第14話

「一応聞く。やるか、やらないか」

『赤猿』のディルがディガーとエイジャスに問う。


「すぐに仕掛けないんですか!?」

「元々オレ等も休息をとるために来たんだ。消耗してるトコにあの数を相手にすンなら、こっちも手傷を負うだろ」

エイジャスの疑問に冷静に伝える。


「まぁあれらの確認が出来たし、大移動の理由でも分かれば良いしな。極論、あの狼どもを相手にしなきゃいけないってわけでもねぇ」

これはあくまで調査・・であり、討伐ではない。


「逆に言やよ。あいつら片付けてさっさとこの砂漠から出ンのもアリだ。他の怪物どもが大人しくしてるなんてありえねぇからな」


リスクをリターンを目的を、全て天秤に乗せ、どうすることが最善か。


『赤牛』の事故により、どちらかと言えばリスクを避けていた『赤猿』。

しかし、目の前にいる狼どもを仮に1人で戦っても問題なく殲滅できるという自信もある。




故に、問う。

普段なら一緒に調査に来ないであろう、自分とは真逆のタイプに思えるジョバンニ。

自分と同じ経験をつみ、更に発声に障害をきたすなんて大怪我をしても尚探求者シーカーを続ける強いディガー


意見を聞くに申し分ない。むしろ自分だけで全てを決めるわけにはいかない。



「「・・・・・・」」


すぐには答えは出ず、沈黙が降りる。



「・・・・・・」

ディガーが砂地に字を書く。

声を失ってからはディルが引っ張る形でやってきたコンビ。

そんな中でも研鑽を積み、決して堕落しないのが『赤牛』のディガーだ。


兄の言いなりではなく、全幅の信頼と、それに合わせるという意志。

半ば予想していた言葉を指先で書き上げた。


『休息を取って、やつらを追おう』

それは辛くも原因究明への最短ルートだ。

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