第10話 有効活用
「それでは日本各地に出現した穴、ダンジョンについて、今後の対応を検討していきたいと思います。」
総理の言葉により5度目の会議が開かれた。
様々な意見が出たが、皆要点は同じ、ダンジョンの有効活用だった。黒紫色の水晶の加工用途の問題はさておき、透明な水晶は人間を身体機能を向上させる。
そして1回だけだが、奴らの武器や、素手で奴らに止めをさすと、一国の水晶以外での身体機能の向上や、調査隊員の知識の発現など、まるで人類の進化のような現象を引き起こす。
「総理、私に提案が」
手を挙げたのは、ダンジョン説を唱えた経済産業大臣だ。
自身の説がほぼ的中したことで、少し発言力が増したように思える。
「現在入り口を封鎖している日本全国のダンジョンに自衛隊を派遣し、簡単に倒せるモンスターがいないか調査するべきです」
彼の意見は、今調査しているダンジョンに出てくるゴブリンよりも、もっと弱く素手でも安全に倒せるモンスターを探し、そこのエリアだけ一般開放するべきというものだ。
もし、一国の身体機能向上スキルや調査隊員の知識を得るスキルだけでなく、他にも種類があるならば、日本にとって、もっと有益なスキルを持つものが現れる可能性があるからだ。
「なるほど。しかしそれだと、懸念すべき問題が」
総理が懸念したのはスキルの悪用である。
我々はまだ、2つのスキルしか発見できていない。
人間を簡単に傷つけることが出来るようなスキルもあるかもしれないからだ。
「確かに、一般市民にそのようなスキルが発現してしまうのは危険ですな。でしたらまずは自衛隊のみでの活動をさせてはいかがでしょう」
自衛隊員だから絶対悪用しないという根拠は無くとも、一般国民に開放するよりは安全だろう。
そしてそれに対し、さらに意見が挙がる。
「総理、それについては私からも意見が」
彼は自衛隊の通信記録について意見があるようだ。
ダンジョンが出現した際ドローンによる内部の調査が行われたが、中へ入った瞬間、通信が途絶えてしまい、電波妨害を受けていると判断した。
しかし、自衛隊の通信記録によると、内部にいる者同士の通信は可能なようで、その後も彼らは普通に通信をしていた。
つまりドローンを操作する者が内部に入れば、自衛隊が通信できた条件と一致するのではないかということだ。
元々2回目の調査では、死体やアイテムドロップの回収が任務だった為、ドローンは使われなかったが、内部のモンスターを観察するだけならドローンで十分だ。
「言われてみればそうですね。では、今後の対応は、日本各地に出現したダンジョン内をドローンで調査し、ゴブリンよりも弱そうなモンスターを探すということでよろしいでしょうか」
誰も異議を唱えなかったことで5度目の会議は終了した。
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