がもう一度来る楽しみがあるって思うようにしてたけど、おかわりできるなんて最高ね。」

 

 少ししてフィーロが厨房から戻ってきた。半分の大きさのフレンチトーストが6皿になった。それをサラから順番に目の前に置いていった。


「どうぞ、お召し上がりください。」

 そう言うとフィーロはもう一度厨房に戻っていき、何かを持って出てきた。持ってきたお皿の上にはラスクの小さな山ができていた。そして、それを俺の目の前に置いた。


「コーヅさんに教えてもらった、もう1つのパンを使ったお菓子です。皆さんの感想を教えて貰えると嬉しいです。」


 え?という感じで、みんながフレンチトーストとラスクを見比べている。どっちも食べたいが、どっちから食べるべきか悩んでいるのかもしれない。

 でも俺にはラスクしかないので悩む必要はない。早速、ラスクを1つ摘んで口に放り込んだ。

 ザクッ、ザクッという食感と共に口の中にバターと蜂蜜の味が広がった。

 

「食感がとても良いし、美味しいです。」

 

 するとティアも1つ摘まんでかじった。ザクっという音が聞こえ、パラパラとラスクの粉が舞い落ちた。


「一口じゃないと落ちちゃうんだね。」と残りを口の中に全部入れた。そして食べ終わると「本当に食感が面白い。こんなの初めて。」と、もう1つ摘まんで口の中に入れた。


 ティアが勢い良く美味しそうに食べているので「わ、わたくし達の分も残しておいてくださいませ。」とサラが冷静を装いながらも、若干隠し切れていない焦った様子で俺たちに声をかけてきた。


「シュリも2つ取って。」とティアが声をかけた。シュリがラスクを2つ取って、自分のフレンチトーストが乗った皿に置いた。

 ティアがラスクの皿をサラのテーブルへ移動させた。


「サラ様、ごめんなさい。このラスクもとても美味しいですよ。」


「い、いえ、そういうつもりでは無かったのですが……。」とサラは言い訳になっていない、言い訳で誤魔化そうとしている。


 そしてサラも1つ摘まんだ。そしてジッとラスクを見ている。そしてリーサを見た。どうも1口で食べてしまうのは行儀が悪いと思っているのかもしれない。

 リーサがスッと席を立ち、外の様子を見るように窓際に歩いた。それを見てサラはラスクを口の中に入れた。ザクッザクッという咀嚼音が俺のところまで届く。リーサにもそれが届いたのだろう、戻って来て席に座りなおした。サラは幸せそうな表情で食べている。

 

「フィーロさん、こちらのラスクも大変素晴らしいお菓子です。商品になりましたら必ず使いの者に買いに来させますわ。」

 

 そしてサラ以外の人たちもラスクを摘まんで口に放り込む。あちこちからザクッ、ザクッという音が聞こえてくる。

 

「同じパンのお菓子でもフレンチトーストと全く違うのね。それにクッキーよりも硬いけど、それがすごく美味しい。」

「本当ね。私はクッキーよりこっちの方が好きだな。」

「僕もこれは好きな味と食感だな。」

「改善点は無いですか?」

 フィーロはみんなを見回すようにして聞いた。

「私は特に思いつかないかな。」「私もです。」

 みんな特に無いようだったし、俺も不満はなかったので首を振った。

 

「そうですか。良かった。」

 フィーロは胸に手を当てて、ホッと息を吐いた。


 これでラスクも完成ってことなのかな。


「そしたらそろそろ次のレシピを教えても……。」と言いかけたところで、「コーヅ、あんたは何でそうなのよ!」と、ティアにつま先で脛を蹴られた。痛いよ。


「ふふふ。ありがとうございます。でも私にはこの2つのお菓子で十分ですよ。他の人のためにそのレシピは使ってください。」


―――


 みんなが食べ終わるのを見届けてからサラが立ち上がった。


「今日は皆さまととても良い時間を共有することができました。そしてフィーロさんのお陰で魔獣狩りから無事に戻って来た後の楽しみが出来ましたわね。」とフィーロを見てほほ笑んだ。フィーロは恐れ多いことと俯いた。


