第5話 昼ご飯美味しかった(笑)
「おっじゃましまー」「えっ」
まさか着替えてる最中とは思わずにドアを開けてしまった。
(鍵閉めとけよ…)
普段の様子や性格からしてガリガリだと勝手に思い込んでいたが白皙の肌をした腹筋は少し割れており、思わず見とれてしまった。鍛えてるのか?
「……ごめん」
「っや、別に…」
着替えているところをジロジロ見るのはなんか……アレだから壁の方向を向いた。
(…どこが醜いんだよまったく)
みずきってたまに馬鹿だなって思うときが多々ある。勉強面とかじゃなくてね?
自分が周りに好かれてることに気づいてないところとか……今もそうだ。
そもそも何が醜く感じるのか知らないがもしみずきがクソブスだったら俺話しかけさえしないぞ?なぁ?もう少し自分の魅力を自覚─
「ねぇ!!」
「わっっ! な、何だよ」
「急に押しかけると思えば急に黙るし…てか何の用?」
「あーいや……一緒に夜ふかししようぜ的な?」
「は?自分の部屋に戻ってよ、もう疲れたし寝たいんだけど」
眉をひそめ口を尖らす。
……そんな不機嫌な顔も可愛い。大きくて真っ黒な目は今は逆かまぼこの形になっていて凄い眠そうだけど。これで性別が女で、もうちょっと自分に自信があって、もうちょっと柔らかい性格ならなぁ〜!!隣に寝っ転がってみずきの寝顔を……いやそのために来たんじゃないけどな。
「ねぇっ」
「……っおう」
「…なんかいつもの姫宮じゃないし、超眠そうじゃん…。そこまでして部屋にいたいわけ?…………あ」
何か閃いた顔をして固まる。なんだなんだ、『一人で眠れないの?しょうがないな』とか言うつもりか?
「部屋に大きな蜘蛛がいるとかでこっちに避難してきたとか?」
あっ……まぁそういうことだよ、なんかバイ◯ハザードに出てきそうな屋敷で暗いシャンデリアの光しかないなか一人で眠れないから…って面と向かって言うよりはマシかもしれない。
「うん、まぁ……すんごい大きくてキモかったな……うん。逃げ足も速かったし」
「……」
みずきはため息をつくと部屋の奥の方へ行き何故か床にシーツを置こうとしている。
「ちょ何やってんだよ」
「え…見ての通りだけど……あっ姫宮はベッドね」
「そうじゃなくてさ汚いだろ。日本と違ってここ土足文化じゃねーの」
異世界の文化のことはよく知らないけど、スリッパらしきものがあるので多分そうなのだろう。
「…でも狭いじゃん」
「どこがだよ、俺3人分…いや4人ぐらい入れそうなデカさだろ」
両腕を広げてベッドの幅を測る。大体腕を広げた長さは身長の長さと同じとよく聞くから、両腕広げた長さよりも少し大きいということは少なくとも170cm以上ある。十分だろ。
「……」
そんなに俺の横で寝るのが嫌なのか。
「じゃあみずきはベッドで俺はそこの椅子」
「…椅子で寝れるの?」
「……うーん、うん多分」
曖昧な返事をすると観念したのかベッドの上で寝っ転がり俺に背を向けた。
「……言っとくけど僕本当に疲れたから話しかけたり近づいたりしたら─コロス」
「えっこわっ」
俺もベッドに転がり布団に潜る。何となく暇だったから足でみずきの足をつついた。
「ねぇ!」
「厳しくね」
「早く寝なよ本当にさぁ……おやすみ」
ひょいと振り返って俺の方を見たかと思うとまた背を向けた。
白い眼帯に真っ黒な綺麗な目……
「あれ寝るときも眼帯つけんの?」
「……なんで言ったそばから話しかけるわけ?」
みずきの反応が面白くてつい笑ってしまう。
「ごめんって、でも外さないの?」
「……見られたくない、から…」
「見られたくないってもしかして中二病?秘めたる力を宿してるとか─────────あっ…ごめん……」
すっかり忘れていた。みずきが眼帯をしてるのは中二病でもものもらいでもなく昔付き合ってた執着地雷系束縛メンヘラクソ女にやられたらしいのだ。
みずきの方は自分が悪かったなどと言っていたのだがどうみても明らかに彼女の方が悪い。
かまってくれなかったからって目を刺す奴がいるか?そんなんで刺されちゃうなら俺カツオのたたきにされちゃうレベルなんじゃね…!?
