第15話
「ここで休むンなら、それほど疲れは抜けねぇ。狼どもを視認できてかつ動き出しやすい場所を探すぞ。『黄晶』の、それでいいか?」
「この場ではダメなんですか?」
「さすがに近すぎるだろ。せめてオアシスの反対側とかに行きてぇよ」
そうして3人で狼を視認でき、かつとっさの事態に対応しやすそうな場所を求め、オアシス周りの岩石地帯まで移動した。
「まぁオレ等がいるのは匂いで気付かれてンだろ。その上でこっちに向かってこないってこたぁ、あいつらも今やり合う気はねぇってことでいいんじゃねぇか?」
「そうですね。このあとってどうするんですか?」
ディルの冷静な分析に納得しつつエイジャスがたずねる。
「あの狼次第だな。移動するンなら後をつけてどこまで行くのか確認してぇし、もしただ無意味に大移動してるだけなら一応報告して、だな」
「『この場で襲われたら?』」
ディガーも砂に字を書きたずねる。
「もちろん、対抗だ。出来れば生かしたまま撃退。せめて一匹だけでも生かしてどう動くかを見たい」
スラスラと出てくる対応・手段。
まだ年若く経験という意味ではこの3人の中で最も劣るエイジャスには目から鱗なばかりだ。
「そーゆーのって事前に考えてたんですか?」
「ンなわきゃないだろ。お前らの反応とかディガーの意見を取り入れて、だ。何のために聞いたと思ったんだよ」
あくまでも方針を聞いた上で具体的な手段や対応を付け足していったという。
タンタン。
ディガーが砂地を叩いていた。
それにディルとエイジャスが気付くと狼の方を指さす。
「動いたか」
狼たちの休憩がおわったようで移動しようとしていた。
それにより3人も立ち上がりすぐに動き出す。
「こんな移動して、どこに行くんですかね」
「もし何かから逃げてンなら、さっきみてぇな休息はとれないだろ。恐らく何かを探すか引き寄せられるかしてンじゃねぇか?」
「まだ動くのに体力を十分に回復する必要があった、ってことですね」
しばし歩くことでソレは見えてきた。
ローブを被った人型。
ソレに向かって唸る一つ目狼。
事切れローブの足下に倒れる一つ目狼。
そして、ローブが持つ異様な輝きを放つ石。
一つ目狼と同様に倒れ伏す3人。
刹那の出来事だった。
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