第27話
魔族の男が『闇天エリア』を歩いていた。
その男の名は今となってはわからない。
が、その男は錬金術師であった。
無機物専門の錬金術師であり、他の錬金術師と同じく金欠であった。
金が無ければ日々の糧や研究に必要な触媒や素材を買ったり、採集依頼を出すことも出来ない。
ならば、と男は自ら遺跡の中を歩き素材や触媒、金属などを集め歩いていた。
自分で使えるならば良し。使えなくても売って金になれば良し。
男が『闇天』に来たのは、自身が扱える数少ない魔術が闇系だったことが理由ではないかと思われるが、それだけではないのかもしれない。
何故なら、運命・共鳴・必然.......色々な言葉を使える。が、あえてこの表現をしよう。
それは出会いであった、と。
えてして希少な素材は人が入りにくい場所にこそ存在する。
人がよく訪れる場所ならば、誰かに拾われるのだから。
故に男も険しい山道を登り山頂付近を探してみようと思ったのであろう。
そこには『闇夜の星屑』が存在した。
男は歓喜した。
どれだけの金があっても手に入らない希少な素材。それも高価なのではなく、発見自体が少ない超希少にして貴重な品。
これを売ればしばらくの金には困らない。いや、せっかくだ全て自分の研究に費やしてしまおうか。
そう思いながらソレに触れたその瞬間。
「..............!!!」
魅了。洗脳。混乱。自我の喪失。寄生。
それらのどれかが、あるいは全てが男を支配した。
闇夜の星屑には意思があった。それは
その意思が男に語りかけた....否、伝え続けた。
曰く、魔力をよこせ。ないなからば魂を魔力にしてよこせ。
曰く、まだ消えたくない。
男にとっての自我がどこまてま保ったのかはわからないが、このままでは自分が消えると感じたらしい。
途中で強い火と雷が混ざった魔力を感じて回収したが、足らない。
それならば手元にある素材を使って霊装を作ろう。最高級の素材であれば多少変質したとしても十分な力をもてる。
男の手元にあるのは闇夜の星屑と、強い火と雷の魔力がこもった結晶体。
闇系魔法を主軸に他者の魔力を強制的に徴収...略奪出来る霊装。有り余る火と雷の魔力は武装化することにキャパシティを割き、自らの錬金術と組み合わせることで制御しやすくした。
はじめは遺跡内で出会った原生生物や鉱石なんかの魔力を吸っていたが、次第に足らなくなっていった。
当然ながら、そんな凄まじい能力を使うには相応の魔力が必要なのだ。
自らをつなぎ止め、霊装を使い、更に体力を補填するためにも魔力を使う。
徐々に、魂が磨り減る。
判断はできるが、思考はできない。
身体は動くが、自己は消滅していく。
そこに莫大な魔力をもった、自分と同じくらいの大きさのものがやってきた。
しかし、同じ大きさならば。
奪えば、生きられる。
そう思った。
しかし、
後には闇夜の星屑と、始原の炎が合わさった
「と、いうわけなんだ。ちなみに闇火のルビーは火龍に始原の炎の補填ってことで渡したよ」
「な、なるほど」
錬金術師だったという男の軌跡や思いはなんとなく、わかった。
が、気になることもひとつ。
「魔族の男は、まだ生きてるのでしょうか?」
「それについて君たちに問いたい」
闇龍が改まって
「あの人の処遇。生かすか死なすか、どうしたい?」
そんな大事を笑顔で言わないでほしい。
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