第12話
『青葉』の
生まれ持った容姿と剣の腕前に加え異名持ちということで女性に人気があるらしい。
少なくとも、異名を
というのが、事前の印象だった。
実際に会い、話し、共に調査に出るとガッカリした。
女性にうつつを抜かし、注意・警戒も無いまま独走し、一撃を受けた。
しかも相手は詳細不明な植物種。
当然のように毒持ちだろう。
まだ外見的には変化はなく、生きて剣を振るっていることから即死するような毒ではないらしい。
ーーーーーー
「よくもやってくれたなぁ!」
普段のキザったらしい笑みとは打って変わり肉食獣のような顔付きで
剣を、脚蹴りを、拳打を、がむしゃらに打ち込んでいた。
「水の精霊たちよ。薄く広がり見えぬ悪意を捉えよ『
霧を発生させ目に見えない微細な粒子の影響を受けなくする広範囲援護魔法。
今回は微細な毒胞子を霧で包み込み、吸い込まないようにし、無害化した。
「地の精霊たちよ。槍をもて。剣を掲げよ。小さき兵士となり我が指揮にこたえよ。『
石や鉱石、土に砂。地に属する物で人型を作り武器を持たせ戦わせる魔法。石の戦士が怪物を抑え、後ろから魔法を撃つという風に使われることが多い。
「剣よ、断ち切れ!『
植物が持つしなやかさ。それを斬ることを前提とした念系剣術。斬撃を素早く力強くする初歩の強化だ。
異名持ち3名による、それぞれが使い慣れた魔法と念による攻勢。
特にジョバンニの剣戟は激しく、手足を切り落とし胴体にもいくつもの傷をつけた。
そしてそんな攻撃に新種であろうとも耐えられるはずもなく、倒れ伏すまでにそれほど時間はかからなかった。
「これで終わりだ!!」
ジョバンニがトドメをさそうと再度剣を振り上げた。
「地の精霊たちよ。彼のモノを硬く閉じよ。『
対象を砂で覆い、更に硬い石壁で閉じ込める封印魔法。
対象は当然、新種マタンゴ。動けなかった所を砂で覆い身じろぎすら出来なくした上で外部からの物理的な干渉を遮断する。
そこに剣を振り下ろせばどうなるか。
ガキィン!
しなやかな植物を斬る剣では硬い石の壁は斬れない。
「すまないが『青葉』どの。これは協会に引き渡すべきだ。このまま持って帰る」
ジョバンニに睨まれても全く引かずに宣言する、シキ。
数瞬の沈黙のあと、ジョバンニが溜め息を吐き残心を解く。
「わかりました」
納得はしないものの理解はした様子だった。
「僅かに残っていた死黒キノコを採ってきましたのよ。どうやら、今のマタンゴがこれらに魔力を吹き込んでいたようです。ほら、もう枯れかけていますけど」
正しい生育環境でなければ遺跡内部では植物は育たず、すぐに枯れてしまう。
本来なら有り得ない場所にあることで死黒キノコは枯れ始めていた。
「一度協会に戻り検分しましょう。それとジョバンニさんが受けたかも知れない毒にもキチンと対処しなくては」
『教授』《プロフェッサー》の異名を持つ女史の目が輝いていた。
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