彼女いた事ないけど。
「…………」
「みずき、本当にごめんって」
「…………」
小声で話しかけるも返事がない。
「もしかして寝た?」
「…………」
寝ているふりをしているのか否か……どっちにしろあのみずきの寝顔を見れることには間違いない。夕方のリベンジを果たすべく俺は服が擦れる音一つもたてないぐらいに神経を尖らせてベッドからゆっくりと降りた。
差し足忍び足でみずきの真正面に回る。寝息が聞こえないのは案の定寝たふりなのか。
腰を曲げて顔を覗き込む。
(かわっ………可愛い……)
やはり寝顔も可愛かった。いや想像以上に可愛い。
赤ちゃんみたいなサクラ色をした唇に触りたくなるようなモチモチとした白いほっぺ。そして何よりもバサバサとした黒いまつげが華やかで美しい。
みずきは逆さまつげだからなのか正面から見ると長さは普通なのに(それでも目がまんまるで大きくて可愛い)横顔や伏せがちな目は長いまつげが見えており、俺と目が合うと何故か顔を逸して頬をほんのり赤く染めるのだ。その様子が面白くてついからかってしまう。
そう俺は好きだ。
みずきの顔が。
今でもスマホがあったら写真を撮って秘蔵フォルダに保存したいぐらいだ。最初はそれが恋なのかと勘違いしそうになったが、付き合いたいと思うのが恋と呼ぶのなら俺のみずきに対する感情はソレではないと思う。
カサカサカサ……
ん、何の音だ??
カサッ…
足元に何やら嫌な感触がした。
(まさかゾンビ……な訳ないよな!ほこりだよな?ほこりであってくれっ…!)
見てみたいという思いと見たくないという葛藤の中、先程まで低くしていた腰を上げ代わりに視線を下に移す。
そこには黒い焦げたような手…………いや、ただの黒い蜘蛛がいた。
「っ何だよ〜」
あっやべえ、つい声を出してしまった。
けれども幸いみずきはまだ寝ているようだ。
……というかさっきからその姿勢だな、大丈夫なのか?
そっと首筋に触れてみる。脈はある。よかった。
(……そろそろ寝なきゃな)
また差し足忍び足でみずきの背中側、自分の寝床へ戻る。
しかし知らない地で知らないベッド、それにいつもの抱き枕もなければたまに一緒に添い寝してくれる家猫のシロちゃんも居ないから全然眠れそうにない。
(みずきを抱き枕代わりに──なんてことしたらガチで嫌われそうだからやめとくか…)
……寝れん、寝れない。頭が冴えてしまってる。いっそのこと羊でも数えてみるか、
羊が1匹羊が2匹……猫が3匹ドラゴンが4匹…………
………
…
∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴
「……もう朝だよ起きて、」
「ん……やだ……」
「……出れないからどかしていい?」
「…………」
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
「───」
「うーん……?」
「姫宮」
「ふぁい……………」
「ひめみやっっっ!!!!!」
「は、はいっ…!!おは、おはようございまふ………可愛い……」
昨日と同じ、学校の制服を着たみずきが目の前にいた。
眉が凄い下がっており、とても怒ってるということは分かるが、怖いというより可愛いが勝っている。うん、可愛い。
「……何時だと思ってる?もうお昼なんだけど、寝ぼけてないで早く支度してくれる?」
「もうちょっと…」
「ダメっ!!」
布団にこもってもう一度寝ようとしたが阻止された。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
「─で、言葉が伝わらないと色々不便だから猫の飼い主の家に訪ねにいく前にまずは魔女の家に行って言語理解を付加してもらった方がいいとか言われたんだけど、」
