第8話
遺跡に調査へ行くときの装備は基本的に変わらない。
杖にナイフ、ローブ。小さい霊装をしまっておくホルスター。
ローブには龍種の鱗を、ナイフには龍種の爪を使っていて密かな自慢だったりする。
「風の精霊たちよ。荒ぶる爪を杖の先に『嵐の爪痕』」
雷と風の斬撃が同時に3本。杖を振るった軌跡に描かれる。
魔法に必要なのは、魔力とイメージだ。詠唱は必要ではないものの一節ごとにイメージを補強してより強い魔法が使える。
普段使う詠唱は3節『何の精霊に』『様子』『形状』を伝え、発動する場所を指定する。
最後に全体的なイメージを付加して強化。
「火の精霊たちよ。舞え!『炎獄』」
ゴォッ!
目の前に火の壁が出来る。しかし、火力は疎らだしほとんど精霊まかせなので精霊避けでもあれば防がれるだろう。
「風の精霊たちよ。荒れ狂え。穴を穿て。束ねて落ちろ。目の前に。『渦風の戦鎚』」
ギギャギャ!!
落雷と竜巻を合わせて落とす魔法。
4節の詠唱からなる強力な魔法だ。
遺跡では魔法を主体に、場合によってはナイフなんかも使う。が、体術は苦手だ。
魔法を使う方が隠密・奇襲性に優れているのも大きいと思う。
「そういえば、あの時の
ふと思い出した。
どうせトカゲも解体しなきゃいけないし。
「空の精霊たちよ。檻にあるモノを吐き出せ『無音の彼岸』」
地面の魔法陣からあの時のトカゲが出てくる。
見た感じ荷物っぽいのは無い。胃の中はどうだろうか。
ナイフで解体をしていく。
皮・肉・牙・爪・骨・内臓。
胃の中には荷物らしき物はなかった。
代わりに石のようなものがいくつか。
「エサがなくて霊石でも食べたのか、食べてから石化したのか」
そこらへんも魔力溜まりの異常が関係するのか。
トカゲはそっくり協会に買い取っていただけました。
・・・・・・・・・
「あぁ~・・・どこいったんや」
訛りのある愚痴を吐く男がいた。
「仕事人としてこれは無いやろ・・・・・・」
がっくりと肩を落として歩いており、背後から殴りつけて身ぐるみを剥いでやろうと思っている者からはカモだと思われていた。
ニヤニヤとした男が未だ愚痴り続ける男を殴りつけようと足音を殺しながら背後に回った。
その瞬間。
ぱぁんっ!
乾いた音が響く。
数秒前までニヤついていた男はばたりと倒れてしまった。
「しかも寄ってくんのはこんなムサい男ばかりかいな。せめて別嬪さんでも連れてこいっちゅーの」
尚も愚痴る男。
もうその男に絡もうと考える人間は周りにいなかった。
その男が背後から殴ろうとした男に何をしたのかは誰にもわからなかったからだ。
不意打ちに対して見ることも出来ない攻撃でもって返したその実力に美奈が恐怖するのだった。
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