朝と病(前)
そして次の日。
今日はなぜかわからないがいつもより早く目が覚めた。
「おはよ〜」
俺は挨拶をしながら居間に入る。
すると、そこには既に起きて家事をしているいつものメイド姿のアーニャさんとアイカさんがいた。
「おはようございます、ソラ様」
「おはようございます、ソラさん」
アーニャさんは笑顔で、アイカさんは無表情だが声音は明るい感じで俺に挨拶を返してくれる。
「相変わらず早いなぁ2人とも」
「そうですか?これぐらいは普通だと聞いていますが?」
「ええ。むしろ、城にいた頃より遅い方だと私は思いますけどね」
確かに、アーニャさんはエスカリアさんの身の回りのお世話をする為に早く起きてそうだし、アイカさんアーニャさんにメイドとして教えてもらってるんだからアーニャさんが基準になってるはずだ。
だけど、それを差し引いてもこの時間はかなり早い。
少なくとも俺が普段通りだったら絶対に起きるような時間では無い。
「いや、絶対に起きるのが早いよ」
「ふふっ、ソラ様はもう少し寝ていても良いと思いますが?」
「そうですよ。まだ朝の5時ですから」
「う〜ん……でもなぁ……」
まあ、朝からなにもする事はないんだから二度寝しても問題ないといえばそうなんだけどなぁ……
なんか早く起きちゃったからもったいない気がするんだよな。
「そうだ!じゃあ、少しだけ手伝わせてくれないか?」
「え?手伝いですか?」
「ああ、洗濯物とかあるんだろ?」
「え、ええ……ありますけど……」
「よし、じゃあ洗おう!」
「ちょ、ちょっと待ってください」
早速洗濯物を洗おうとしたらアーニャさんに止められてしまった。
あれぇ……ダメなのかなぁ?
「その……洗濯物は私がやりますよ。ソラさんはまだ休んでいて下さい」
「えっと……別に眠くもないし疲れもないから休まなくても大丈夫なんだけど?」
実際、昨日の夜はぐっすり眠れたから体調も良いしな。
それに、手伝える事があるならやりたいという気持ちもある。
だから、遠慮せずに言って欲しいんだけどな。
「それでも、ソラ様にさせるわけにはいきません」
「いや、でもさ……」
「いいんです。これは私の役目ですから」
「いや、そう言われてもなぁ……」
「お願いします。どうか私にさせて下さい」
そう言いながら頭を下げるアーニャさん。
ここまで頼まれたら仕方がない……か?
「その……ソラ様に洗濯物の事を頼むと私達の、その……下着の類いがあるので……」
「え?」
「そ、それで……その……色々と問題があると言うか……」
「あ、ああ、そういう事ね。そうだねちょっと不味いよね」
なるほどな。
そりゃあ、俺みたいな男が女性の下着を洗ったりしたら問題だな。
そう言うことならここはアーニャさんの言う通りにした方が良さそうだ。
「わかったよ。じゃあ、俺はゆっくりしてるから何かあったら呼んでくれ」
「は、はい。わかりました」
そうして、俺は居間でのんびりしながら家事をする2人の姿を眺めていた。
***
そして、いつもよりも早く起きたからか、それとも昨日の疲れがまだ残ってたからかわからないが、ソファーでいつの間にか横になるように眠りに落ちてしまっていた。
次に目が覚めた時にはもうすでに朝食の前になっていた。
「あっ……寝てたか……」
「おはようございます、ソラさん」
「お、おお、おはようアーニャさん」
目をこすっていると後ろから声をかけられたので振り返るとそこには笑顔のアーニャさんがいた。
「ふふっ、寝癖がついてますよ」
そう言って俺の頭を撫でてくるアーニャさん。
……どうしよう。めっちゃ恥ずかしいぞ。
「あー、ごめん。すぐに直すから」
俺は急いで起き上がり、洗面台まで移動して鏡を見ながら寝癖を直していく。
そして、寝癖も直し終わり、居間に戻ると既にテーブルの上には料理が並べられており、アーニャさんとアイカさんは席についていて珍しくエスカリアさんも既に座っていた。
「おはようございます、エスカリア様」
「おはようございます、ソラさん」
こうして、俺達は朝食を食べ始める。
今日のメニューはパンにサラダにスープといったシンプルなものだった。
うん、やっぱり美味しい!
そんな事を考えていながら昨日行動を起こしたからなにかやってないかなと思いテレビでニュースを見てみる。
だが、やっぱりそんなに直ぐに見つかるものでもなく、特に新しい情報も特になく頭にハチマキを巻いたダンジョン評論家という意味わかんない男が意味わからない事を話していた。
……いや、なんでだよ。
てかダンジョン評論家ってなんだよ。
なんでそんな人がテレビに出てるんだ?
「……まあ、気にしないでおくか」
俺は気を取り直してチャンネルを変える。
すると、今度はダンジョン評論家という謎の肩書きを持つ男ではなく、普通にスーツ姿の女性が映されていた。
うん。普通のニュースらしくて安心したよ。
「……ん?なんだこれ?」
そんな風に安堵していると画面に表示されたテロップに目がついた。
『謎の病!!原因は突如出現した塔!?』
「……病?病気か?」
画面を見ていると映し出されているのは病院になっていた。
そして、そこには沢山の患者さんが入院していて苦しんでいる様子が映し出されていた。
「……多いな……」
「原因は不明らしいですね」
そのままニュースを見ているとその病気の詳細がニュースキャスターによって語り出された。
なんでもその病気は病原菌の類いは発見されていないが、なぜか突然発症し、その症状は高熱や頭痛、吐き気などといった風邪のような症状から始まり、その後段々と症状が悪化していくようだ。
今の所死亡者などはいないが治療の手段が見つかっていない為、この病院での治療は難しい状態になっているそうだ。
「……ねぇ……アーニャ……」
「ええ。そうですね。この症状は……」
「なにか心当たりがあるのか?」
俺の言葉にアーニャさんはコクリとうなずいて答えた。
その表情はどこか険しいものに見えた。
なにか知っているみたいだけど……教えてくれるのだろうか?
「ええ。これは恐らく……魔力暴走ですね」
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