「ふぅん……」
白い布がかけられた丸テーブルに黄金の食器と色とりどりの食べ物、アルドは少し用があるからと俺が寝ている間に外へ出かけたとみずきから聞いた。
お皿にのったチキンもどきと、紫や青色といった気持ち悪い色をした温野菜。とりあえず野菜をフォークで差し、食べてみる。
「…うまっ!」
「……まぁ、それでさ、僕は魔法とかいらないし元の世界に戻ることができればいいって言って断ったんだけどアルドが『すぐに帰れないと思うけどな』とか言うわけ、姫宮どう思う?」
「んー?いいんじゃない?」
「違う、そういうことじゃなくて僕達─」
喉が渇いてきたのでワイングラスに注がれた絵の具みたいな緑色の飲み物に手を付ける。正直、いやかなり飲みたくないがあの気持ち悪い色をした野菜が結構美味しかったのでソレもいけるだろう。匂いも悪くない。
お味はいかに─
「……うまっっ!」
「──な訳なんだけど……全然人の話聞いてないでしょ」
「ん、あっごめん昼飯がうますぎた」
口に残る爽やかな酸味と甘み。何の果物のジュース(そもそも果物なのか?)は分からないけれど俺の好きな食べ物トップ10に入るぐらい緑色の絵の具ジュースは美味しかった。
ふとみずきの手元を見るとお皿の上には綺麗にチキンと温野菜もどきが出されたそのままの状態で盛り付けてあった。そういえばさっきからずっと何も手につけていない。
「その野菜色やばいけど味意外とイケるよ」
「あーうん美味しいよねそれ」
「えっ食べたことあんの!?」
「うん、朝ご飯にもでてきた。ちょっと食べ過ぎちゃってお腹いっぱい……」
「えっ!いいな!なんで起こしてくれなかったんだよ」
早く起こしてくれたらご馳走食べれたのに。それにお腹いっぱいって……それだけたくさん食べたってことだよな? いいなっ!
「いや僕も起こそうと思ったんだけど、てか最初起きた時に声かけたけど全然起きなかったじゃん、しかも……」
パチっと目が合う。濁りのない、けれども光もない。そんな例えようもない不思議な目。一瞬時が止まったかと思うとみずきはすぐに顔を逸らし、言い続けるのをやめてしまった。
「……とにかく、アルドさんが帰ってきたら2人で『言語理解付加しなくていいです』って言うよ」
「え、なんで?別にその力あっても困らなくね?むしろあったほうがいい気が─」
「もしそれがデタラメで僕達を陥れる罠だったらどうすんの?」
使用人達に聞こえたくないのかみずきが小声で言う。
「あの人そんな悪そうな人に見えるか」
「…………悪い人までとは言ってないけど……朝その魔法どうのこうのアルドと話したわけ、で魔法がどういう感じかわからないから僕が見せてくださいって言ったら『俺はただの人間だから無理だ』とか言うんだよ、凄い怪しくない?」
「……別に本当の可能性だってあるくね?向こうからしたら俺達の方が怪しいし普通に受け入れてくれたし…てかあの人何故か日本語できるじゃんそんな奴が俺たちの事陥れようとかある?むしろ好感を持ってるまであるだろ」
知らない人に警戒心を持つことは悪いことではないがみずきの場合疑心暗鬼が過ぎていると思う。
どうやったらそこまで疑えるのか、
家に泊まらせてもらってその上ご馳走までしてもらえて……しかもアルドはあからさまに俺よりみずきの方に親しくしている。まさか自分が気に入られてると思ってないのか、どこまで鈍感なんだ。
食事が終わり一旦自分の部屋へ戻ると、ベッドの上にあの白い猫チャンがお腹を出してだらしない格好で寝ていた。厳密には猫じゃないがいつもは背中に生えた天使のような翼が今はもふもふの毛で隠れてるためどう見ても普通の猫にしか見えない。
(お前の方は警戒心無さすぎだな〜!)
