スキルと覚悟

「じゃあ、俺達の後ろについてきてくれよ」


「はい。それではお願いしますね」


「おう任せとけ」


俺は計画を話した。


すると隊長である火神かがみさん、副隊長の遠山とおやまさんは直ぐに納得して賛同してくれた。


だけど俺を疑っていた隊員の山田やまださんと田山たやまさん、|井上《いのうえ

》さん達の説得には時間がかかってしまった。


まあ、最終的には納得して貰えたし火神さんと遠山さんの協力もあって信頼とまでは言わないけど信用はして貰えたと思う。


そして頼んだ内容としては報告に行く際は俺とユキとファムが途中一緒に行くという事と代表者じゃなくて全員で報告に行くということ。


さらに俺だけが報告の時に同行するという事を伝えただけだ。


ユキとファムにもついてきて欲しいがあれだけ多くの自衛隊の人達が集まっているからモンスター……あっちからしたら化け物が現れたといって攻撃されても困るしな。


それに最初こそ怪しんでいたけど、俺がユキとファムと一緒に行動してるのを見て火神さん達は危険はないと判断してくれたみたいだけど、俺の考えに共感してくれてユキとファムは自衛隊の人達に見つからないようにして付近で待機という結論に至った。


……ユキとファムと離れたときの顔は忘れられないから後でめちゃくちゃ甘やかそうと思う。


そして、今は俺達が居るのはダンジョンを世界と隔離している境界の辺り。


既に俺の視界の先には多くの自衛隊の人達が見える。


とりあえず先に行っている火神さん達を追いかける形で俺も【隠密】を使ってついていく。


「……なあ、ちゃんとついてきてるんだよな?」


「もちろんですよ。やっぱり気になります?」


「そりゃそうだろ。見てたはずなのにいきなり消えるし、見えないのにお前の声は聞こえてくるしな」


火神さんがそう言ってため息をつく。


他の人達も同意するようにうんうんと首を縦に振っている。


俺の【隠密】のスキルレベルはまだ1だけど、それでも十分効果はあるらしいな。

それが火神さん達の反応で良くわかった。


「……はぁ……俺、これでも気配を探るのは自信があったんだけどなぁ……」


「……そんなにわからないんですか?」


正直【隠密Lv.1】でどれだけ効果があるのか気になる。


だって、俺が今使っている【隠密】のスキルレベルは1だし、【気配感知】とかの感知系のスキルがなくても結構わかるもんじゃないか?


「ああ……なんとなくこっちに来てるのは分かるんだが、はっきりとした位置まで掴めないな……お前らはどうだ?」


「いや、俺は全然わかんないですね……」


「私もです」


「僕も無理ですね」


「自分もッス」


遠山さん、山田さん、田山さん、井上さんの順番で答えてくれる。


なるほどな……確かに火神さん達の反応を見る限り全くと言っていいほど俺の姿は見えていないようだな。


そして、俺の【隠密】してる中、気配がわかる火神さんの方ががおかしいと……


「まあ、火神さんみたいなおかしい人がいない限り俺の【隠密】はバレないみたいですね」


「おい!誰がおかしいって!?」


「あはは、冗談ですよ」


「ったく……」


火神さんがため息をつきながら頭をガシガシ掻いている。


まあ、実際【隠密】のレベルが上がればもっとうまく隠れられるはずだからそこまで心配する必要はないだろうな。


「それにしても……火神さん」


「ん?なんだ?」


「【気配感知】のスキルは取得できていないんですか?さっき気配を探るのは自信があったって言ってましたよね?」


俺が初めてステータスを確認した時もスキルを複数取得していたし、他の人が俺の気配を感じれてないのに対して火神さんはなんとなくとはいえ俺の気配を感じれていた。


ということは自信があるという言葉も事実だし、少なくとも【気配感知】のスキルを持っているはず。


「あー……実はな、あるにはあるんだけど使った瞬間、頭に激痛が走ってな。それ以来使ってないんだよ」


「そ、そうなんですか……」


俺の予想は当たっていたみたいだけど、まさか【気配感知】を使うと頭を痛めるなんてな。


なんでだ?


……もしかしてスキルレベルが高すぎて感知できる情報量に脳が耐えられなくなって頭痛が起きる……とかなのか?


うーん……それならありえそうだしな……


俺の【気配感知】はLv.1からだったし自分で取得したスキルだったから痛みとかはなかったけど、もしも高いスキルレベルのスキルがあったら同じようなことが起きてもおかしくないかったかもな。


「ちなみにどんな感じの痛みですか?」


「あ~……頭が割れるように痛くなるんだよ。なんていうか……入ってくる情報量に頭が耐えきれないっていうのかな……」


……うん。


俺の考えは正しかったみたいだな……


……じゃあ俺も【吸魂】スキルでスキルレベルが上がるかもしれないから先に使ってないスキルを確認しとかなきゃ不味いか?


……後で確認しとこう……


わざわざ自分でスキルを使えない原因を作り出した事に少し落ち込みながらも、俺は【隠密】を発動したまま火神さん達についていく。


そしてついに自衛隊の人達の野営地?にたどり着いた。


やはり自衛隊の人達がかなりの人数確認できる。


そして、火神さん達が道を歩くとたびたび視線を向けられているわけだが、【隠密】のおかげか特に何か言われずに通れた。


「……本当に見えていないんだな……」


「そうみたいですね」


「本当にスキルっていうのは反則ですね……隊長、どうします?」


「そうだな……とりあえず報告というていでテントに行こう。俺達は報告をしに来たんだからな」


「了解」


「よろしくお願いします」


俺達は火神さんの言葉に従って、自衛隊の人達の野営している場所の近くにあるテントに向かって歩いて行く。


というかこの辺りの建物は使わないのかな?


わざわざこんなコンクリートで固められた道路にテントを張っているけど……


そんな事を疑問に思いながらも火神さん達の後を歩いていくと目的の場所に到着したのか歩みを止める。


「ここだ。準備はいいか?」


「……はい。大丈夫です……」


……緊張してきた……


俺はゴクリと唾を飲み込むと、深呼吸をして気持ちを落ち着かせる。


「よし……入るぞ」


火神さんがそう言うと、ゆっくりとテントの入り口を開けていく。


さて……これからが本番だな……


俺は気合いを入れ直すと、中に入って行った火神さん達の後に続いていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る