狩人は笑う
第29話
私は
遺跡にいる怪物を斬るのが仕事である。
「かぁっ!」
手にするは愛剣となって久しくなる長剣・雲斬り。
ちょうど蛇と鼠を足したような怪物を切り捨てたところだ。
「ビィィ!!」
長い体を半分にしてやっても即死はしないらしい。
これからは頭を斬り落とすことにしよう。
「これで十三。これなら
私が受けた依頼では『
まだ半分にも満たないが、遺跡に入ってから僅か数刻しか経っていない。
残りもそれほど時間を掛けずに仕留めることができるだろう。
私は元々ただ剣を振っていれば満足だった。
それがいつしか立ち会いを望むようになり、じきに強いものとの戦いを求めた。
それもすぐに頭打ちとなった。人よりも強いとされる怪物ならば、と喜び勇んで遺跡街に来た。
その結果が剣を振ることしか出来なかった私が、巡り巡って誰かのために仕事が出来ている。
私が遺跡の怪物を斬り続けていれば誰かに喜んでもらえる。役に立てる。
それだけのことがこんなにも嬉しく感じるとは思いもしなかった。
剣の道に生きて早幾十年。自分の悦楽でなく他人のために剣を振るえるとは知らなかった。
そこかしこから蛇鼠の威嚇が聴こえる。
どうやら巣穴にたどり着いたらしい。
「いよるならば来い。全て撫で斬りにしてくれよう。『
音すらも斬り裂いてやろう。そんな思いを込めるといつしかより早く剣が振るえるようになった。遺跡街に来て、怪物共を斬っている内に編み出した力。
「ビジャァァ!!」
「五月蝿い」
「ビィ!」
「五月蝿い」
「「「ビジィィィ」」」
「五月蝿い」
声のする場所へ剣を振るう。暫くすれば声は聴こえなくなった。
「さて、牙を取って帰るであるか」
血煙の心地良い臭いと肌についた赤い血を思い、一匹ずつ牙を取る面倒さなどどうでもよかった。
いずれはもっと強くなり人の役に立とう。より強い怪物を斬ろう。
そのためには腕を上げたい。より良い剣も欲しい。
「そのためにはどうしたら良いかは知らぬが、足掻くのもまた一興よ」
彼は知らない。腕は良くともその人間性を危険視されていることを。故に技師や情報提供者が彼につかないことを。
それらがこの遺跡街でどれだけの足枷であるかも。
それでも尚、彼は狩人として必要なのだ。
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