そっとお腹を触り優しく撫でると、喉の方からゴロゴロと鳴っているのが聴こえる。
(はぁ……猫チャン可愛いいいいい)
猫チャンに癒やされると同時にホームシックまでとは言わずとも、それに似た感情がどこからか湧いた。
家の猫あずきに会いたい─
ロシアンブルーの黒猫、あずきは俺が物心ついたときから一緒にいる家族だ。
この警戒心無さすぎ猫チャンと違ってあまり人に懐くことなく、客が家に来るといつもどこかに隠れてなかなか顔を出さない。
かくいう家族の方も抱っこや撫でようもんなら走って逃げるのだが、夜になって俺が自分の部屋に行くとあずきは何食わぬ顔でついていき俺の布団の中で眠るのだ。それがたまらなく可愛い。
それに加えてあずきが俺の部屋に来るのは夜、つまり暗い時なのでいつもの黄色く鋭い目ではなく瞳孔が開いた黒目くりくりぱっちりお目々になるのだ。
真っ黒ぱっちりお目々─
ツンデレ─
(あずきってみずきに似てね!?)
「ぶっっ」
やべえ、一人で笑ってしまった。
みずきの場合はツンデレどころかツンツンツンデrほどしかないと思うが目がぱっちりでめちゃくちゃ可愛いという点では同じだなと思う。
コンコンコン
…誰だ?もしかして掃除の時間か、猫チャンを撫でる手を止めてドアの近くへ駆け寄る。
「僕だけど準備できた? アルドさんがもうすぐ出発するよだってー」
「あっまじ? 全然準備してなかった……って俺達着替え以外何も準備することなくね」
そう言いながら部屋のドアを開けると元の制服に着替えたみずきが長いまつげで瞳を隠し、立っている。
「ねーねー」
「ん?」
こっちを見てくれた。……やっぱあずきに似てるな……見れば見るほどあずきに似ている気がして可笑しくなってくる。
「ふふっ」
「何僕の顔見て笑ってんの」
「いや──別に?」
顔に食べ物でもついてるのかと思ったのか、みずきは部屋に入るなり急いで鏡の前に行き確認する。
「はははっ」
「……こわ……ウザいんだけど、僕の背中になんか付いてたの?」
「蜘蛛」
「えっ、取って……あっごめん蜘蛛苦手何だよね─」
「うそうそ」
「……」
みずきはベッドの上でくつろいでる猫チャンを抱き上げ、振り向くこともなく「人待たせてるから早くしてね」と言って部屋から出ていった。
支度を終え1階のリビングに行く。ここの屋敷も今日でさよならだな、なんて思っているとアルドとみずきが2人並んでソファで座って待っているのが見えた。
アルドは全身黒っぽい服装に黒のマントという黒魔術師みたいな格好をしているがよく見ると左胸に金色の紋章のようなものがある。
(そういえば昨日背後に部下みたいな奴いろいろ引き連れてたしなんか指示してたな……貴族でもあり騎士でもある……かなり偉い人なんじゃね?今更だけど)
そう考えた途端''あの事''をアルドに言うか言わないか戸惑った。
(……ここで怖気付いて後で何かあったらどうするんだ)
お昼にみずきが言ってた通りアルドが悪者─でもなければ善人という確証があるわけでもないのに。
「準備終わったか」
「はい、ところで少し提案したいことがあるんすけど─」
アルドがソファから立ち上がりそれをみずきが目をパチパチさせて見ている。
「なんだ」
「俺達今から魔女の家行くんですよね」
「あぁ、そうだ。クロヤマから聞いたのか」
「はい、で、その……ここに泊めさせて貰った身分で言うのもなんですけど、信用できないんで担保となるようなもの預かってもよろしいですか? 俺達が無事に帰る直前に返すって事で……むぐッ」
これ以上喋るのを阻止するかのように口を手で塞がれた。慌てて引き離すとみずきは大きな目をさらに見開き「なんでそうなるの!?」と小声で言っている。
「……ともかく貴方達の言いたいことは分かった。貴方達には危険な目合うことないよう世話を焼いてきたつもりだったがな」
