第17話 帰り道
その帰り道、公介はあることを考えていた。
ダンジョンの出入口にいるスカウトマンだ。
基本的に、いかにも今日が初ダンジョンです、という雰囲気の者には、出てきた際に声をかけられる。
というか、ビギナーダンジョンで本格的に活動する大人は少ない為、殆どがスキル取得を目的に来る学生なのだ。
お疲れのところ申し訳ございませんが、ひょっとして今日が初ダンジョンですか?スキルはもう判明しましたか?
という感じに1人1人声をかけている。
声をかけられた際、何て返せばいいのか、迷っていた。
(はい!スキルが取り放題のスキルでした!...なんて答えるわけにはいかないか)
加工スキル持ちだって、現れた当初は国から保護されていたぐらいなのだから、こんなスキル持ちが現れたらどうなるのだろうか。
毎日、不治の病に苦しむ者達が救いを求めて、自宅前に列をつくるか。
他国の暗躍組織が、我が国に協力しろと家族を人質にとるか。
流石に考えすぎかも知れないが、良からぬ輩というのは、どこにいるか分からない。
逆に言うメリットは何なのか。
周りからチヤホヤされるか
いやここまで凄いスキルだと逆に近寄りがたくなりそうだ。
ダンジョンで稼ぎまくれるか
それはスキルを秘密にしていても可能だ
幸いこちらから言わなければバレる心配はまず無いと言っていいだろう。
数値化スキルで見られるのは自分の数値のみ。
一応[感取の目]というアイテムを加工スキルで製作したスキャナーを使えば他人の数値を計ることも可能だが製作コストが高い上に、使用回数が10回までという制限付きであることから、これを偶然使われることも無いだろう。
そして鑑定スキル持ちもスキルだけなら見れるが、ある程度対象に接近しなければならない。
さらに鑑定スキルは鑑定する対象が貴重なものであればある程魔力を消費する為、どう考えてもレア中のレアであろう[自由設定]のスキルを見られる程、魔力量が高い者はいないだろう。
(別にこのスキルがあれば、わざわざ進学する必要も、企業に入社する必要もないか)
開拓者は何人かでグループを作ることが多いが、仲間の前で、スキルを幾つも使用している姿を見られる訳にはいかないので、仲間を探す必要もない。
仲間を信用するしないの問題ではなく、情報というのは知っている者が多い程漏れやすいのだ。
(出入口の連中には、まだ発現していないと、適当に伝えればいいか)
そう決断した公介は、出入口に着くと、駆け寄ってきたスカウトマンをあしらい、帰路に着いた。
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