 そして決起集会は終わり、解散となった。

 まずはサラとリーサが帰っていく。そして、見送りのために出口で待っていたフィーロにサラはお金を渡そうとした。

 

「サラ様そんなにいただけません。」フィーロは手を後ろにしてお金を受け取ろうとしない。


「良いのですよ。わたくしがそれだけの価値を認めたのです。受け取ってください。」

 サラはフィーロの手を取り、お金を握らせた。フィーロはお金を受け取ると、深々とお辞儀をした。


 次々に人が帰っていき、俺、ティア、シュリが最後残った。


「はぁぁぁ、疲れた……。」

 フィーロが息を吐き切る程に深いため息をついた。


「フィーロさん、お疲れ様。どれも全部美味しかったよ。」

「本当です。こんなおいしい食べ物があるなんて生きてる幸せを感じました。」

 シュリも俺の意見に重ねるように同意した。


「でもコーヅさんのおかげですごい経験できちゃったみたい。ふふふ」と、フィーロにいつもの優しい笑顔が戻った。


「明日の朝食用にパンが欲しいんだけど、売ってもらえる?」

 これは自分とヴェイの分だ。


「ウチは持ち帰り用のパンの販売はしてないんですよ。でも今日は特別ですよ。」

 フィーロは厨房に戻ると、パンとクッキーを袋に入れて持って来た。

 パンとクッキーの代金は受け取ってもらえなった。サラが十分過ぎるほど支払ってくれたからだそうだ。

 

 俺たちも店の外に出た。辺りはすっかり暗くなっている。そして物々しい警護も引き上げていて、元通りの閑静な住宅街に戻っている。


 フィーロも店の外まで見送りに来てくれた。フィーロはまだこれから明日の仕込みだそうだ。飲食業はこっちの世界でも大変なんだな。

 

 俺とシュリでティアを家まで送ってから砦に帰ることになった。

 

「ティアの家ってどっちなの?」

「こっちよ。」


 ティアが先頭を歩き始めた。この世界の夜道を歩くのは初めてだ。照明が少ない暗い道を歩いていると、あちこちから夕食の匂いが漂ってくる。そして途中途中に料理屋があり、人が楽しそうに食事している声が外に漏れだしている。

 昼間とは違う街の顔が見えて、歩いていても楽しい。


「ティア、この辺りは女性が夜一人で歩いていても危険は無いの?」


「ん?私はそういうの感じた事無いわよ。シュリは?」

「私も無いな。夜間は衛兵が街の中を見回っているのよ。」


 へぇ、結構安全な街なんだね。さらに少し歩いたところでティアが立ち止まった。


「私の家はこの奥だから。ここまでで大丈夫。おやすみ。明日は2人とも遅刻しないようにね。」


 そういうとティアはさっさと小道に入っていった。この奥にあるどこかの集合住宅なのだろうか。

 ティアが角を曲がり見えなくなると、「じゃ、俺たちも帰ろうか。」とシュリに声をかけた。


「うん。そうだね。」

 

 今度はシュリに案内してもらうようにして歩いた。


「今日はありがとうね。あんなに美味しいものが食べられるなんて思わなかったよ。」

「俺も故郷の味に近い物が食べられて嬉しかったよ。」

「なんて贅沢な故郷の味なのかしら。」と言って笑う。「それにしてもコーヅくんの警護をするようになると1日が長く感じるって言われたけど本当ね。コーヅくんがお風呂の壁を壊した話なんて先月くらいの感覚よ。」


 俺もシュリとは数日の付き合いとは思えない。本当にシュリは上手に懐に入ってくる。


 砦の入り口が見えてきた。シュリと話をしていると時間があっという間に過ぎていく。

 俺たちは門番に挨拶をして砦に入り、部屋に戻った。シュリはそのまま部屋の前で警護だ。


 俺は風呂に入り、そのまま布団に潜り込んだ。

 明日はいよいよ魔獣狩りだ。絶対に寝坊しないようにしないといけないな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る