「それは─」
「そこまでは言ってないです……!」
みずきが急に声を張り上目遣いでアルドを見つめる。あれ? 最初アルドのこと信用できないって言い出したのみずきからだよな。
「嘘つけ、お昼アルドのこと怪しがってこれからどうするか俺に話したくせに」
「……だけど別に担保…というか質になるようなもの欲しいまでとは言ってなくない?」
「それにしたって何で担保受け取るのが駄目なんだよ、何も無ければ返すし良くないか?」
「痴話喧嘩はやめろ、私は貴方達が元の世界に帰るまで付き合ってやれないが、その代わり猫の飼い主のとこまで私の身分証を預けるからそれでいいだろう」
アルドは黒いマントの内側から金色のカードを出すとそれをみずきの目の前に差し出した。
そこには赤い文字で謎の文章が綴られており、裏にはアルドが左胸につけている紋章と全く同じものが描かれている。
「カードにはなんて書いてあるんですか?」
「出生日と名前、種族ぐらいだな。魔法が使えるものはそこにプラスして属性と所有している杖が表示される」
「へぇ〜アルドさんは魔法何使えるんですか?」
「私は使えないな、それよりこれじゃあまだ"信用"できないだろう?」
そういってアルドは懐からナイフを取り出し自分の指を軽く切って見せた。
「えっ……」
「ちょ、何やってんですか!?」
アルドは何も答えず切り傷から流れる赤い液体を1滴、カードの上に垂らした。
すると先程まで何の変哲もなかった赤い文字が、内側から外側へとじわじわと輝きだしシールが剥がれるみたいに空中に浮かび上がる。
赤い文字がズラズラと並びこの小さなカードに収まらないぐらいの量になった。しばらくして証明写真のようなセピア色の顔写真が映し出され画面上のアルドはgif画像みたいに瞬きをしている。
「すげぇ〜っっ!!……結局魔法使えるんですね……!」
「いや、これはこのカードが元々持っている魔力が私の血によって働いただけだ。貴方達も身分証を作ればこういうことできると思うぞ」
「ほぇ〜でも凄いですね! ただ自分の血を使わないといけないから痛そう笑」
「…………」
さっきからずっと静かだなと思い、横にいる人物を見ると体が固まっていた。目元が長い前髪の影に覆われ表情が掴めない。
「血がショックで固まっちまったか〜笑笑」
「……」
まるでみずきだけ違う世界にいるみたいに黙り込んでいる。心配になり宥めようと手を出した矢先、固く閉じていた唇が小さく開いた。
「そんなに大事なもの受け取れません……身分証でしょう?僕が無くしたらどうするんですか……それと─お昼はごめんなさい…、」
「要は責任持ちたくないってこと?じゃあ俺が預かるよ」
カードを取ろうとするも頑なに手から離してくれない。
「それもあるけど……今思い返せばアルドさん全然良い人だったしそれに─」
「それに?」
「…………」
(お昼は頑なに意見変えようとしなかったのに、みずきとアルドの間で何かあったのか?)
「……そんなに意思が弱いとわたしまで心配になってくる、無くされたところでめんどうが増えるだけだ。持っとけ」
まさかアルドがそう言うとは思わなかった。……いやでも本当にそうだよな、みずきってなんだかんだいって人に流されやすい。
もう少し自分というものを持ってほしい。
「しょうがないから俺が持ってやるよ」
「えっ無理。姫宮よりはしっかりしてる自信あるし」
「…………」
「話はこれで済んだか、さっさと出発するぞ」
黒いマントをなびかせアルドは外に出るとみずきもそれに続くように俺に見向きもせず歩いていった。
次はみずき視点!
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