第23話

魔族の男は目の前に立つ男を睨む。

正しくは莫大な魔力を持つ探求者の男を。


「形成せ」

ボォウ!

と黒い炎がひるがえるとまた槍が形成された。

実力は機構武装を展開させた狩人歴戦の戦士に近接戦闘で打ち勝てるほど。


対して探求者の戦闘は魔法が主体であり、無効化どころか相手に力を分け与えるに等しい。探索者も索敵や補助のための魔法・技術はあれど直接の戦闘には特化していない。


手詰まり。


そう思われた。


「ぐ・・・・・・」

ぽろり。ぱらぱら。


魔族の男の槍を持つ手から黒いものが零れ落ちた。地面に落ちて砕けたソレは、炭化した指か。


「・・・」

いかに頑強な魔族の男にも痛感はある。そして今手に持つ槍は元は炎であったし、ローブに一瞬触れただけで特別製の布地を焦がした。


あの槍、というかあの炎は、使用するだけでも傷を負うのではないか。


すでに長時間手を燃やし続けているならば当然手は焼け焦げて、まともに使えないのではないか?



「魔力を、よこせ」

魔族の男から初めての対話。

魔力を寄越せば、これ以上の戦闘はしないという意味か。


逆に言えば、もう戦闘は出来ないということか。



「風の精霊たちよ。固く堅く組み合わされ。回れ。廻れ。雷を纏い、穿てよ嵐。『疾風の鎧・迅雷の槍ストライク・フォース』!」


「闇の炎よ、呑み込め」

「無駄です」


恐らくは魔法に込められた魔力を収奪するのであろう技。しかしローブに風が巻きついた鎧からも、杖に雷を纏った槍からもほとんど魔力は抜けなかった。



「使いどころは難しいけど、魔力を奪うあなたのために新しく編んだ新魔法オリジナル・スペルです。入念な魔力制御のかいもあって、絶対に魔力は渡しません。どうしても魔力を奪いたいなら・・・」

「殺して奪うのみだ」


黒い槍と雷光を纏う槍がぶつかった。


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