第34話

「俺たちが『刀』を?それは無理でしょ。すんごい高いしさ」

「金なんかいらんよ。俺が制作した『やつ』を試して欲しいだけだからさ」


大剣使いの少年が話をしているのは、もし使うのならば自分だろうから、という発想からだ。

『刀』は武器である。術師たる相棒の実力は信頼しているが、あくまでも武器使いとして、近接戦闘ならば自分の方が上である。

適材適所、として相手を下に見るのではなくあるがままを受け入れているのだ。


ちなみに普通に一対一で戦ったらよほど特殊な条件がない限り術師の方が勝つ。攻撃・防御・支援・回復と手札が多い上に圧倒的な間合い、攻撃力を持つ術師に対して武器使いはひたすら逃げ回るか術を使われる前に倒す、という机上の空論無理を実行せねばならない。


武器使いが怪物を抑え、術師が戦局を有利に運び、とどめは手が空いている方が。


というのが最も効率的なのだ。武器使いは術師の大きな攻撃力を、術師は武器使いという護衛を得られる。

怪物を倒すのはどちらでもかまわない。術師が薙払うこともあればしとめ損ないを武器使いが各個撃破することもある。



術師の少年も自分は直接は関係しない、と判断し会話には参加せず一歩引いて相手を見極めようとしていた。



「あのな、特殊な『刀』なんだけど、端的に言えば術師がいないとまともに使えないんだわ」

「「はい?」」


そんな『刀』は聞いたことがない。

というより、武器使いのための武器ではないのか?



「コンセプトはね『術師がいなくても術が使えるように』ってこと。そのために術師の協力が欲しいんだよ」

「はぁ...」

術師なしで術を使うために術師が協力する?


「まぁ論より証拠。術師の少年、さっきの『唐紅』?っていうの俺に撃ってくれる」

「え、や、流石に危険ですよ」

「いいから、ほれほれ」


そう言って距離を空ける男。手には片刃で反りのある剣、和刀があった。


「....ええい!『唐紅』!」

威力は大分落とした。性質も燃えるより炸裂する方に重点を置いた。仮に直撃しても吹き飛ばすだけで済むだろう。それで頭とか打っても知らん。


起動のみこめ、『九字兼定クジカネサダ』」

唐紅の炎が爆発すると思われた。

しかし実際には斜め上のことが起きた。


音もなく、消えた。




「「え............?」」

「改めて、機構鍛冶の釧路クシロだ。これなら話聞いてくれるかな?」


新人狩人2人の呆然とした顔を見て満足そうに笑うのだった。

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