第26話

「報告!『白刻』の探索者殿が此度の異常発生の元凶を排除したとのこと。負傷者二名。『白刻』と狩人、とのことです」


「そうですか。彼はやってくれましたか。ありがとう、下がってよろしい」

「はっ」


探求者の協会シーカー・レギオンの執務室のひとつで仕事をしていた外交部門の部門長は報告を聞いて笑みを浮かべた。

自分が任せた仕事で多少のケガはしても無事に解決してくれたこと。

または、いささかの越権行為であったことを犠牲なく解決させたことによって功績を得られたこともあるやもしれない。


「今度は何を頼みましょうかね」

部門長のおだやかな時間は過ぎていく。




探求者シーカーどの!ご無事ですか!?」

「私は大丈夫です!戦闘参加した狩人一名が負傷!治療中です!!誰か傷薬をもってきて!」

「承知!!」

大魔法を使い、身体をボロボロにしながらも治癒魔法を使い続けた白刻の探求者によって爆発に巻き込まれた狩人も一命は取り留めた。油断は出来なくとも危険な状態からは脱した。


それにより戦闘があった場所はバタバタと撤収や連絡のために騒がしくなっていた。




翌日。

「ーーーー以上が昨日の顛末です。これにより遺跡内で起きていた、魔力溜まりの発生を原因とする異常は落ち着くものと推測されます。以降は通常の業務に戻りつつ、各所の様子を見ていくことで状況把握できるかと思います」


『白刻』の探求者は部門長の執務室で報告をしていた。


「以上で報告を終わります。ところでそちらにいる方はもしやと思うのですが」

「そのもしや!魔族の男と共に戦った戦!友!やで!」

「風の精霊たちよ。『風封陣クローズ・ブロー』」

「ちょお!やぁぁあ!!!」


・・・


「で、こいつはどこのどちら様で?」

一応の落ち着きを『白刻』の探求者。苦労してやり遂げた仕事を横からかっさらわれた形になったため、その恨みは深いのだ。


「彼はね、その・・・なんと言えばいいのか」

言いよどむ部門長。どんなことも飄々とくぐり抜けてきたこの上司、これほどまでに言い難そうにするとは・・・まさか王族やその使いなのであろうか。と考えていたところ、その答えは唐突に得ることになる。


「わかるわ~。こんな俺が闇龍だなんて、説明できひんよなぁ」


「は!?」

部門長は顔を手で覆ってしまった。これは彼なりの『やっちまった、どうしよう』なポーズなのだが、それは置いておいて。


「あー、部門長。ジョークの類では?」

「ない。残念ながら・・・」

「コレが、闇龍・・・」

「ナハハハ!そういうことですわ!あ、一応証拠として・・・ホレ」


そう言って見せたのは自身の黒い鱗に覆われた腕。そしてそこから鱗を一枚剥がして渡してきた。


鱗ならば魚や蛇、トカゲなども持っている。しかし、それは明らかに違った。

その鱗一枚に染み渡っている闇精霊の莫大な魔力。


それだけで理解し納得した。

目の前なコレは龍を名乗るに相応しい、恐ろしい怪物であると。


「まぁそんな怯えんと!何も取って喰うために来たわけじゃありませんよって!・・・これで信じて貰えないなら、危なかったですがのぅ?」


十分に手練れである探求者魔法使いが2人。それでも尚、目の前のコレは手に負えないとわかる。


「そんでー、今日来た目的を果たさせてもらって宜しいでっしゃろか?」

「あ、あぁ。かまわない」


その言葉に笑みを浮かべる闇龍。

「今日来たんわね、昨日の魔族の過去と現在を話しに来たんや」


そうして、魔族の男が起こした行動の全てが語られた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る