帰宅と雑談

「ふぅ……ただいま……」


玄関に入って靴を脱ぐ。


今日はいつも以上に精神的に疲れた。


まあ、原因としては疲れとかじゃななくてあの人達に会って事情とかを説明をしたせいだろうけどな。


「おかえりなさいませ」


「……うん。ただいまアーニャさん」


出迎えてくれたのはメイド服姿のアーニャさん。


もう見慣れてきたはずなのに相変わらず似合ってるなぁ……


「お疲れ様です。今日は随分とお疲れのようですがどうなさいましたかん」


「いや、ちょっと色々あってね。まあ、その事は晩御飯食べたら話すよ」


「……そうですか。では、お風呂に致しますか?夕食に致しますか?」


「そうだなぁ……とりあえず先にご飯かな」


「かしこまりました。すぐにアイカさんとご用意いたしますので少々お待ち下さい」


「ああ、よろしく」


それから居間に向かってからしばらくしてアイカさんとアーニャさんが料理を持ってきてくれる。


……あれ?


「エスカリアさんは?」


俺が言ったようにエスカリアさんの姿が見当たらない。


どこに行ったんだろう?


「エスカリアさんなら今は寝ていますよ」


寝てる?


……あぁ、そういえば昨日は女子会って言っていたから遅くまで起きてたんだろうな。


「……起こさない方がいいかな?」


「いえ、構いませんよ。起こすのであれば私達がやりますので」


「うーん、でも、可哀想だしなぁ……」


女子だけの集まりだからきっと夜更けまで盛り上がっていて、俺が出た後に眠くなってそのまま眠りについたってとこか。


「大丈夫ですよ。ご飯の時間には必ず起きると思うのでそれが早くなるだけですよ」


「……まあ、そういうことならいいんだけど……」


……でも、やっぱりなんか申し訳ない気がするんだよな。


俺がそんな事を考えている時だった。


ガチャという音と共に扉が開かれる。


音がしてそちらを見るとそこには……


「ふあ〜……おはようございます……」


大きなあくびをしながら目を擦りながら入ってくるエスカリアさんの姿があった。


「お、おはようございます……えっと、大丈夫ですか?」


「はい……なんとか……」


まだ完全に目が覚めてないのかフラついている。


「ほら、お嬢様、顔を洗いに行きましょ」


「はい……」


エスカリアさんはアーニャさんに手を引かれて2人は洗面台の方に向かう。


「……起きたね……」


「そうですね」


俺が呟くと、隣にいるアイカさんが答えた。


そして、数分後……


「さて、それでは頂きましょうか」


「「「いただきます」」」


いつものように4人で手を合わせて挨拶をする。


今となってはこの光景も当たり前になったなぁ……


「ところで、ソラ様」


「うん?どうしたの?」


「先程は何故あんなにもお疲れだったんですか?」


「あぁ、その事ね。実は……」


俺は今日の出来事を簡単に説明する。


「っていう訳なんだけど話しちゃっても大丈夫だよね?」


「えぇ、問題ありませんよ。むしろありがたいぐらいですね」


俺がアイカさんにそう言うとアイカさんはそう答えてくれた。


その言葉を聞いて俺はホッとする。


良かった。


自分の考えで話してしまったけど問題が無さそうで。


「そうですか……それは確かに大変でしたね」


「はい。本当に疲れましたよ」


主に精神面で…… 特にあの人達の相手をするのがかなり大変だったし……


「それでしたら今日は早めに休まれますか?」


「そうだなぁ……そうしようかな」


正直今日はもう何もやる気が起きない。


というより、疲れすぎて動く気になれないと言った方が正しいかもしれないけどな。


「ソラさん、お疲れ様でした」


「ありがとう。エスカリアさん」


優しい笑みを浮かべるエスカリアさんを見て俺は癒される。


あぁ……なんて可愛い笑顔なんだ……


癒されるんじゃ~


「あっ、そういえば、エスカリアさん達は夜に何をしていたの?」


「はい?私達ですか?」


「そうだよ。女子会とか言ってたでしょ?何をしていたのかなぁって思って」


女子会なんて一生関わりがないし、ちょっと興味があるんだよな。


まあ、男である俺が聞いてもいい内容じゃないだろうけど……


それでもどんな感じなのかはちょっと知りたい。


それに、普段の3人の事も少しだけど知れる機会でもあるからな。


「私は早希さん達と色々な話をしましたね」


「へぇ……例えば?」


「そうですねぇ……」


エスカリアさんは顎に手を当てて考える仕草を見せる。


「え~っと……こっちの世界に来てからの話とか、後はこの世界の事について色々と質問されましたね。ああ、安心してください私達があちらの世界の住人というのは話していませんよ」


「そうなんだ。ちなみに、何て答えたの?」


「大体はこちらに来る前の話でしたが、その時はソラさんが作ってくれた戸籍のまま話させていただきましたわ」


「そっか……」


まあ、その方が矛盾とかもなくなるだろうからな。


俺としても同じ事を聞かれた時に俺も同じ事を言えばいいから助かる。


「あとは……そうですね。生活についても聞かれましたね」


「生活?」


「はい。どういう生活をしているのか、とか」


まあ、そりゃ気にするよなぁ……


俺だって逆の立場なら聞くと思う。


セクハラになる?


……勘弁してくだせぇ……


「それで、どう答えたの?」


「皆さんと同じですよと答えておきました」


「同じくです」


「私もそうですね。あ、でも、雪奈さん達にはソラさんとの事を聞かれましたね」


「えっ!?︎俺の事?」


3人が一斉にコクリとうなずく。


えっと……何を聞かれたんだろうか……


「その……夜はどのように過ごしているのか……みたいなことを聞かれまして……」


「あーそう言うことか」


年頃の女の子達が俺みたいな思春期真っ只中の男と一緒にすんでいるんならそういう話にもなるか。


「まあ、特にやましい事も無かったので普通に答えておきましたが……」


「そうですね。私も同じような答え方をしておきました」


「私もです」


エスカリアさん、アーニャさん、アイカさんの順番で答える。


まあ、3人らしい答え方だな。


別に変な事は言っていないと思うし。


むしろ、普通に良い回答だと思う。


変に誤魔化したりするとあの目敏い早希は直ぐにわかったりするからな。


その辺はマジであいつを誤魔化せないからなぁ……


「そうか。ありがとう」


「いえ、これぐらいは」


「はい」


「どういたしまして」


こうして、雑談を続けながらいつも通りの夜を迎えたのだった。

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