12話 指標がない探索は難しい



 魔術が馴染むまで気の赴くままに動いていたレティシアは再び行動を再開した。



「魔術の発動は·········成功ですね。しっかりと回りの地形が認識できてます。」



 魔術の発動に成功し、軽い安堵の息を吐く。


 続いて性能の確認だ。



「範囲は······半径5kmの球状と、問題なさそうですね。」



 レティシアは魔術陣の組み込みに球状であること、広範囲を調べられること、細かい地形把握の3つを主体に書き込んだ。

 そうすることで今でも使えるし、将来的にも使える、便利なものとなっていた。


 ただ問題は人を探知できないことだ。これは致命的なことだがレティシアはそうは思っていない。



(探知は自分でやれば良いのですから)



 レティシアの探知をすり抜ける者など数少ない。いたとしてもそれはレティシアが勝てない相手だ。身近な例は【黒布】だ。あれが本気で襲ってきたのならなす術もなくレティシアは死んでしまうだろう。

 そんな事態に陥ったらその時は仕方ない、そう思い死ぬしかないと考えている。

 これはある意味での合理的考えなのかもしれない。

 もちろん、レティシアは機会があれば探知系統の魔術も開発する予定だ。



「さて、探知範囲には······特に何もありませんね。そんな簡単には見つからないとは思っていましたが···とにかく歩きましょうか。ここにいても無駄なので。」



 移動を開始して数十分が経過した。


 出発して以来目新しいものもなく魔法庫の入口も見つからない。強いて言えば霧が少しだけ多くなった程度だった。



(おかしいですね。まさかここまで見つからないとは······)



 首を傾げながら自問していく。



(ここまで見つからないと言うことはもともとここに魔法庫は無いのか、ただ単に私の力不足なのか······出来れば後者は認めたくはないですが、可能性が高いのはそちらですからね。)



 またしばらくレティシアは歩いた。代わり映えのしない木々を眺め、普通の土と同じ色した土が敷き詰められるのを見詰めた。

 空を見ると一片の曇り無き灰色の空が広がっていた。


 その時点であり得ないのだがレティシアは気にしない。先程の調査でそうなってる原因は分かっているのだ。

 ただ、その原因の居所が一切分からないだけで······。


 それから少しして、相も変わらず歩き続けていたが変化があった。



「これは········行き止まり、ですね。」



 地形把握の魔術にはそれ以上の行き先は無いと示している。だが困ったことに望みの入口には辿り着いていない。



「視たところ行き止まりは扇状になっていますね······ならばこの空間は円形になっているのかもしれません。」



 大した情報ではなかったが指標には出来る。当然、これを逃すレティシアではない。



「壁際に沿って歩いてみましょう。このまま何の計画も無く歩いていても無意味になりかねない。」



 そして壁際を魔術でギリギリ認識出来る場所を陣取り、探索を再開した。






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