2 事象の断層

 しばらくして、広い丘陵の先に大きな崖が見えてきました。まるで城壁のようで、両端は地平線に続き果ては見えません。

 クルミの胸元から顔を出すルルルが

「何あれ」


「事象の断層」


 クルミは、その崖を凝視し

「ここは、スワンヒルと隣の次元の違う大陸プレート境界で、最初は小さな亀裂だったけど、一年に一回、小さな地震といっしょに数センチずつ、せりあがっていくの」


「活断層だね」


「はじめは椅子で登れたけど。だんだん高くなって梯子にしたりしたけど、さらに高くなって、さすがに、この高さは登れない」


 ルルルは呆れた表情で崖を仰ぎ見て

「たしかに、千メート以上あるね。どうするの」

 クルミは大丈夫といった笑顔で、断層の壁を凝視して何かさがしています。


「あった、あそこだ」

「なに」

「ほら、大きな亀裂があるでしょ」

「あの垂直の亀裂かい」

「そう、突っ込むよ!」

 クルミはその亀裂に向かって、突進する。


「ええーー!」

 叫ぶルルルにかまわず、クルミは亀裂に飛び込みます。


 次の瞬間、下からつきあがるようにボードが上昇する!


「なにこれ! 」

「上昇気流! 丘からの風がこの亀裂に集中して、そのまま上に抜けていくの。この上昇気流に乗って一気にあがる」


 下からの強い風で、クルミの髪が上に吹き上げられ、おでこが出て顔をしかめています。

 さらに、急上昇する反重力で、クルミは四っん這いでボードにしがみつき、さらに下からの風でスカートが……


「クルミ……いちごのパンツ丸見えだよ」

 ルルルが申し訳なさそうに言うと


「ええ、見るな! 」

「子供のパンツなんて、見てもしょうがないよ」

 クルミは膨れ面で


「ブーーー! そういう問題じゃないの! 」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る