第9話
「それではこれから合同調査を開始します。やり方や調査の速度などは各々にお任せします。目標は魔力溜まりによる変異の除去並びに魔力溜まりの位置特定。調査を終える場合は協会へ判明したことを報告すること。明後日の朝には再集合して意見交換をしたいと思います」
そんな事務通知のあと、それぞれが得意とする場所に向かう。あえて行き先については打ち合わせせず、遺跡内で会ったら自分の視点から得た情報を共有するのだ。
そして何よりも無理に分散するよりもこの方が効率的でもある。
得意としている、ということはその場所についてよく知ってるということであり、異常に気付きやすいということだ。
それには普段と同じか近い状況で行ってもらう方が良いのも確か。
そんな訳で。
1人で火龍種が出たという沼エリアに来ました。
ちなみに火龍種、個体にもよりますが討伐の場合は手練れが最低でも5、6人必要と言われております。
火の精霊を従え、堅牢な鱗に包まれ、爪と牙は鋼鉄の鎧すら軽くちぎる威力で振るわれる。
そんな巨大な生物が高い知性を持ち、歩行もしくは飛行して移動する。
討伐を考えること自体ほぼ有り得ないことだ。
5、6人という数字も手練れならば逃走が可能であり、超がつけばかろうじて撃退ができる。
そして何よりもその人数ならばばらけて逃げれば半数は生還できる、というものだ。
火龍種のみならず大抵の龍は高い知性を持つため、対話が可能なのだ。
件の火龍種がいれば話を聞き、探し物を手伝ってやるか渡せるならば渡してしまえば異常が1件片づくし。
そんなわけで沼エリアに来たのだが・・・・・・。
「ぶんっ」
「ギギキィ」
「風の精霊たちよ。逆巻く風の衣を我が身に『嵐の衣』」
現在虫に集られてます。
元々虫や蟲種は多かったが、ほとんどの種類は臆病というか、別種の生物に向かって来ないはずなのに。
さらに分からないのが攻撃せずに集るだけ。
どこかから逃げてきて、私の魔力を感知して寄ってきた、みたいな。
敵対するなら雷の鎧にでもして近付くはしから焼いていくのだが・・・・・・・。そうし辛いのが今の状況だ。
何かから逃げるとして、何から逃げてきた?
それもこんな色々な種類。単一の捕食種が出たにしてはおかしい。
あ、虫や蟲系の捕食種は鳥や小動物、一部植物とかです。
これはひょっとして・・・・・!
『どこ!?有る!?』
聴こえたのは焦るような思念。
何かを探しているような。その主はすぐに見つかった。
火龍種が沼の周りの木々を爪で弾き飛ばす。沼に火を吹き水溜まりに変える。
焦りが火の精霊を刺激し、荒れ果てた周囲にトドメをさすかのように焦土に変えていく。
虫たちはコレから逃げていたのか。
そりゃそうだ。最低限の生存本能はあるのだし、近くにいるだけで焼かれるのら逃げるだろう。
今回の目的としては、一度話を聞かないといけないわけで。
そのためにはこの荒れ狂った火龍種を落ち着けなければならなくて。
溜め息ひとつ。
「風の精霊たちよ。鋭い刃になり空を走れ『風の一太刀』」
ギャアン!
かん高い音を立てて鱗に覆われた頭にぶつける。
『邪魔だてするか!去れ!!』
そんな火龍種の咆哮に立ち向かった!
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