2話 幼馴染み


レティシアは出掛ける支度を済ませ、居間で寛いでいると家に付いている呼び鈴が鳴った。


(ああ、······来てしまいました。)


ここまで準備しても行きたがらないレティシア。筋金入りである。

小さくため息を吐きながら椅子から立ち上がり、カバンを持つ。



「では、行ってきますね。」

「行ってらっしゃい、レティシア」


ベレニスに行くことを告げ、扉を開ける。

この時、(扉が開かなかったらな。)なんて考えているレティシアであった。


「おっはよー! レティシア!」

「ええ、おはよう。カルナ」

「ん?···随分と眠そうだね?」


レティシアを迎えに来た藍髪青目の彼女――カルナ・クヴィスリング――は不思議そうな顔しながら問い掛けた。


「ええ、まぁそうで「ああ!!分かった!今日の試験が不安で眠れなかったんでしょ。」·······そうですね。」

「へえ~、レティシアでもそうなるんだねぇ?」


返事をする前に騒ぎだし、からかうようにカルナは笑う。

色々と訂正するのも面倒だったのでそのままにした。


(勿論、からかった仕返しはしますが。)


ひっそりとレティシアは笑う。


「それはそれとして早く行きましょう?カルナの勉強時間が減りますよ。」


流石にカルナがいる中、遅刻はいけない。

レティシアたちは現在通っている『国立ジクニア王国学院』に向けて歩き出す。

修道服にも似た黒を基調としたロングスカートのワンピースで袖が肘から徐々に大きくなっている。それに体形が出やすい服装の所為か、レティシアの平均以上の胸が主張しているかのようにうっすらと確認できた。



「むー!大丈夫だよ、今回もなんとかなるって!」

「先日の小テスト、百点中何点でしたっけ?」

「······················」


「何点でしたっけ?」


「········十四点」


「そうですか。で、何が大丈夫なんでしたっけ?」


「······ごめんなさい」


自信満々だったカルナは事実を確認されるに連れて上がっていた口角が引き摺っていく。

最後には気まずそうに顔を伏せた。



(こんな所は全く変わりませんね)


幼馴染みの昔と今を比べて、思った。

天真爛漫でおっちょこちょい、なのに他人をよく見ていて些細なこと気づきやすい。

ほんとうに、変わらない。

感傷と言えるのだろうかわからないがレティシアはそう感じた。



「では、急ぎましょうか。」


「あっ、うん!」



考えていたことを悟らせず、学院への道を追憶を振り切るかのように速度を上げて歩いた。







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