第35話 世界最強の開拓者
世界各地にダンジョンが出現し、日本では自衛隊が防衛出動した頃、アメリカではそれより少し早くから軍がダンジョンへ出動していた。
アメリカは日本とは考えが違い、無許可で穴を出現させたのは我が国への侵略であると早々に判断したことが要因だ。
1回目の出動から主力戦車を投入。
後にオーガと認識する最初に遭遇した敵勢勢力に対し降伏命令を出すが、応じなかったことにより機関銃を発射。
しかし効果が認められず、最終的に主砲による攻撃で無力化に成功。
オーガの死体は地面に吸い込まれるように消えていき、戸惑う隊員だったが、黒紫色の水晶を発見し、回収。
当初は水晶の解析に難航していたが、知識スキルや加工スキル持ちが現れたことにより、解決。
というのもアメリカも穴への侵入は禁止していたが、日本程徹底していたわけではなく、無許可で入り、中でどんな目に遭おうと国の指示に従わなかったのが悪いという自業自得の考えがあった。
幸か不幸か犠牲者は出たものの、その分スキルの取得方法、知識スキルや加工スキル持ちの発見が早く、アメリカは皮肉にもダンジョン産業において速いスタートダッシュをきることができた。
その甲斐あってダンジョン出現から8年に迫る今も、アメリカは世界経済のトップに君臨している。
だがその理由は、なにも速いスタートダッシュだけが要因ではない。
アメリカが今も世界経済のトップに君臨出来ているもう1つの要因、それは開拓者の強さにある。
単に戦闘向けのスキル持ちの多さでは人口の多い中国やインドに分があるが、アメリカで最強と言われている開拓者がその数の差をひっくり返しているのだ。
アメリカの開拓者の中でも最高クラスである
スキルは[魔法効果上昇]
魔力を1消費するだけで、100消費した時と同じ効果を得られるスキルである。
つまり、彼女が魔力を体に1流すだけで、100流した時と同じだけのパワーやスピードが得られる。
そのお陰で彼女は、深い階層でもモンスター1体1体を少ない魔力で倒す事が出来、1度に多くのモンスターを倒せることから、アメリカは他の国よりも稀少なアイテムの保有数が多いのだ。
だが彼女は基本的に面倒臭がりで隙あらば寝ている為、彼女がもっと頻繁にダンジョンに出向いてくれれば、アメリカは他国をもっと引き離すことが出来るのに、と政府は頭を悩ませている。
しかし今日、彼女は世界最強の地位をさらに強固たるものにする。
理由は、今公介が見ているテレビのテロップに映っている内容。
アメリカのエマ・ネルキス氏
新たなスキルを発現か
画面に映っているのはエマ・S・ネルキス。
そして彼女が2つ目のスキルを発現させたことが記載されている。
内容によると※スキルの書を使ったようだ。
アメリカでスキルの書がドロップされるのは、これで2回目であり、他の国ではドロップしたことは1度もない。
彼女が深い階層のモンスターを倒した際にドロップしたらしいが、政府は彼女の更なる強化を狙い、これを本人に使用することを許可。
とは言ってもスキルの書から手に入るスキルと、最初にモンスターを倒した際に取得するスキル。
これら2パターンで稀少なスキルが出る確率に差があるのかは分かっておらず、流石に2つ目のスキルも有用なものが出るとは思われていなかった。
いや、天は彼女に二物を与えた。
[魔力回復速度上昇]
それが彼女の2つ目のスキルである。
効果は10秒毎に魔力を1回復する。
つまり彼女の場合1つ目のスキルと合わせれば、魔力を使いきったとしても10秒待てば、実質魔力100と同じ魔力を使えることになる。
(そんな便利なスキルがあったのか。俺も取ろう)
そう思った公介が取ろうとしたスキルは2つ目の方ではなく、1つ目。
そもそも2つ目の魔力回復速度上昇は公介も持っている上に、他にも所有者はいる。
只、このスキルは常時発動しているスキルであり、熟練度や消費魔力が存在しない。
公介やエマ以外の魔力回復速度上昇はもっと回復に時間がかかり、実用的とは言えなかったことから、エマのように短時間で魔力が回復でき、さらに魔法効果上昇のスキルと相性が良いことでここまで騒がれているのだ。
だが、1つ目のスキルは公介も持っていないスキル。
というのもエマは元々どんなスキル持ちか公表されておらず、今日2つ目のスキルの発表と同時に明らかになったのだ。
今まではアメリカ最強がどの程度の実力なのか、悟られないように隠していたが、もうその必要はないということだろうか。
例え実力が悟られようと、彼女の世界最強の地位は揺るがないとの判断なのかもしれない。
早速魔法効果上昇スキルを取る公介。
しかも自由設定でさらに効果を上げて。
新しく追加したスキル
魔法効果上昇
魔力を1消費する行動が1000消費した時と同じ効果になる
※スキルの書とは
最初に発見したのはアメリカのとある開拓チーム。
深い階層のモンスターを倒した際にドロップした。
鍵付きの本のようなそれを鑑定スキルで確認したところ、分かった名前はスキルの書。
効果は、鍵を開けた者にスキルを与える。
今までの、スキルは1人1つという常識を覆すそのアイテムに、各国の富豪達が群がり、最終的にアメリカの資産家が日本円にして5億で買い取った。
因みに日本と同じで、アメリカもダンジョンで収集した品の所有権はアメリカにある。
他国の開拓者が来てドロップ品をごっそり自分の国に持っていかれては、儲けが無くなってしまうからだ。
基本的に自国民は規制が緩く、政府以外との取引でもいくらかの税金を払うだけだが、他国民が国境を越えて持ち出す場合は、さらに追加の手数料を支払うことになっている。
1つの国がその仕組みを作ると、どこの国も同じような仕組みを作り始めた。
以降各国は、奮起になってスキルの書のドロップに多くの開拓者を雇ったが、その後ドロップした例はなかった。
それが今回、エマのチームによって2個目が発見された。
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