第16話 [自由設定] 発現
(知ってはいたけど、凄いな)
ダンジョン内の映像は動画サイトで見たことがあるが、実際に見るのは初めてであった公介は、外から見たときとの違いに驚いていた。
外からだと入り口だけが、何もない空間にあるだけなのに、入ってみると、どこまでも続いているように見える程、奥が深いのだ。
地形はメジャーな洞窟タイプ。
しばらく歩いていると、人が集まっている場所に出た。
この階層に出るモンスター、マイツムリである。
カタツムリのようなこのモンスターは、小型犬程のサイズであるが、この階層がビギナーランクに分類されているだけあって、踏み潰すだけで倒せる。
公介は抵抗感を感じながらも、多くの人が通ってきた道だと自分に言い聞かせ、マイツムリの頭を力一杯踏み潰す。
「フンッ!」
動かなくなったマイムツリは、地面に吸い込まれるように消える。
討伐に成功した証拠である。
流石に水晶はドロップしなかったが、これで自分も何らかのスキルを獲得した筈だと思う公介。
自分のスキルが何なのかはまだ分からないが、戦闘に使えるスキルなら戦闘を行えば、偶然発動するかもしれないと思い、その後もマイツムリを倒しまくる公介。
場所を移動しながら、数十匹倒したところで、一度休憩をとることにした。
(流石にちょっと疲れたな)
持ってきたお茶を一口飲み、また再開するが、その後もスキルのヒントは分からず、そろそろ帰る予定だった時間が来てしまった。
その日にスキルが判明しないことは対して珍しいことでもないのだが、やはりこれだけの時間と労力を費やしても手がかりが掴めないとなるとイライラしてきた。
弱いモンスターということもあって、アイテムもドロップしたのは小さな透明水晶が1つだけ。
今日はもう諦めて帰ろうと思い、つい愚痴がこぼれてしまう。
「数値化スキルを取得できてたら、こんな苦労せずに済んだんだろうな」
魔力の量、魔力をどれだけ制御出来るかをを数値として確認できるようになり、スキル名も表示される[数値化]スキルならよかったと一瞬思った。
しかし、最初にそのスキル持ちが現れた時こそ、魔力の量や魔力がどれだけ制御出来るかを、判断できることが判明し、話題を呼んだが、本人の数値しか確認できないため、自身の成長が分かりやすいというメリットしかない。
因みに当初ネットでは、これをステータスと呼び、話題となったが、あくまで本来数値として見ることのできないものを数値化して見ることが出来るようになるスキルである為、ステータスではないと言う声もある。
故に今となっては、特に羨ましがられるスキルではない為、やはり数値化スキルでなくてよかったと思った公介。
その時、
魔力量 1/1
魔法制御 1
スキル
[自由設定]
[数値化]
突如目の前に文字が表れる
「へ?」
間抜けな声を出してしまったが、そんなことを考える為に頭のリソースを使う余裕はない。
目の前に表れた文字には見覚えがある。
数値化のスキル持ちが、どんな風に数値が見えているかを表現したイラストと類似している。
つまりこれは数値化スキルの影響で見えていると考えていいだろう。
しかし、数値化スキルはモンスターを倒した瞬間、つまりスキルを獲得した瞬間に目の前に表れたという体験談が多いスキルであり、寧ろその数値をしまうコツ(視界から消すこと)を見つける方に苦労するスキルらしい。
(こんなに遅く表れることもあるのか)
そんな風に考え込んでいると、スキル名のところに[数値化]と、後もう1つ書かれている文字があることに気付く。
(自由設定?)
最初のモンスター討伐以外にスキルを得る方法は一応ある。
強力なモンスターから極々稀にドロップする、スキルの書を使うことだ。
逆に言えばそれ以外にスキルを2つ得る方法は見つかっていない。
最初にモンスターを倒すことで得られるスキルは1つで、それも
2回目の討伐で得られた報告も、1度に2つ得られた報告もない。
つまり、今彼が見えているものは、今までの事例からすればあり得ないのだ。
(もしかして)
公介の頭にある1つの仮説がよぎった。
[自由設定]というスキルが[数値化]の上に書かれているということは、このスキルが最初に獲得したスキル、ということになる。
そして数値が突如表れたタイミングから2回目以降に倒したマイツムリから獲得したということはないだろう。
数値化が見えた直前にしたことと言えば...
(俺が数値化スキルを取得、と言ったから...)
確証は無いが、数値化スキルを取得と言った瞬間に数値が見えるようになったのだから、それしか考えられなかった。
そして仮説から確信に変える方法が1つあるとすれば、
「身体強化スキルを取得」
方法は簡単だ。
もう一度その状況を再現すればいい。
期待とドキドキでスキルのところを見ると...
魔力量 1/1
魔力制御 1
スキル
[自由設定]
[数値化]
[身体強化]
熟練度 1
消費魔力 1
「えぇーーー!!!」
思わずその場で叫んでしまった。
自由設定とは宣言したスキルを取得できるスキルだったのだ。
元々マイツムリをずっと狩っていた為、叫んだ後は直ぐに疲れて座り込むが、アドレナリンは止まらない。
(落ち着け落ち着け、ホントにそんなスキルがあるのか。でももし、仮にそうだとしたら、まずは鑑定スキルや知識スキル、他には...)
「あんた...大丈夫か」
あまりの叫び声と興奮の度合いに、近くにいた同業者に声をかけられた。
「アッ、ハイ、ダイジョウブデス」
急に話しかけられたことで顔を赤くし、我に帰ったところで、帰宅してから考えようと思う公介であった。
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